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連載エッセイ [27]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
暖冬にくる寒波 ― ルーマニアの例から ―
統計が画く、暖冬の寒波

 最近は地球温暖化のせいか、暖冬が多いように思われる。事実、テレビや新聞などのマスコミは、“先月の月平均気温は、何度℃、平年を上回りました”という気象庁の発表を伝えることが多い。
 ここで注意しなければならないことは、これは月の平均値での話しである点である。気温の昨日から今日、今日から明日へとはかなりの変動がある。これを気候学・気象学では気温日日変化(きおんにちにちへんか)と呼ぶ。ついでながら、気温日変化とは気温の24時間(1日)の変化であり、両者は区別されている。場合によっては日最低気温と日最高気温の差で気温日変化とすることもあるが、これは正しく言えば気温日較差である。
 一方、気温の年変化とは1年間の気温変化をいうが、普通は12ヶ月の月平均気温で示す。365日の日別の日平均気温で示しても差し支えはないが、小さい波があり煩雑で、一般の人への情報としてはかえって劣る。
 ここで問題なのは、暖冬の定義である。もちろん長年(普通は30年間)の平均値からの偏差の大きさによって、統計的に決められる。ヨーロッパでは偏差がプラス(高温)の場合、マイナス(低温)の場合を4段階に分けている。極端に高い(極端に暖かい)、非常に高い(非常に暖かい)、高い(暖かい)、やや高い(やや暖かい)の4段階、そして、平年並み、とに区分される。マイナス(低温)の場合の表現も同じで、やや低い(やや寒い)、低い(寒い)、非常に低い(非常に寒い)、極端に低い(極端に寒い)とする。両方で、寒暖の状態は言葉によって9段階に表現する。
 このような段階区分は各気象台・観測所における観測値によって統計的に決めることが可能である。しかし、我々の日常生活では、ある地域を考える必要がある。市町村くらいの範囲なのか、関東地方・東北地方といった地方くらいの範囲なのか。一般に暖冬という場合、その対象地域はどうなのか、残念ながら決まっていない。地球温暖化といっても、地球全体かどうか、各大陸別、緯度別、国別などの広がり別にかなり状態は異なり、またある年ごとにその状態はかなり異なることが知られている。

ヨーロッパの寒波

 ヨーロッパの寒波については、連続エッセイで何度か取り上げてきた。それらは単行本の中にまとめてある。例えば、2008年12月から2009年1月の場合は『地球温暖化時代の異常気象』(吉野、2010、成山堂)の中で述べた。2009年12月から2010年1月の寒波と豪雪、2010年12月から2011年1月にかけての寒波については『極端化する気候と生活』(吉野、2013、古今書院)に述べた。これらの知識をまとめると、次のとおりである。
(1) 平均気温は上昇している。言い換えれば、地球が温暖化した影響はヨーロッパでも明瞭である。しかし、寒波(低温な数日間)は発生する。
(2) 西ヨーロッパ・中央ヨーロッパ・東ヨーロッパで特に低温の偏差は大きくなる。被害の程度も大きい。
(3) 低温をもたらす大気の流れは、対流圏の蛇行する偏西風に乗って高緯度から中緯度に南下する。その地域がヨーロッパで、ちょうど東アジアの日本付近と似た位置関係にある。
(4) 偏西風が蛇行して南に張り出した部分を谷、北に張り出した部分を尾根と言う。同緯度で言えば谷の部分は気圧が低く、尾根の部分では気圧が高い。北半球では、3波型と呼び、谷は東経120−130度、東経10−20度、西経80度付近に出現することが多い。
(5) 西ヨーロッパは気圧が低い部分になり、アイスランド低気圧の強化・東進に関係し、寒波の原因となる。
(6) 中央ヨーロッパ・東ヨーロッパは気圧の高い部分になり、ユ−ラシア大陸上に冬形成される大きな高気圧の西端部分の張り出し・分離と関係している。
(7) 上記の構造、大気の流れの南限はもっとも南下した場合でも地中海北岸付近である。フランスのローヌの谷は気流が南下しやすいので、地中海まで寒気が到達し、ジェノバ湾に低気圧がよく発生する。

南ヨーロッパ・地中海地方の場合

 南ヨーロッパ・地中海周辺地では、大西洋のアゾレス高気圧、地中海上の前線帯とそこで発生・発達する低気圧、東ヨーロッパから南ロシアに延びる高気圧帯の構造や動きなどとの関連を考えねばならない。
 日本の中学校・高等学校でも「地中海性気候」の内容は教えられる。別名を「冬雨気候」ということを叩き込まれる。冬季には地中海の海面は周辺の陸地部分より温度が高いので、低気圧が発生し、発達し、雨をもたらすためである。季節の変わり目には集中豪雨を起し洪水・雷・突風などの被害をもたらす。もし、低温ならば豪雪となる。

ルーマニアの例

 最近送られてきたルーマニアアカデミーの地理学雑誌に、寒波の詳しい研究結果が掲載されていた(Bogdan et al., 2013)のでここに紹介しておきたい。ボグダンはルーマニアアカデミーの教授で気候学を専門とし、現在、この分野の研究者としてルーマニアにおける第1人者である。調査地域は南ルーマニアのオルテニア(Oltenia)地方である。(図1)は2011年12月における地域平均の日最高気温・日平均気温・日最低気温の日日変化を示す。この地域には16の観測所があるので、地域平均とはこの16箇所の平均である。16箇所の海抜高度は56mから1585mまでばらつくが高度による差は考慮しなかった。
(図1)2011年12月の南ルーマニア(オルテニア)地域平均の日最高気温・日平均気温・日最低気温の日日変化と、それぞれの傾向線(直線)。

 この12月、オルテニアの地域平均では平年との偏差は+1.9℃で、平年と比較して暖かであった。しかし、(図1)で見るように、日最低気温では12月1日か2日、24日か25日、27日に波のマイナス(下方への突出)が明らかである。この日はかなり冷え込んだことになる。一方、日最高気温の日日変化は日最低気温の日日変化と並行しておらず、12月4日、11日、28日に波のプラス(上方への突出)が目立つ。これらの日はかなりの暖かさであった。また、興味あるのは、日最低気温と日最高気温の12月(1ヶ月)の低下率(直線の傾斜)である。前者は小さく、後者は大きい。次に2012年1月の状態を(図2)に示す。
(図2)(図1)と同じ。ただし、2012年1月。 (図1、図2ともBogdan et al.、2013による)

 日最低気温が特に下がったのは、1月2日、17日、31日で、特に31日のマイナスは著しい。しかも日最高気温も顕著なマイナスである。その他の特性は図1の場合と同じである。こうして、2012年2月の寒い冬に入った。図は省略するが、日最低気温は2月1日と9日にマイナスが非常に大きかった。バイレシュティ(海抜5m)では2月1日に−28.9℃を記録した。平年との差は大きく−5.8〜−5.9℃に達した地点は3地点、最大でー6.2℃が1地点現れた。
  このような1月31日から2月18日まで続いた低温は、実際には2月1日と9日の二つの寒波の極を持っていた。これらの波は、アゾレス高気圧が、アフリカ高気圧と連動している期間と、していない期間とがあるが、東ヨーロッパの高気圧につながる高圧帯を形成している時で、その状況に支配されていた。
 この寒波でルーマニア全国で死者86人、約60,000人が凍結した積雪で外出不能になった。全ヨーロッパでは600人以上の死者が出た。過去もっとも厳しい低温であった1953−1954年の冬と比較した結果を(表1)に示す。

(表1)1953−1954年の冬と2011−2012年の冬の比較(Bogdan et al.、2013)

要素 1953−1954年 2011−2012年

最低気温 −31.2 〜 −19.0℃ −28.9 〜 −6.0℃
0℃以下の日数 39日 32日
豪雪の間隔 4日(1954年2月) 3日(2012年2月)
豪雪日数 12日(同上) 7日(同上)
豪雪時の風速 125−140km/時間 60−80km/時間
積雪深 3−6m 2−3m


 寒波による災害は低温の他、風速、積雪、吹雪、地吹雪などによる交通・建物によるものがひどかった。


[文献]
Bogdan, B. et al., 2013): Comparative climatic characteristics between the winter of 2011−2012 and the winter of 1953−1954 in the south of Romania. Romanian Journal of Geography, 57 (1), 9-24.


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