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連載エッセイ [2012年8月]


福岡義隆

 

 

 季語を入れて自然を詠うのが俳句ではあるが、正岡子規のこの句には人間臭さを感ずる川柳に相通ずるものがある。八月八日ころは暦の上では立秋であり、まだまだ暑い盛夏のなかでこそ秋の気配を感ずるのかも知れない。「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」と『古今集』にも歌われている。日中は猛暑でも日が沈み夕方そよと顔をなでる微風は心なしか秋の訪れを思わせる。風が吹くと体感温度が下がる。風の音という音感が温感を促していることを平安の歌人がすでに知っていたのである。
 「クーラーへ風鈴頑固に動かない」(義龍)、クーラー病か、空調多用で汗腺も減って室内熱中症が増えている。その上、節電で微弱のクーラーでは折角の風鈴も動きが鈍い。風情を忘れた人間たちへの風鈴の抵抗かもしれない。

 一年でもっとも暑いのが八月の初めであることは各地の最高気温記録日を見るとわかる。根室が八月六日、酒田が三日、銚子・横浜が四日、松本・名古屋・彦根・松山が二日などで、多くは猛暑日である。そんな酷暑下でも震災直後ともなると節電を強いられる。夏休みに入っても家の内外で熱中症の危険が警告されるし、通勤時の車中も止まるとどこを愚痴のはけ口としていいかやりようがない。せめて新しい酸素でも吸わないと脳に悪いから、生ぬるい空気を深呼吸でしてすぐ吐き出す。なにか愚痴の一言も一緒に出てきそうである。その方が良いのである。愚痴もつのれば精神的ストレスとなるからである。ストレスは万病の元、これに夏バテが加わると大変である。花療法的にはグロリオサが元気をくれるそうである。

 風が止まるという「凪」という文字は純然たる大和字である。海風と陸風の交替時や谷風と山風の交替時に風がぴたりと止まってしまうさまを言う。
 夏から秋にかけての台風季や寒冷前線通過時の竜巻に伴うダウンバーストなど、とかく風害が風の主役になり、いまや再生エネルギーを代表するかの勢いで関心が高まってきている。一方、風が弱いか無い状態、静穏とか無風はほとんど無視されているといって過言ではない。
 都市のヒートアイランドは夕方、風が弱くなるか無風状態のとき、都市内の人工排熱がビルの谷間に漂うようになり、かつ蓄熱効果の強いコンクリートやアスファルトからの放射熱が安定大気のなかに溜まってしまう。これが本来のヒートアイランドなのである。そして夜間、空気の動かぬ室内での熱中症で倒れる年寄りが増えている。

 もっとも好きな川柳の一つである。有名な作家やエッセイストの紀行文を読むと、見える筈がない風が見えてくるし、言葉を持たぬ風が語りかけてくるように思われる。昨今、ヒートアイランドの概念をはき違えた「風の道」構想を見るたびに、この川柳を味わって欲しいと思う。熱中症対策などから少しでも自然の風を引き込もうとする努力は買うが、風が水のように角を曲がったり、森から森を鳥のようにくねくね渡り歩くものと錯覚しているのがおかしいのである。偏形樹(旗状樹枝)や屋敷林(防風林)などの気候景観の分布から、風の行方を見て来た先人の知恵を知ろうともしない最近のシミュレーション信仰には腹立たしすら禁じえない。真の学問は遠のくばかりである。



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