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連載エッセイ [12]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
伝承とサバイバル
津波の伝承に学ぶ

 伝承とは“言い伝え”である。伝承を研究するのは民俗学・歴史学の重要なテーマの一つである。あまり自然科学の研究者や工学研究者・技術者は関心をこれまで払ってこなかったきらいがある。2011年3月11日の津波災害の直後、テレビで、工学技術者がアナウンサーの過去の津波災害記録に関する質問に答えて、データは工学関係者の使った近年のものだけが精度が高く、民間の伝承や歴史学・先史学などの記録は頼りにならない。。。。すべきでない。。。。という放映があった。私はこの工学者の文化的素養を疑ったが、よく考えてみると、これが日本の今の学問研究者の一般的な現状だという結論になった。さすがに、このような発言は1週間もするとメディアには出なくなった。
 「天災は忘れた頃にやってくる」という寺田寅彦の名言がある。これは、天災と呼ばれる厳しい自然災害の発生の平均周期と、人間の記憶という生理現象の持ち堪えられる期間あるいは人間社会が反応できる期間との絡み合いを指摘している。人間のサバイバルの限界は当然のことながら、自然現象の発生周期の年数と、人間の記憶や人間社会の反応体制の長年に渡る状態変化とに関係している。
 寅彦の言う天災とは、自然災害、いいかえれば、人間の関与なしに発生する現象によって人間または人間社会が被る災害のことである。この連続エッセイで、すでに何度も扱ったが、2011年3月11日発生した地震・津波は最近の天災では特筆すべき場合である。このような現象と、伝承とのかかわりを学び、サバイバルを勉強してみたい。

津波と神社の位置 ― 伝承分析の一例

 今回の津波に関して、「神社関連自然災害伝承データベース」は神社関連の情報をえるデータベースとして最も頼りになるものである。宗教社会学者の藤本頼生(2014)による詳しい記述を参考にして紹介しておきたい。この研究はまず神社の位置・機能・貢献をまとめた。すなわち、(1)沿岸部に鎮座する神社の多くが高台にあり、津波被害から免れた。(2)数週間〜3ヶ月、多くの神社が避難所として機能した。(3)各神社に伝承されて来た祭り・民俗芸能が崩壊した各地域コミュニティの共同性の復活、絆の再結束を推進した。
 2011年3月11日以来、3年間に扱かわれたテーマを分類すると(表1)のとおりである。

(表1)東日本大震災発生以後の3年間における神社と災害伝承に関わる研究の分類*

(1) 地震史・津波史を中心とする歴史研究・歴史地理にかかわるもの。
(2) 神道・宗教研究に関するもの。(神話・神道史などを含む)
(3) 宗教関連の災害救援・復興およびその逸話・伝承のうち神道に関わるもの。
(4) 民俗芸能・神事芸能などで儀礼の復興に関するもの。
(5) 地名・民俗研究に関するもの。

*藤本(2014)による

 この表にあがっている項目の内、サバイバルに密接な関連を持つものは、(1)と(4)で、直接、関係している。また、よく、“日本人は生まれると神社・お宮さんに行き、結婚式をクリスチャンの教会であげ、亡くなった時の葬式を仏教のお寺であげる”と外国人に不思議がられる。かと言って、無宗教ではない。この傾向の理由を今論じる暇は無いが、このような心の持ちようは日本人に特有と言えよう。いいかえれば、(表1)の(3)がサバイバルの限界時に意義を持つことがあるのではないかと思う。

神社由緒に見る自然災害別の発生頻度

 上述のデータベースは東日本大震災の被災地および東南海地方の被災想定域を前提にして情報を集積したものである。このデータベースに収録されている神社の被害対象を分類した結果を(表2)に示す。

(表2)東日本(1都9県)における神社由緒に残されている自然災害の対象別頻度*

  青森 岩手 宮城 福島 栃木 茨城 埼玉 千葉 東京

集録件数 3 72 130 62 84 38 33 28 24
地震 0 2 19 3 1 1 0 4 24
津波 0 15 24 13 0 0 0 4 2
台風(暴風) 1 5 10 3 15 3 1 1 0
止雨 0 3 0 0 0 0 0 0 1
干ばつ・祈雨 1 10 7 1 0 2 0 1 1
飢饉 0 0 1 0 0 0 0 0 0
波浪 0 0 1 0 0 0 0 0 2
冷害 0 0 0 0 0 0 0 0 1
洪水(水害) 0 4 8 3 30 2 2 0 1
噴火 0 1 0 0 1 0 0 0 1
0 5 4 1 7 0 0 0 0
0 0 0 0 1 0 0 0 0
1 0 0 0 0 0 0 0 0
海難・水難 1 0 1 0 0 0 0 0 0
水毒 0 0 1 0 0 0 0 0 0

小計 4 45 76 24 64 8 3 9 11

*藤本(2014)による

 (表2)から読み取れることは次のとおりである。
(1) 自然災害に関する従来の統計結果・研究結果が明らかにしている地理的発生分布とほぼ同じ特徴を示している。いいかえれば、地震・津波に関連する神社由緒のデータ価値が高い。
(2) 津波被害は、岩手県15件、宮城県24件、福島県13件で、非常に顕著に集中している。
(3) 台風や洪水による被害件数が栃木県に集中して多い。
(4) (表2)のようなまとめを、日本の他の地域について行う事が急務である。

伝承の有意性

 (表2)でも値の大きい、すなわち、発生頻度の高い方に注目した。もちろん、頻度の高い方が、“インパクトは強い”と考えるのが当然であり、問題の重要性も高い。
 しかし、例え1回でも伝承や古記録にあるものの重要性を指摘したい。有意性・信憑性の検定・検討は非常に難しいが、混同してはならない。0と1との違いを明らかにしいて行かねばならない。これが、今回の最初に述べた。。。。忘れた頃にやってくる。。。。現象の本質を明らかにすることにかかわると思う。特にサバイバルは1回の臨界値が決定的意義を持つ場合があるので。

[文献] 藤本頼生(2014):自然災害との共存――自然災害伝承と神社由緒との関係性にみる――。古沢広祐編:共存学2, 災害後の人と文化 ゆらぐ世界、260ページ(国学院大学研究開発推進センター)、103−120.


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