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についてArthralgia

リウマチってどんな病気?

リウマチは、関節や筋肉などの運動器に疼痛(痛み)をもたらす病気です

関節や筋肉などの運動器に疼痛(痛み)をもたらす病気は、リウマチ性疾患(広義のリウマチ)として分類されています。リウマチ性疾患には、慢性関節リウマチ、各種の膠原病や変形性関節症、痛風などさまざまな病気が含まれています。医療の現場では慢性関節リウマチ(狭義のリウマチ)のことを「リウマチ」と呼ぶのが一般的です。
慢性関節リウマチは関節の腫脹(腫れ)や疼痛(痛み)を繰り返して、著しい関節障害を引き起こし、日常生活の動作が障害される原因不明の全身炎症性の自己免疫疾患です。
自己免疫疾患とは、本来は体外から侵入してくる細菌やウイルスなどから生体を防御するための免疫機構が、自分自身の構成成分に対して反応してしまう病気のことをいいます。このような自己免疫疾患を総称して膠原病といいますが、慢性関節リウマチは膠原病の中で最も多く起こる病気です。
慢性関節リウマチは高齢者の病気だと思われがちですが、好発年齢は20~50歳代であり、どの年齢でも起こります。また、16歳以下で起こったものを特に若年性関節リウマチと呼んでいます。

慢性関節リウマチの症状は?

症状は、程度の軽いものから寝たきりの状態になるものまであります

慢性関節リウマチの初期の症状は、関節痛や関節のこわばりが徐々に始まるのが特徴としてあげられていますが、慢性関節リウマチの診断には表に示したように、アメリカ・リウマチ学会の診断基準が広く用いられています。

表 慢性関節リウマチの診断基準

  1. 1. 朝のこわばりが1時間以上続く。
  2. 2. 3つ以上の関節に腫脹(腫れ)がある。
  3. 3. 手、中手指節関節、近位指節間関節の1つ以上に腫脹(腫れ)がある。
  4. 4. 左右対称の関節に腫脹(腫れ)がある。
  5. 5. 皮下結節(リウマチ結節)がある。
  6. 6. 血液検査でリウマトイド因子が陽性である。
  7. 7. X線検査で手指の関節に変化がみられる。

※1~3の項目については6週間以上続くこと。
※7項目中4項目以上を満たすものを慢性関節リウマチとする。
(Arnett FC et al, Arthritics Rheum. 1988. 31:315-324)

慢性関節リウマチの症状は、程度の軽いものから寝たきりの状態になるものまであります。直接の死因となることはありませんが、各種の感染症や腎不全、消化性潰瘍などの合併症を伴うことが多いことが認められています。

症状の程度と重症度

日常生活をする上での障害の程度によって、4つに分類されています

慢性関節リウマチは、症状が安定している時期と悪化する時期とを繰り返しますが、日常生活をする上での障害の程度によって、表のように機能障害度が4つに分類されています。

表 慢性関節リウマチの機能障害度の分類
重症度 障害の程度
I 身体機能は完全で不自由なしに普通の仕事が全部できる
動作の際に、1カ所あるいはそれ以上の関節に苦痛があったり、
動作制限があっても普通の活動なら何とかできる
普通の仕事や身の回りのことがごくわずかできるか、ほとんどできない
寝たきり・車椅子に座ったきりで、身の回りのこともほとんど、
あるいはまったくできない

(出典:「免疫・アレルギー・リウマチ病」(柏崎, 狩野編, 表11-6, 医学書院,1995))

症状の経過

症状の現れ方や経過により、病型は3つに大別されます

下図に示したように、症状のあらわれ方や経過により、病型は、短周期型、多周期型、進行性憎悪型の3つに大別されます。

  1. 1. 短周期型
    治療によって発症後1~2年以内に改善し、完全寛解(注1)する症例もあります。
  2. 2. 多周期型
    治療しても改善と憎悪を繰り返し、徐々に進行します。大部分の例がこれに属します。
  3. 3. 進行性憎悪型
    治療の効果がみられず、急速に関節破壊が進行する症例をいいます。現在では治療に抗リウマチ剤が用いられており、進行性憎悪型を示す症例は減少しつつあります。

(注1)寛解
治療によって病状の進行をくい止め、関節の腫脹(腫れ)や疼痛(痛み)の訴えを認めなくなった状態をいいます。現在の医療では、慢性関節リウマチは完治することが難しい病気の一つでありますが、完全寛解を目指して治療することになります。

リウマチ臨床経過

リウマチ以外の関節の病気は?

関節の腫脹(腫れ)や疼痛(痛み)を伴う病気はたくさんあります

慢性関節リウマチの診断は、臨床診断や血液検査X線所見などにより総合的に行われますが、同じ自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス、強皮症、多発筋炎・皮膚筋炎、結節性多発動脈炎などの膠原病は、慢性関節リウマチと症状や血液検査の結果が似通っています。膠原病以外にも、かぜや疲労によって起こる肩こりや腰痛などを含め、関節の腫脹(腫れ)や疼痛(痛み)を伴う病気はたくさんあります。
症状的に間違えやすく、多数発生する病気に変形性関節症や痛風があります。変形性関節症は老化による関節変形が原因であり、年をとるにしたがって発生が多くなります。痛風は高尿酸血症により、余分な尿酸が代謝されずに関節に沈着して起こる病気で、男性での発生が著しく多いのが特徴です。
これらの病気は関節の腫脹や疼痛を伴うので慢性関節リウマチと間違えやすいですが、表に示したように、発生原因や好発年齢、性別が慢性関節リウマチとは大きく異なっていることがわかります。
関節の腫脹(腫れ)や疼痛(痛み)が続くようでしたら、前述したように様々な病気が疑われますので、早急に医師の診断を受けて下さい。

表 慢性関節リウマチと変形性関節症、痛風の特徴
区分 慢性関節リウマチ 変形性関節症 痛風
症状 関節の腫脹、疼痛特に手指、肘、膝、足趾 関節の腫脹、疼痛特に縁位指節間関節 関節の腫脹、疼痛特に第一中足指関節
原因 不明 主に老化による関節変形 尿酸が関節に沈着して起こる炎症
血液検査 リウマトイド因子陽性 変化なし 高尿酸血症
好発年齢 30~50歳 40歳以上 20歳以上
性別 女性で多く発生(3~5倍) 男女同数 男性で多く発生(95%が男性)

(出典:「免疫・アレルギー・リウマチ病」(柏崎, 狩野編, 表11-6, 医学書院,1995))

慢性関節リウマチの患者数はどれくらい?

患者数は、日本では約50万人であると推測されています

慢性関節リウマチの患者数わが国の慢性関節リウマチ患者数は、約50万人であると推測されています。これは全人口の0.3~0.5%にあたります。また、約2~4万人が1年間に慢性関節リウマチを発病しているといわれています。
図に慢性関節リウマチの発病する割合を性、年齢別で比較したものを示しました(全体の発症数を100%として表しています)。慢性関節リウマチはどの年齢層でも発病していますが、20~50歳での発病が多く、特に40歳代での発病が最も多いことが認められています。さらに、発病の割合を男女で比較すると、女性での発病が男性よりも3~4倍多いことも認められています。

慢性関節リウマチと季節・天候

関節の痛みで気象の変化がわかる?どのような天候で症状が悪化?

慢性関節リウマチと季節・天候慢性関節リウマチの患者さんは、関節の痛みで気象の変化を当てることができるといわれているように、慢性関節リウマチは気象の変化に対して敏感に反応する病気の一つです。しかし、気象の変化による症状悪化の訴えは、個人差が大きいことが認められています。患者さんの症状悪化が、どのような季節や気候に影響されるかを調査した結果では、季節の影響を受ける人が約86%、天候の影響を受ける人が約84%もいます。どのような季節に症状が悪化するのかをみてみますと、図に示したように、梅雨(41%)の時期と冬(37%)に悪化している人の多いことがわかります。
天候の影響については個人差が大きく、一定の傾向が認められていませんが、慢性関節リウマチの患者さんを、温度や湿度、気圧、気流(風)などが自由に調節できる人工気候室に住まわせた実験では、気圧の低下と湿度の上昇が同時に起こったときにはじめて症状の憎悪を訴えることがわかっています。
気圧の低下と湿度の上昇が同時に起こる自然界での気象条件は、移動性の低気圧が通過する時と同様の条件になります。

慢性関節リウマチの月別症状悪化訴え率

どのような季節に症状が悪化?梅雨の時期にやっぱり多い!?

慢性関節リウマチの月別症状悪化訴え率わが国の気候は、四季の移り変わりがはっきりとしており、移動性の高気圧や低気圧が頻繁に通過するという特徴があります。また、わが国の国土は南北に長く、高緯度から低緯度まで位置しており、気候に地域差のあるのも特徴です。
図に各地域の代表的な都市における慢性関節リウマチの、月別にみた悪化の訴え率を示しました。慢性関節リウマチの症状は梅雨の時期と冬に悪化するといわれていますが、症状悪化の訴え率は本州の各都市では6月、那覇では5月に最も高く、梅雨前線が停滞する時期と一致していることが認められます。次に、1~3月の冬にやや低いピークが認められます。
北海道では3、4月にピークが認められますが、北海道には梅雨がなく梅雨の時期の悪化は認められないこと、冬季の暖房方法による影響が現れているのではないかと考えられます。

慢性関節リウマチの療法

症状を寛解に持ち込むためのさまざまな療法

慢性関節リウマチは完治する可能性が極めて低い病気です。したがって、症状を寛解(注1)に持ち込むために、薬物療法、手術療法、理学療法などを組み合わせて治療することになります。
近年では生活の質をQuality of Life(QOL)と呼びますが、様々な年齢層や様々な疾病の有病者において、QOLを向上させる方策が講じられています。慢性関節リウマチの患者さんにおいてもQOLを維持・向上させるために、リウマチ治療の他に食事療法や運動療法、温泉療法など様々な療法が試みられています。

食事療法
慢性関節リウマチの症状軽減に対してさまざまな食事療法が行われており、近年では低カロリーの玄米菜食療法により症状改善のあったことが報告されていますが、これだという食事療法はないのが現状のようです。しかし、薬物療法の副作用や慢性関節リウマチの関節外症状として、貧血や骨粗鬆症が発症しやすくなります。これらの症状を予防するためにも良質のタンパク質を含む食べ物や鉄、カルシウムを多く含む食べ物を摂取した方が良いでしょう。
運動療法
慢性関節リウマチの関節外症状として筋萎縮や筋力低下も進行します。関節拘縮や筋萎縮を防ぐためには運動をすることが必要です。理学療法で、リウマチ体操という運動が一般的に行われています。しかし、地上での運動は関節への負担が大きいので、浮力の利用できる水中での運動が関節への負担が軽くなるので良いといわれています。
温泉療法
慢性関節リウマチの療法として温泉療法がよく用いられていますが、温泉を利用しての運動浴が関節拘縮や筋萎縮の改善に対して、効果のあることも報告されています。

(注1)寛解
治療によって病状の進行をくい止め、関節の腫脹(腫れ)や疼痛(痛み)の訴えを認めなくなった状態をいいます。現在の医療では、慢性関節リウマチは完治することが難しい病気の一つでありますが、完全寛解を目指して治療することになります。

慢性関節リウマチの予防対策

早期発見と規則正しい食生活が基本

慢性関節リウマチの発症は遺伝、免疫異常、環境要因などが複雑に関与していると推測されていますが、その原因は未だに不明です。したがって、明確な予防方法があるわけではありません。早期発見のために普段から関節の「こわばり」や「痛み」がないかどうか注意しておくことと、発症した後の療法が重要になってきます。
基礎的な療法として、まず患者自身が慢性関節リウマチについてよく知ることが重要であり、適切な保温と冷却及び適度な安静と運動を心がけ、症状を寛解(注1)に持ち込むために、薬物療法、手術療法、理学療法などを組み合わせて治療することになります。
食事に関しては、まず規則正しい食生活を行って栄養状態を良い状態にしておくことが重要です。タンパク質やビタミン、カルシウム、ミネラルを積極的に摂取しましょう。タンパク質は肉類や乳製品、カルシウムは牛乳やヨーグルトなどの乳製品に多く含まれています。魚(アジやブリ、イワシ、サバなどの青魚)に含まれるDHAやEPAは、関節の炎症を抑える働きがあるといわれています。また、貧血を防ぐため、鉄分を含むレバーや納豆、小松菜や大豆製品も摂取するよう心がけましょう。

(注1)寛解
治療によって病状の進行をくい止め、関節の腫脹(腫れ)や疼痛(痛み)の訴えを認めなくなった状態をいいます。現在の医療では、慢性関節リウマチは完治することが難しい病気の一つでありますが、完全寛解を目指して治療することになります。

関節痛報について

毎日チェック!予報と対策を正しく理解!

関節痛の原因となる病気はリウマチ以外に変形性関節症や痛風など色々あります。慢性関節リウマチは、関節の腫脹(腫れ)や疼痛(痛み)を繰り返して、著しい関節障害を引き起こし、日常生活の動作が障害される原因がまだよくわかっていない全身炎症性の自己免疫疾患です。
本予報では、関節痛全般について、当日の痛み度合を気象条件を基に予測します。予測計算に用いる気象条件には、前日との気圧差、気温差、湿度差、雲量差などがあります。

関節痛予報凡例

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関節等に痛みが生じやすい
痛みにより身の周りの作業がしにくくなるかもしれません。身体に不調を感じたら、各種装具などで身体に無理なく筋肉の維持に努めましょう。
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関節等がやや痛みやすい
身の周りの作業がややしにくくなるかもしれません。関節等に痛みを感じたら、湿布やマッサージ等が有効でしょう。
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関節等に痛みが生じるかもしれません
関節等に痛みを感じたら、無理のない範囲で関節を動かし、関節の可動域を保ちましょう。温泉を利用しての運動浴も効果的でしょう。
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ほぼ大丈夫
日常生活を不安なく過ごせるでしょう。身体に不安がなければ、適度な運動で筋肉の萎縮や拘縮を防ぎましょう。