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連載エッセイ [33]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
第六感でサバイバル
第六感とは何か ― 五感の次にくるものか

 第六感とは何か。感は勘に通じ、よく『勘に頼る』とか、『勘が鋭い』とか表現し、言うに言われぬ、表現できない理由、根拠による人間の行動の源点となっている。動物学者でもなく心理学者・生理学者でもない筆者には、例えば、『母性本能による行動と、第六感による母親の行動との違いを述べよ』といわれても、的確な回答が出来る自信は全くない。しかし、何かしら関係があり、また違いがあるように感じる。季節観・季節感などは私の専門分野であるが、五感との関連はあまり掘り下げては研究されていないのがいつわらざるところである。
 サバイバルを考えている者にとって、これ自体が第六感かもしれないが、五感を研ぎ澄まし、サバイバルを乗り切らねばならないとかねがね思っていた。そこへ、つい最近、非常に良い参考になる阿部健一監修の『五感/五環』という本が出た(阿部、2015)。今回の連続エッセイはこの本の内容を参考にしながら、サバイバルと五感、さらには第六感でどう乗り切るかを述べてみたい。

五感とは

 五感とは視覚・聴覚・触覚・味覚・臭覚の5感覚を言う。少しどぎつく言わせてもらえば、バイオクリマ、生気候学の中で最も手薄で研究者が少ない分野である。今日、視力や聴力などそれぞれ数値で表現され、測器で捉えられるが、気温・湿度・風速などの観測のように国際的・国内的なスタンダードがなかなか得にくい。しかも、その人間社会の文化的背景や、個人の生活習慣・環境などによって価値判断が異なる。別な言い方をすれば、その異なることが文化を生む源ともされるのだから、単純な話ではない。
 (表1)に日本人の五感のそれぞれの例を挙げてみた。日本人には自然を楽しむ感覚が備わっていると言われる。そこに文化が生まれると考える。(表1)の中の代表例や要素は筆者がまとめたものである。

(表1)人間の五感とそれぞれの代表例

五感 代表例 要素

視覚 植物季節 開花・満開・青葉・若葉・紅葉など
自然推移 積雪・融雪・落花・花吹雪・ほたるなど
祭り・行事 山車・神輿・運動会など

聴覚 動物季節 初鳴き・朝晩の鳴き声など
自然推移 鳥類の鳴き声、蝉しぐれ、秋の虫の声など
遠距離音 逆転層発達時の遠方を走る列車音など
都市騒音 市街地の騒音など
祭り・行事 笛・太鼓など

触覚 人と人の交流 挨拶・握手・手をつなぐなど
人と自然 そよ風・海風・暴風雨・空っ風に晒されるなど
人と動植物 昆虫類に触れる、家畜の毛の生え変わり、森の落葉層の踏みしめ感覚など
神輿 神輿をかつぐなど

味覚 文化として最重要だが、味覚として表現は最困難
動植物 野生昆虫・野生植物の価値
家畜・栽培植物 味覚に合わせた家畜育成・作物開発
季節推移 旬(しゅん)の野菜・水産物など
料理 郷土料理・家庭料理・正月料理・彼岸料理など

臭覚 香りの季節推移 季節変化を食物ばかりでなく、衣替えした衣類、棚から出した食器などの無機物にも日本人は感じ取る
花・若葉 ウメ・サクラ・フジなどの花、クリの花、若葉の森など、日本の典型的な例
香・香水 香を焚く、香水をつけるなど室内・体臭の管理
体臭 家族・ペットなどの体臭
山地崩壊 豪雨による山地崩壊の大災害が発生する直前の異常な匂い


 以上、筆者がまとめた五感の内容である。いずれも数量化は非常に難しい。しかし、例えば臭覚が関係する山地崩壊の前兆現象はすでに知られており、まさに生死を分ける大災害とも関係し、今後の研究が急務である。山地の崩壊と文化の形成との関連など、きわめて異例だが、考えに入れるべきと思い、あえてここに入れた。
 また、(表1)に示した五感の内容は自然科学的に把握することが難しい要素が多いことは上に述べた。しかし、だからといって放置されるべきではない。例えば、東日本大震災後、人びとが立ち上がるのに、五感の内の何かによって勇気付けられ、復興に立ち向かった実例がたくさんある。五感によって「自然を見つめ」、「自然を楽しみ」、「自然を生活に取り込み」、「人間の文化」にまで高める具体的な例をわれわれは知っているのである。

第六感

 上述の五感の次にくるものが第六感である。ところが、私の全く個人的な判断かも知れないが、“第六感”のイメージはよくない。“私の第六感によると”と前置きすると、それは、“私が勝手に想像すると”と同じことである。根拠も理由もなしに決め付ける場合に、“第六感”が出てくる。
 ただし、これはどうも日本人に特有のことらしい。今回このエッセイを書くために図書館で心理学関係の事典・辞典類で「第六感」の単語を調べてみた。十冊くらい日本語の辞典類を見たが、驚くことに、「第六感」の見出しは皆無であった。ところが、アメリカ心理学会(American Psychological Association)が2007年に刊行した心理学辞典には「sixth sense」の語があり、その日本語訳が2013年に刊行され、「第六感」として載っている(ファンデンボス監修、2013)。これには、感心した。そしてその解説がいわく、「日常の語では、五感や通常の認知過程の意識的な使用なしに、正しい判断や意思決定を行なうことを可能にするような“直感”または、“本能”のこと」という。この定義で重要なのは、(1)「正しい」判断や意思決定、(2)「直感、本能」が前面に出ていることである。日本では誰がこれを決めるのか、大問題である。決められないから、上述のように「私の個人的な」という前置きが必要になる。欧米との文化の重みの差を感じた。とにかく、欧米では第六感は科学的に認知されている。第六感でサバイバルを考える重要性もここにある。

第六感の精度・範囲

 ついで、人間の第六感の精度・範囲について考えたい。上記の英語の心理学辞典によると、第六感とは、アリストテレス派の哲学において、五感からの情報が統合されている共通感覚、すなわち常識のこととある。この定義を受け入れるとすれば、いまここでの話題は常識の精度・範囲となる。
 まず、ヒトの感覚についてまとめてみた。(表2)に示すのは現在知られている精度・範囲・特性など(秋道、2015、その他による)である。

(表2)ヒトの感覚の精度や反応範囲の比較の例

感覚 内容

臭覚 イヌはヒトの1億倍の精度。
仏教における香りの活用。薫物・香料配合。
アセトンのヒトの臭覚は500ppm、ガスクロマトグラフィーは0.03ppm。

聴覚 イヌは数百m離れた隣家の訪問客(ヒト)を聞き分ける。ヒトには不可能。

視覚 ヒトの可視光線の波長は360〜380ナノメーターの範囲。これより波長の短い紫外線部分、波長の長い赤外線部分は見えない。
マムシ・ハブ・ニシキヘビなどの夜行性ヘビは視覚が弱いが赤外線を感知できるピット器官で獲物を探す。

触覚 手で触れる範囲。腕の長さで規定される。五感の内で最も狭い空間が対象。逆に触れえないものへの憧れを生じる。

複合感覚 聴覚・視覚が複合して発生。例えばポケモン発作(1997年12月16日夕方のテレビ放映)や、パリにおけるトランス(三上ほか、2000)など。


 上記の他に例はたくさん挙げられる(山下、2002)が、ここでまとめておく。

まとめ

 以上を要約すると、次のようである。
(1) 日本では五感の研究・考察は詳しい。しかし、その結果と第六感形成・展開との関連の研究・考察は少ない。
(2) 第六感は「常識」・「本能」であるというアリストテレス的な考えに日本ではまだ至ってない。
(3) 日本における生気候分野では五感の研究を強力に推進しなければならない。さらに、その結果を第六感の基礎として蓄積し、サバイバル対策に役立てねばならない。特に国際的な協力にはこの観点は重要である。


[文献]
秋道智弥(2015)あとがき。阿部健一監修:五感/五環、昭和堂、京都、208−211.
阿部健一(2015)五感/五環、文化が生まれるとき。昭和堂、215p.
ファンデンボス(VandenBos, G. R.) 監修、繁桝算男・四本裕子訳(2013)APA心理学大辞典。培風館、東京.
三上章允ほか(2000)五感を遊ぶ。メトロポリタン、東京、238p.
山下柚実(2002)五感生活術。文芸春秋、東京、214p.


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