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連載エッセイ [42]
暮らしの中のバイオクリマ
吉野正敏

 
霧日数・雷日数の変化
 
世界の霧日数と雷日数

 ロンドンの霧は戦前から映画や小説のテーマになってきた。大西洋からの南西の暖かい気流とユーラシア大陸上の高気圧からの寒冷な気流がぶつかり合う寒候季の北西ヨーロッパは霧がよく発生する。
 それに加えてイギリスは産業革命の発祥の地、石炭をエネルギー源としたので、その煤煙は凝結核の源となり霧日数を増加させた。都会が吐き出す煤煙もこれに加わった。これは20世紀の前半にもっとも深刻化し、バイオクリマを悪化させた。何事も靄の中、霧の中に包み込んでしまうロマンチックな映画や小説の対象では、実は無かったのである。

都市霧

 ロンドンの霧は都市霧に分類される。東京の霧も同様である。19世紀から20世紀前半には、都市の発展とともに凝結核の供給が増加し、霧日数はスモッグ日数を含めて増加した。しかし、都市がさらに成長し、人口が集中し、人工排熱量は増加し、中心建造物(高層建造物)地域が拡大すると、ヒートアイランド強度(都心と郊外の気温差)も著しく増加する。高温・乾燥化がひどくなる。これが都市霧の発生を抑える。都市霧の日数は20世紀後半には強い減少傾向になった。
 東京の例では明治から大正初期の時代(1896年から1915年頃)、年霧日数は(5年平均値で)10−15日、その後増加し、昭和初期(1926年から1940年頃)は45−52日で、この頃が最大の時代であった。第2次大戦をはさんだ1941年から1950年頃は32−38日、昭和中・後期には20−24日に減少してきた。最近では、非常に少なくなり、霧の発生の無い年すらある。
 アフリカの都市などで、都市の発展の位相が多少遅れている場合があるが、それにともなって都市霧の日数の増加・減少の波も遅れている。中国の都市ではやはり位相がずれていて、最近、極大の時代を迎えている場合が多い。昨年から今年にかけて、人々の衛生・健康を脅かし、また、自動車交通の大きな障害となり、社会問題になった。

盆地霧

 山間の盆地では、移動性高気圧に覆われた晴れた夜には冷気が溜まりやすい。これを冷気湖という。冷気湖内では水蒸気が凝結して霧が発生する。これを盆地霧という。日本では、飛騨高山の盆地、中国地方では三次盆地、九州では日田盆地などが特に有名だが、全国に見られる。
 諸外国でももちろん見られ、ヨーロッパアルプスにおける観察・研究は古くからある。タイ北部・ラオス・中国南部における霧日数の変化を研究している岐阜大学の野元世紀教授によると、この地域の近年の霧日数の減少は顕著だという。
(図1)タイ北部における年間霧日数(縦軸)の1951〜2010年の変化(野元,2013による)

 (図1)は1951年から2010年までの60年間のフェレ(Phrae)、マエ サリアン(Mae Sariang)、ピトサヌロク(Pitsanulok)の変化を示す。この60年間を直線的に減少したとして変化率を求めるとフェレでは1.34日/年、マエ サリアンでは0.42日/年である。特に減少の著しいのはピトサヌロクで、森林面積が激減した1965年頃から霧日数はほとんど0である。
 森林面積の減少は相対湿度・水蒸気気圧の現象を引き起こし、霧日数の減少となる。雲南省などを含め、熱帯・亜熱帯の森林地帯では非常に明らかである。

雷日数との関係

 タイ北部における霧日数の減少と関連して、野元教授は数十年の時間スケールでみた近年の雷日数の減少傾向を指摘した。雷日数は、霧日数の減少傾向の位相に約10年遅れて、すなわち、1960年代後半の最高値(約105日/年)から減少し、1990年頃、約53日/年にまで減少した(図2)。その後やや上昇し、現在は約60日/年になっている。

(図2)タイ北部のフェレ(Phrae)における年霧日数(水色)と年雷日数(赤色)の1951〜2010年の変化(野元,2013による)

 霧日数はごく最近の10年間、減少しつつあるが、雷日数はやや増加している。数十年の時間スケールの影響と10年スケールの時間スケールの影響とは異なった要因があるのではなかろうか。
 日本における雷日数は近年減少している場合と、増加している場合、あるいは不明という場合がある。これについては筆者の『極端化する気候と生活』(古今書院,2013)に述べた。
 時間スケールでは森林面積の減少など、やや広い地域の影響はおそらく数十年のスケール、都市化や土地利用の変化など、やや狭い範囲の地域の影響は10年スケールで影響が現われるのではなかろうか。今後の解明が待たれる。温暖化による盆地の日中の高温化による雷日数増加へのは影響は(図3)で見る限り数年ないし10年スケールで認められる。

(図3)タイ北部のフェレ(Phrae)における1951〜2010年の雷日数の月別にみた10年ごとの変化 (野元,2013による)

 タイ北部のフェレでは5月と10月の乾季における近年の雷日数の減少は特に明瞭である。しかし、1991〜2000年の10年より2001〜2010年の方がやや増加している。種々の要因が複合していることが考えられる。

霧日数の変動・雷日数の変動

 以上述べてきたことをまとめると、霧は局地的な現象、雷は局地的であるとともにシノプティックな現象として考えている。しかし霧にも海霧などかなり広い範囲のシノプティックな現象・地域スケールの現象がある。日本では梅雨時の三陸沿岸の霧、夏の北海道東部沿岸の霧などがある。これらの最近の霧日数の変化はまた興味がある。雷日数も冬の北陸沿岸や東北地方日本海側ではどうなっているか、詳しく調べてみる必要がある。東南アジアではクラッシャンなど華南からトンキン湾沿岸の海霧日数の最近の変化など興味ある課題である。


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