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連載エッセイ [48]
暮らしの中のバイオクリマ
吉野正敏

 
秋の満月と日本人
 
台風襲来のはざまで

 中秋の名月、9月19日の夜が過ぎ、10月17日の十五夜も過ぎて秋は一段と深まり、早くも冬の季節風さえ時折感じられるようになってきた。今年は台風の発生数が多く、36個であった1994年以来19年ぶりに30個を超すのではないかと思う。この原稿を書いている10月25日すでに28個であるから。今年は、これまでにも、本土に上陸したり、近づいたりして、死者を伴う甚大な災害をもたらした台風が多かった。台風18号により東北地方北部では、豪雨と斜面崩壊・洪水などが深刻であった。台風26号では伊豆大島でやはり豪雨と火山斜面堆積物崩落・流出等の被害が大きかった。
 2013年8月・9月の猛暑・酷暑について、この連続エッセイで何度も触れたが、今年は特にひどかった。個人の健康・生活ばかりでなく、社会全体に影響が出た。その疲れがやや収まったかと思っていたところへ、今度は台風襲来、それがもたらした多大の被害の発生である。災害国日本のイメージを今更ながら実感した。
 台風が次々と襲来したはざまで、秋の名月を今年は割合よく日本各地で見ることができた。幸いにして、台風が去り移動性高気圧に覆われる気圧配置になった日が多かったからである。“月にむら雲”も、地域によってはもちろんあったであろうが。
 満月を見れば、日本人なら誰でも、
『。。。。。十五夜お月さん ごきげんさん。。。。。』(1920年発表)
『。。。。。雨降りお月さん 雲の蔭。。。。。』(1925年発表)
 という野口雨情の作詞による二つの童謡を想い出すであろう。月と秋の情感は幼児の頃から育まれている。成人しても生活心情に奥深く繋がっているのである。
 斜面崩壊の現場で犠牲者を徹夜で捜索されている方々には、お月見の話は、むしろ非礼であろう。一方、避難所で困難な環境を日々乗り越えておられる避難者の方々には、たとえ一瞬であっても、月を見る余裕があることを願いたい。満月に接することは、日本人ならば心の安らぎになり、一人一人を見守ってくれる自然があるという証を感じ、元気の源になるであろうことを筆者は疑わない。

万葉から中世の人びとの秋

 万葉集の歌の表現は、古代神話以来受け継がれてきた日本人の自然観と古代的思考を反映している。古代の東山道は京を発って木曽谷から伊那谷を経て、陸奥・出羽へと1,000kmも続く道である(図1)。
(図1)古代七道と東山道の神坂峠の位置(和田,2010による)

 この古代東山道にある神坂峠とその近くにある[ 園原] の集落について、古典文学の立場から和田明美は研究した*)。そこで明らかにされたことは、万葉の時代には月の輝き、明るさ、雲間に隠れるさまを、気象状況の面から捉えて、人間の心の動きの表現に迫ったものが無いことである。もちろん、秋と春で異なるという点も表現されていないようである。
 平安後期から中世に入ると、神坂峠は[信濃の御坂]としてより一層観念的な情景歌の性格を持つようになった。一方では、[木曽の御坂]として形象化された。例えば、藤原俊成(ふじわらしゅんぜい)(1144−1204)の
五月雨に木曽の御坂を越え侘びて
          懸路に柴の庵をぞする(長秋詠藻(ちょうあきえいそう)、1178年)
というような『五月雨』が降る中の一夜の宿泊とか、『谷風』・『吹雪』・『白雲』・『夕立』が歌われるようになる。これは峠越えが、夜道、夜の光景とは離れた行動であったためもあろう。また、夏冬という両極の季節に遭遇する現象、夏の雨・入道雲、冬の雪が、歌の対象として、インパクトが強かった結果と思われる。あるいは、和田が指摘したように、園原近隣を詠じたこの時代の和歌は、リアリティーや日常性を拭い去り、谷風・白雪・夕立・五月雨などの素材を配することにより、枯淡・典雅な和歌表現へと変容を遂げたのだとも言えよう。
 それにしても、この東山道[園原]の関わる歌には、洪水や強風・嵐など台風や洪水の表現が無いことである。伊勢・出雲では神話時代・古代からこれらが対象になっているが、中部地方のこの地域は相対的に影響が小さいことの反映ではなかろうか。これも将来の研究課題であろう。

2013年の中秋の満月

 今年の9月19日は旧暦の8月15日、中秋の名月であった。中秋の名月が毎年かならずしも満月ではない。2011年、2012年は今年と同じく中秋の名月は満月であったが、月の満ち欠けのサイクルが1カ月ではなく、少しずれているから、中秋の名月は少し欠ける年もある。次に中秋の名月が満月になるのは2021年だそうである。そのような大切な満月を今年は日本各地で見ることができた。9月19日前後の気圧配置の推移を見よう。
(図2)2013年9月15日(1),16日(2),17日(3),18日(4),19日(5),20(6)の地上天気図
(気象庁による)
 (図2)は9月15日から20日までの地上天気図を示す。(図2(1))に見られるように9月15日9時、台風18号は四国の南方海上にあり、日本海から北海道にかけて停滞前線がある。日本列島は強い雨がいつどこに降るかわからない状況であった。(図2(2))に見られるように9月16日には四国・紀伊半島・東北地方にかけて大雨、日降水量は奈良県・和歌山県で400mmに達するほどであった。台風18号は愛知県に上陸、強風・強雨に見舞われた。京都府・滋賀県・福井県に対し、大雨特別警報を発表した。東北地方の北部では洪水・斜面崩壊の災害が起こった。この日は十三夜の月が出るはずであったが、日本各地の人々は空を見上げるどころではなかった。17日(図2(3))・18日(図2(4))は台風一過、高気圧に覆われて、北日本・北海道を除いて好天に恵まれた。
 そして9月19日(図2(5))、まさに典型的な移動性高気圧に覆われた。教科書にも載せられるような代表的気圧配置型である。中秋の名月が輝くにはこれほどの夜はなかろう。
 9月20日(図2(6))、十六夜の日である。日本海北部に低気圧があって、北海道や北日本の天気は悪くなってきた。しかし、中央日本・西日本では好天であった。ここで指摘したいのは、台湾の南東方向に次の台風19号が発生していることである。9月19日の移動性高気圧による好天は劇的な“台風と台風のはざまの出来事”であった。

10月の満月

 10月17日の夜は10月の満月であった。10月14日は十三夜であった。9月19日ほどの好天ではなかったが、月の光、月の輝きを見上げるのには十分であった。日本中が台風26、27、28号に振り回される間の月夜であった。
 南方海上表面水温も10月下旬も半ばまできて、やっと下がり始めたという。やってくる台風がなくなることを期待する。11月の満月が見られることを望む。

*)参考文献:和田明美(2010)古代東山道,園原と古典文学。万葉人の神坂(みさか)と王朝人の帚木(ほうきぎ)。愛知大学綜合郷土研究所ブックレット,19,78ページ。


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