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連載エッセイ [22]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
寒波は少なくなっているか
地球温暖化と寒波

 地球温暖化の結果、冬の寒波の発生回数は少なくなり、たとえ寒波が吹き出しても、それほど酷くないような気がする。しかし、その一方で、この数年、非常に厳しい寒波を経験したりする。蒙古や、内蒙古における寒波による大きな被害のニュースに接することもときどきある。これは東アジアだけなのか。いったい、どうなっているのだろうか。
 すでにこの「連続エッセイ」で何度も指摘したように、寒波襲来によって、仮に平年より10℃下がったとしても、暖冬が連続している時代と、寒冬が連続している時代とでは、人間や動植物の生活に対する影響の度合いはまったく異なる。地球温暖化によって暖冬の時代になってくれば、暖かい冬に慣れた体、食物、生活スタイル、さらには市場や産業の構造までも暖冬条件に慣れ、適応する。結果として低温の影響は強く大きくなるのである。
 今回の「連続エッセイ」では、内蒙古における寒波の出現状況に関する最近の研究結果(劉、朱、ほか、2014)を紹介しておきたい。東アジアの冬季のサバイバルを考える上で欠くことができない地域の近年の状況である。

内蒙古における20世紀後半から21世紀初頭の寒波

 過去約60年(1951−2012年)の地球全体の平均気温はIPPC(気候変動に関する政府間パネル)によれば0.72℃(0.49−0.89℃)の上昇である。全中国の平均では1960−2009年の50年間について1.38℃、上昇した。北半球全体では高緯度地方において上昇率は大きいことが知られているので、その傾向に一致している。
 内蒙古では、最近の53年間(1960−2013年)の集計では147回寒波が発生した。平均すると毎年2.8回となる。この中、最も早いのは2006年9月9日、最も遅かったのは1976年5月13日であった。寒波は1960年代が37回、1970年代29回、1980年代と1990年代がそれぞれ18回であった。このように10年ごとに見て時代を追って回数は減少した。
 ここで中国における寒波の定義を紹介すると、『ある観測地点における寒波とは、日最低気温(または日平均気温)が24時間内に8℃またはそれ以上低下した場合』、または『48時間内に10℃以上低下した場合』、または『72時間内12℃以上低下した場合』とする。そうして『日最低気温は4℃かそれ以下』を条件とする。また『ある地域における寒波とは、その地域内における全観測地点の40%以上の数の観測地点で上記の寒波を記録した場合』とする。
 さて、寒波は内蒙古の121観測所の集計によると、1960−2013年の間に10年につき0.5回の率で減少している。しかし、これを1990年までを前期とし、1991年以降を後期とすると、前期には10年につき1.1回の率で減少しているが、後期は10年につき0.45回の率で増加している。その状態は(図1)の(a)に示すとおりである。上記の我々が何となく感じていたことが統計的に捉えられている。
(図1)(a)内蒙古における年寒波発生回数の変化、1960−2013年。
(b)内蒙古における寒波の月発生回数の変化、53年間の合計。
[劉ほか、2014年による]

寒波はいつ多いか ―秋か、真冬か、春か―

 寒波は真冬に多く発生すると思われていたが、この内蒙古における研究は二つの山があることを明らかにした。(図1)(b)に見られるように、9月から5月までの冬を中心にした9ヶ月間に発生し、発生頻度の山(極大)は11月と3月に出る。最も低温な1月は両極大の谷間で、発生頻度はこれらの山より明瞭に少ない。11月は晩秋〜初冬、3月は晩冬〜初春、内蒙古の緯度から考えれば、冬の初めと終わりに発生頻度が多いと理解してよかろう。
 これはきわめて重要な発見である。もしかして、初冬の寒波と晩冬の寒波で何か特性が異なるかも知れないからである。すなわち、初冬の方はシベリア高気圧の発達状況に関連し、晩冬の方は低気圧発生の変動に関係しているかも知れない。本来、真冬に一つの大きな山であったのが温暖化の影響で小さくなったのかも知れない。詳しい今後の研究が必要である。また、家畜飼育の立場から見ると、冬の食料や、春の子育てには蒙古草原の環境変化はサバイバル条件の最たるものである。牧畜業の重要課題である。

春の寒波の発生頻度の長期変動

 上記の第2の山(晩冬〜初春)を春の山と呼び、その出現回数の1961年から2012年までの長期変動を(図2)(a)に示す。
(図2)(a)内蒙古における春の寒波発生回数の変化、1960−2013年。
(b)内蒙古における地域別に見た寒波発生回数の変化、1960−2013年。
[劉ほか、2014年による]

 これは非常に興味ある統計結果で、1960年代、1970年代、1980年代と寒波の発生回数は次第に少なくなった。10年間に0.5日の率で減少した。ところが1990年代以降、やや増加傾向に転じ、10年間に0.165日の率で発生回数は増えつつある。図は省略するが、秋の場合も、同じように1990年代以降増加に転じ、増加率は10年間に0.194日の率であった。

地点集計か地域集計か

 内蒙古のように広大な土地において、比較的少ない地点で捉えた観測結果は、地域全体でどうなっているのか検討することが必要である。少し難しくなるが、ある1地点における観測値の代表性の問題が重要になってくる。上記の統計結果は、代表性を考慮せずに統計した結果である。
 内蒙古の場合は(表1)のように森林地域と草原地域で差がある。


(表1)内蒙古の近年の寒波発生回数の変化傾向(劉ほか、2014のデータによる)

  森林地域 草原地域 沙漠地域

寒波発生回数(10年間につき) 4.4〜4.0回減少 6.2〜2.5回減少* 3.0〜6.3回減少

*極端な寒波回数は増えている


 このような土地の植生の差のほかに、シベリア高気圧からの寒気の流入経路(主なものは3経路ある)との位置関係にもかかわる。
 このような地域の植生、位置、などの条件を考慮して補正し、内蒙古の発生回数の最近53年間の変化傾向を求めた結果は(図2)(b)のとおりである。最近の53年間では僅かながら減少傾向を示すというのが結論である。

[文献]
劉 憲鋒、朱 秀芳、ほか、2014:地理学報、69(7)、1013−1024.


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