健康予報
ヘルパンギーナ
についてHerpangina
Contents
ヘルパンギーナってどんな病気?
夏季に流行する小児の急性ウイルス性咽頭炎のことです
ヘルパンギーナとは、夏季に流行する小児の急性ウイルス性咽頭炎のことであり、発熱と口腔粘膜に現れる水疱性発疹が特徴です。ヘルパンギーナは、手足口病とともに代表的な夏かぜの一つです。
主にエンテロウイルス、特にA群コクサッキーウイルスの感染により引き起こされます。同じような症状が現れる口腔疾患のヘルペス性疾患と混同しないように、ヘルパンギーナという疾患名が用いられています。
ヘルパンギーナは、平成11年4月1日より施行された「感染症法」では四類感染症(注1)に分類され、国が感染症発生動向調査を行い、その結果に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症に指定されています。このことから、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関より毎週、発生の届け出がなされています。
1999年の患者報告数は155,125人、2000年は147,275人、2001年は142,158人でした。
(注1)四類感染症
1999年4月1日より施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」によって、これまで伝染病とされていた疾患が感染症と呼ばれるようになりました。またこの法律により、感染力・感染した場合の重篤性等から危険性が極めて高い感染症から順に一類から四類に区分されています。
四類感染症は、「国民の健康に影響を与えるおそれのあるものとして厚生労働省令で定めるもの」と定義されており、ヘルパンギーナを含む60の病気がこれに該当します。
ヘルパンギーナの原因は?
ヘルパンギーナの主な病原は、エンテロウイルスです
ヘルパンギーナの主な病原は、エンテロウイルスといわれるウイルスです。エンテロウイルスは、ピコルナウイルス科に属する多数のRNAウイルスの総称であり、ポリオウイルス、A群コクサッキーウイルス、B群コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス68~71型など多くを含むウイルスです。
大部分のヘルパンギーナを引き起こす原因となるウイルスは、A群コクサッキーウイルスであり、各種の血清型が分離されています。またB群コクサッキーウイルスやエコーウイルスなどが原因となることもあります。
感染経路は、主に糞便からの経口感染によって引き起こされます。急性期に最もウイルスが排泄され、回復後にも2~4週間の長期間にわたってウイルスが便から検出されます。そこから手を介してほかの食器や食物にウイルスが移ることで感染します。飛沫感染もあります。ウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は2~4日といわれています。
エンテロウイルスによる感染は、一度罹患すると終生免疫を獲得します。しかし、エンテロウイルスは前述したように多くの種類に分類されるため、異なる型のウイルスによって何度もヘルパンギーナに罹患することがありますので注意が必要です。
ヘルパンギーナの症状は?
突然の発熱や口腔内の粘膜疹が特徴です
季節が暖かくなり、夏季が近づいてくると幼児(4歳以下がほとんどであり、1歳台が最も多い)に、ヘルパンギーナの発症が多くなってきます。一般的なかぜの症状(発熱に伴う頭痛や筋肉痛、嘔吐や下痢)の他に、以下のような症状を示すのが特徴です。
-
- 1. 突然の発熱
- 高熱が3日前後続きます
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- 2. 口腔内の粘膜疹
咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内に直径1~3mm程度の水疱疹が数個~10数個できます。これは発熱と同時か1日後くらいに出現します。水疱疹はやがて破れ、浅い潰瘍を形成して疼痛を伴います。発熱については1~4日間程度で下降し、粘膜疹も4~6日で消失してしまいます。
発熱時に熱性けいれんを伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌、食欲不振、哺乳障害、それによる脱水症などを認めることがありますが、ほとんどは7日以内に完治します。
ヘルパンギーナの合併症として、頻度は非常に少ないのですが、無菌性髄膜炎・脳炎、急性心筋炎などがあります。したがって、発熱以外に頭痛、嘔吐などに注意する必要があります。さらに、呼吸困難やむくみ等の心不全徴候の出現にも十分注意をはらう必要があります。
ヘルパンギーナと間違えやすい病気
手足口病、ヘルペス性歯肉口内炎、アフタ性口内炎があります
ヘルパンギーナと同じような症状を示す疾患として、手足口病、ヘルペス性歯肉口内炎、アフタ性口内炎があります。表にヘルパンギーナの鑑別法として、他の疾患との相違点等について示しました。
特徴等\病名 | ヘルパンギーナ | 手足口病 | ヘルペス性 歯肉口内炎 |
アフタ性口内炎 | |
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発症原因 | 主にA群コクサッキーウイルス | 主にA群コクサッキーウイルス | 単純ヘルペス | 不明 | |
好発年齢 | 乳幼児に多発 | 乳幼児に多発 | 乳幼児に多発 | 好発年齢なし | |
季節性 | 夏季 | 夏季 | 季節性なし | 季節性なし | |
一 般 症 状 |
発熱の有無 | 発熱する | 発熱する時もある | 発熱する | 発熱しない |
主な症状 | 嘔吐,口内痛,食欲不振 | 嘔吐,口内痛,食欲不振 | 口内痛,食欲不振 | 口内痛 | |
病変部位と その形態 |
口腔粘膜 1~3mm 程度の水疱から浅い潰瘍 |
口腔粘膜,四肢末端 2~5mm 程度の水疱から潰瘍 |
歯肉,頬粘膜 2~10mm程度の斑から不定型の深い潰瘍 |
口腔全体 2~5mm程度の深い潰瘍 |
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経過 | 完治まで約7日 | 完治まで約7日 | 完治まで5~14日 | 完治まで4~10日 |
ヘルパンギーナの発生数は?
- 経月変化 -
各年度により大きく異なり、季節変動があります
ヘルパンギーナの発生数は、定点(発生動向調査用に選ばれた医療機関のこと)当たりの報告数として毎週報告されているため、この資料より発生の季節変動をみることができます。
右上図に発生数の季節変動を示しました。縦軸は定点当たりの報告数、横軸発生月です。ヘルパンギーナの発生は、各年度により大きく異なり、1999~2001年の3年間はピーク時の報告数が例年に比べて高かったことが認められます。
ヘルパンギーナは、気温が15℃以上になると流行し始めることが報告されています。発生数をみてみると、いずれの年度も同じ傾向を示しており、5月頃より増加し始め、6~7月にかけてピークを示し、8月に減少し始め、10月にはほとんどみられなくなっています。
ヘルパンギーナの原因ウイルスであるエンテロウイルスは、湿度の高い環境に適したウイルスです。6~7月は梅雨の季節であり、最も湿度の高い季節でもあります。したがって、6~7月にかけてピークを示すのはこのためだと考えられます。
我が国におけるヘルパンギーナの流行は、例年、西日本から東日本へと推移する傾向にあります。これは東日本に比べて西日本が暖かいためです。また、ヘルパンギーナを発症する年齢は大部分が4歳以下であることが認められています。
ヘルパンギーナの予防対策
季節が暖かくなってきたらよく手を洗うことを習慣付けましょう
ヘルパンギーナの原因ウイルスであるエンテロウイルスは、主な症状から回復した後も長期間(2~4週間)にわたって便から排泄されます。また、ウイルスが身体に入っても無症状のこともあります。エンテロウイルスは手を介してほかの食器や食物にウイルスが移ることで感染していきます。症状の現れた罹患者に近づかなくても罹患することがあります。
したがって、エンテロウイルスの感染予防のためには、季節が暖かくなってきたらよく手を洗うことを習慣付けることが最も重要なことです。ただし、エンテロウイルスはアルコール消毒には抵抗性が強いとされていますので、便その他の排泄物を扱う場合には、ゴム手袋を着用するなどして経口感染することを極力防ぐことが大切です。
ヘルパンギーナ予報について
毎日チェック!予報と対策を正しく理解!
ヘルパンギーナは、乳幼児を中心に引き起こされますが、原因となるウイルスは症状が回復しても2~4週間は便中に排泄されます。したがって、直ったと思っても気を抜くことなくしばらくは日常的に手洗いを励行するなど、ちょっとした気づかいで感染の拡大を防げる場合があります。
本予報では、ヘルパンギーナにかかりやすい気象状況かどうかを、気温や湿度などから予報しています。本予報は、日常的な予防対策の目安としてください。
ヘルパンギーナ予報凡例
- スーパー警戒
- ヘルパンギーナに非常にかかりやすい気象状況です。日常的に手洗いを習慣付け、念入りによく洗いましょう。また、感染した乳幼児の便などを扱う際は、ゴム手袋などを着用しましょう。感染すると回復しても2~4週間はウイルスが排出され続けますので気を抜かず注意しましょう。
- 警戒
- ヘルパンギーナにかかりやすい気象状況です。近くに感染者の方が居なくても、手を介してほかの食器や食物にウイルスが移ることで経口感染していきますので、念入りに手洗いやうがいを行いましょう。
- 注意
- ヘルパンギーナにかかりやすい気象状況ではありませんが安心は禁物です。普段から手洗いなどを家族みんなで励行しましょう。
- ほぼ安全
- ヘルパンギーナにかかりにくい気象状況です。