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についてAsthma

ぜん息ってどんな病気?

ぜん息は、気道に慢性の炎症が起こることによる病気です

ぜん息は、空気の通り道である気道(気管支)がせまくなって、喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音)が聞こえ、発作性のある呼吸困難を繰り返す病気です。この発作は治療により回復しますが、症状が軽いときには自然にまたは治療によって治ります。発作がないときには全く健康そのものにみえます。ぜん息は、こどもの病気と思われがちですが、幼児から大人まで年齢にかかわらず発病します。また、ぜん息は発作の起きる原因によってアトピー型と非アトピー型に分けられます。

アトピー型
アレルギー性のもので、周辺環境の中に発作のきっかけになるものがある場合です。検査をすることによって発作を引き起こす原因物質(アレルゲンという)がみつかることが多いものです。こどもに多くみられます。このタイプのぜん息は、住まいなどの生活環境を改善したり(アレルゲンを排除する)、アレルギーを起こりにくくする体質への改善が必要となります。
非アトピー型
ぜん息発作を引き起こすアレルゲンを特定できないタイプで、アレルゲン以外の内的な要因が関わっていると考えられます。このタイプは成人に多くみられます。
しかし、中にはアトピー型と非アトピー型の両方の特徴をもっているものもあります。ぜん息発作の誘因は、アレルゲンや内的因子のほかに、気候、運動などさまざまであり、非常に複雑にからみあっているのです。風邪やインフルエンザなどウィルス性の上気道炎に併発することがあります。

ぜん息発作の主な原因は?

ぜん息の発症にはさまざまな原因があります

ぜん息の発症にはさまざまな原因があります。こどもに多いアトピー型(アレルギー性)のぜん息の場合、アレルギーが起こりやすいという体質的な要因があり、その上でぜん息を引き起こす原因となる物質(アレルゲンという)と接触することにより発作が起こります。アレルゲンには以下のようなものがあります。病院ではどれがアレルゲンなのか特定する検査を行っています。

生活環境に関するもの
ダニなどのふんや死骸、ほこり、動物(イヌ・ネコ・ウサギ・ハムスター・小鳥など)の毛やフケ、花粉、カビ、薬など
食物に関するもの
ソバ、鶏卵、牛乳、大豆、肉類、魚類、野菜、果物などありとあらゆる食品

非アトピー型(非アレルギー性)のぜん息の場合、以下に示すような要因が発症や症状の悪化に関係しているといわれています。これらの要因は、アトピー型の場合にも複合要因として関係します。

生活環境に関するもの
気象・天候の変化、運動、冷たい空気、冷房、タバコの煙、喫煙、線香、蚊取り線香、香水、スプレー、刺激臭(接着剤など)、たきぎ・花火などの煙、自動車の排ガス
肉体的、精神的なもの
過労、疲労、心労、ストレス、緊張
その他
かぜなどの感染症

ぜん息発作の要因には様々なものがありますが、実際にはどれかひとつが原因ということではなく、上記のような要因が複雑にからみあって起こります。

ぜん息発作が起こったとき
身体はどうなっているの?

発作が起こると気管支をとりまいている筋肉が収縮し、気道が狭くなります

ぜん息発作ぜん息は、アレルゲンやその他の刺激により、気道に慢性の炎症が起こることによる病気です。そのためぜん息患者さんの気道(気管支)は日常的に非常に敏感になっており、発作が起きやすくなっています。ふつうの人がなんでもないような刺激でも発作が起こるのです。
発作が起こると、気管支をとりまいている筋肉(平滑筋)が収縮し、気道が狭くなります(上図参照)。また、気管支の粘膜が炎症を起こし、腫れてむくみ、分泌物(痰)がたくさんつくられて気道にくっつきます。細くなった気道では呼吸が非常にしづらくなります。
発作は、自然にあるいは治療により回復しますが、時には長引いたりすぐ再発して何日も続く場合があります。

ぜん息の症状は?

ぜん息の症状は、程度の軽い人から重症の発作まであります

ぜん息の発作が起きたとき、主に以下のような症状がみられます。

  • ・呼吸が苦しくなる。特に息を吐き出しにくくなる。
  • ・呼吸困難が強いときは、起座位呼吸する(横になれず、座って前屈みになって呼吸する)。
  • ・喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーといった呼吸音。特に息を吐き出すとき)が聞こえる。
  • ・たんが出る。また、たんを切らそうとして咳も出る。
  • ・発汗
  • ・チアノーゼ(酸素量が不足し、皮膚や唇の粘膜が青紫色になる。重症の状態)

ぜん息の症状は、程度の軽い人から重症の発作まであります。重症の場合、窒息によって死亡することもあります。
なお、喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音)が聞こえたり、呼吸困難になる病気はぜん息以外にもあります。百日咳、気管支拡張症、気道内異物、クループ(のどの病気)、心不全などの心臓の病気などたくさんあります。必ず医師の診察を受けて下さい。

発作の程度と重症度

呼吸や生活の状態、発作の回数により分類されています

一回一回の発作の程度は、小発作、中発作、大発作の3段階に分類されています。

発作の程度 呼吸の状態 生活の状態
遊び 睡眠 機嫌(会話) 食事
小発作 軽い喘鳴はあるが呼吸困難はなく、軽い陥没呼吸を伴うこともある。 普通 普通 普通に話をする 普通
中発作 明らかな喘鳴と陥没呼吸を認め、呼吸困難がある やや困難 ときどき目を覚ます やや不良(話しかければ返事をする) やや不良
大発作 著明な喘鳴、呼吸困難、起座位呼吸を呈し、時にチアノーゼを認める。 不能またはそれに近い状態 不能またはそれに近い状態 不良(話かけても返事ができない) 不能またはそれに近い状態

患者さんの個々人の重症度は、発作の程度と頻度により重症、中等症、軽症の3段階に分類されています。また、患者さんの個々人の重症度は、発作の程度と頻度により重症、中等症、軽症の3段階に分類されています。

発作の頻度\発作の程度 大発作 中発作 小発作
1年間に数回以内 中等症 軽症 軽症
6ヶ月に数回 重症 中等症 軽症
1ヶ月に数回 重症 重症 中等症

ぜん息の患者数はどれくらい?

ぜん息の患者数は近年どんどん増えており、日本では300万人を超えています

ぜん息は特別めずらしい病気ではありません。ぜん息の患者数は近年どんどん増えており、日本での患者数は300万人を超えています。こどもでは5~6%(100人に5~6人)、成人では1~4%(100人に1~4人)がぜん息をもつ傾向があるといわれています。
また、ぜん息で亡くなる方は、日本で年間約6,000人以上に達しています。お年寄りに多いのですが、5歳くらいから30代前半で亡くなる方も少しずつ増加しているといわれています。交通事故で亡くなる方が、年間約9,000~11,000人であることを考えるとかなり大きな数字です。

ぜん息の被患率はどれくらい?
- 経年変化 -

ぜん息の被患率はここ数年増加傾向にあり、特に小学生で増えています

ぜん息に限らず、アレルギー性の病気が年々増加傾向にあります。アレルギー性の病気とは、ぜん息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症などさまざまですが、体質的な素因に加えて、外からの要因(アレルゲン)が関与します。
外からの要因には、ダニアレルゲンや花粉、カビなどの古典的なものもありますが、最近では、例えばディーゼルエンジンの排気中に含まれる微粒子が気管支に作用して、ぜん息発作を起こりやすくさせるということがわかってきています。このように、生活環境の変化に応じて、新しい要因が増えてきているのではないかと考えられます。

ぜん息の発作が出やすい季節と時刻

ぜん息患者さんの病院への来院は本州では秋に多い!

ぜん息患者数
ぜん息には季節に関係なく年中起こるものと、季節性のあるものとがあります。季節性のあるものはいつ頃が多いのでしょうか。ぜん息の発作は、北海道や本州では9~10月をピークとして秋から冬に多くみられます。しかし、沖縄では4~5月にかけての時期と12月前後にピークがみられることが多く、北海道や本州とはパターンが異なります(図参照)。
いくつかの医療機関で、ぜん息患者さんの受診数と、発作が起きた時の気象条件を調べてみたところ、最も強く関連がみられたのは短時間の間に急激に気温が低下することでした。また、1日ごとの気温の高低と患者さんの受診数との関係をみると、気温の高い方が発作が起こりやすいことも観察されました。
これらのことから、ある程度気温が高い状態から急激に低下していく時に、発作が起こりやすくなると考えられます。本州などでは、いわゆる秋の「季節の変わり目」にこのような気象条件が起こりやすくなっています。この時期には冬に向けて、日ごとに気温が低下していくのが特徴で、このことが発作の誘発に影響しているのではないかと考えられます。
また、発作の起こりやすい時間帯があります。夜から明け方にかけて発作を起こす人が多いようです。これは自律神経の働きによるもので、夜になると交感神経よりも副交感神経の働きが強くなり、気管支が狭くなるため発作が起こりやすくなるといわれています。

発作が起こった時の処置

発作があった場合、発作の程度により適切な処置を行いましょう

発作があった場合、発作の程度により適切な処置を行い、できるだけすみやかに発作を抑えましょう。

  • ・衣服をゆるめ、楽な姿勢にする。安静にさせる。
  • ・発作の原因が分かっている場合はそれを取り除く、あるいは原因から離れさせる。
  • ・水を飲ませる(たんが出やすくなる)。
  • ・窓を開けて換気する(気分転換になり、発作が軽くなる場合がある)。
  • ・腹式呼吸をさせる。
  • ・医師から処方された薬を使う(ただし乱用しないこと)。
  • ・中等症、重症の場合は早めに医師の診察を受けさせる。

ぜん息の予防対策

予防で大事なのは「発症させないこと」、「悪化させないこと」の2つ!

ぜん息の予防対策で大事なのは、「発症させないこと」、「悪化させないこと」の2つといわれています。そのためには普段から以下のようなことがらを心がけましょう。

住環境における対策(基本的に室内を清潔に保ち、ダニなどのアレルゲンを遠ざけます)
  • ・ぬいぐるみ、じゅうたん、ソファーなどダニが増殖しやすいものは避ける。
  • ・掃除機でダニを吸い取れるものは掃除機をかける。丸洗いできるものは丸洗いする。
  • ・ふとんはできれば丸洗いし、週に1回は天日で干すか乾燥機で乾燥させる。
  • ・室内では禁煙する。開放型の石油ストーブ、ガスストーブは使用しない。
    また、エアコンや空気清浄機のフィルターは清潔にしておく。
  • ・ペット(イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、小鳥など)は飼わないようにする。
  • ・植物(鉢植え)は室内に置かない。
  • ・排気ガスなどで外の空気が悪い時は窓を閉める。
  • ・カビが生えないよう部屋の通気をよくする。
  • ・室内にはできるだけ必要なもの以外は置かない。
食生活における対策
  • ・発作の原因となる食べ物が分かっている場合は避ける。
  • ・規則正しい食生活(腹八分目)とバランスの良い食事を心がける。
  • ・魚に含まれるDHAやEPAには炎症を鎮める働きがあり、またぜん息の児童はビタミンCが不足している傾向にあるといわれており、摂取を心がけると症状が緩和するといわれています(ビタミンCが豊富な食材でもアレルゲンとなる物質が入っているものは当然避けましょう)。
日常生活における対策
  • ・からだを鍛える(水泳などの運動や、乾布摩擦をしたり、薄着を心がける。必ず医師に相談して行う)。
  • ・腹式呼吸をマスターする(軽い発作時に腹式呼吸をすることにより、症状が良くなる場合がある)。
  • ・過労や睡眠不足にならないようにする。ストレスをためないようにする。
  • ・前向きに明るく考える。くよくよしない。
  • ・風邪をひかないよう普段から注意し、からだを常に清潔にしておく。
  • ・薬の使用は医師の言うことを守って使う。
  • ・発作の前触れを自分で把握しておく。小さなお子さんのお母さんは、こどもに発作の前触れがないか日頃からよく観察してみる。
  • ・朝・夕のピークフローを記録するようなぜん息日誌をつけ、日常の生活と発作とのかかわりを知るようにつとめる。

ぜん息予報について

毎日チェック!予報と対策を正しく理解!

ぜん息発作の要因には生活環境や食物に関するもの、肉体的・精神的なもの、かぜなどの感染症などさまざまなものがありますが、実際にはどれか一つが原因ということではなく、上記のような要因が複雑にからみあって起こっているようです。
本予報では、発作の原因の一つであるといわれている気象条件を基に、予報当日におけるぜん息患者さんの受診頻度が高いか低いかを予測することで、患者さんの快適な生活に寄与することを目的としています。予測計算に用いる気象条件には、気圧、気温、湿度、風速、蒸気圧、雲量などがあります。

ぜん息予報凡例

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スーパー警戒
ぜん息による受診頻度が高い気象状況です。外出の際にはお薬などの準備をしっかりしておきましょう。
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警戒
ぜん息による受診頻度が比較的高い気象状況です。あまり無理をしないようにしましょう。
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注意
ぜん息による受診頻度が比較的低い気象状況ですが注意しましょう。日頃からぜん息日誌をつけるなどして発作の前触れなどを把握するよう努めましょう。
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ほぼ大丈夫だが安心は禁物
ぜん息による受診頻度が低い気象状況ですが安心は禁物です。日頃からバランスの良い食事をしっかりとり、医師の指導のもとで軽い運動をして基礎体力をつけておきましょう。