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連載エッセイ [39]
暮らしの中のバイオクリマ
吉野正敏

 
東ヨーロッパ・中央ヨーロッパの洪水
 
2013年5〜6月のドナウ川・エルベ川

 東南アジアのタイで2011年に大洪水が起こったことはこの連続エッセイですでに紹介した。今回は今年の5〜6月の東ヨーロッパ・中央ヨーロッパの場合を書いておきたい。これはただ、外国の例を知識として持っているためでなく、外国に日本の企業が進出して生産活動をしている今日、部品のサプライチェーンの1部が国外にあるのだから、外国の現地の状態を知っていることが必要なためである。われわれの知識は外国については、言うまでもなく日本国内より弱い。また、日本国内は気象庁その他の機関が詳しい情報を提供してくれるが、外国についてはやはり制限が大きい。日本の企業の生産活動にはわれわれが、例えそれが国内で発生した災害であれ、国外で発生した災害であれ、対処しなければならない。この意味で、今回はドナウ川、エルベ川などの洪水を紹介する。
 タイの場合と比較してどのような状態であったのか、工業生産基地としてどのような問題が指摘されるのか、考えてみたい。

洪水の実態

 まず、洪水の実態を現在手元にある資料によって、ドナウ川の場合を上流の国から下流に順に紹介する。  
 [ドイツ]:ドナウ川は南ドイツに最上流部を持つ。バーデン・ビュルテンブルク州、バイエルン州を東方に流れてパッサウでオーストリアに入る。今回の洪水では自動車部品のZFのパッサウ工場が一時1m50cm浸水し約4日間の操業停止になった。アクゾ・ノーベル(化学大手)も一時操業停止になった。パッサウにおける水位は2002年の洪水の時と同じであった。
 [オーストリア]:ザルツブルクは支流のかなり上流部に位置するが、6月11日、列車の運行が不能になり乗客160人が近くの兵舎に避難した。フォラールベルクでは6月3日1人死亡、低地の住民が多数避難、メルケールでは浸水、ドナウ川の水位は6月10日約10m、これは過去の最高であった2006年8月14日より約50cm高かった。6月11日14万ユーロの支援要請をした。ウイーン郊外のクリッツェンドルフでは20人が浸水家屋に取り残され、モーターボートで避難した。
 [チェコ]:6月4日非常事態宣言。ハイネッケン(オランダのビール大手)、アクゾ・ノーベル(オランダの会社)操業停止。低地の住民多数が6月11日避難した。プラハでは動物園のトラを避難させた。
 [スロバキア]:ブラティスラバで6月3日以来、道路数か所が閉鎖された。ドナウ川の堤防に土嚢を積む。
 [ハンガリー]:今回の洪水で被害が最も酷かった。過去にも大洪水はあった。ブダペストでは1838年の場合、150人が死亡し、5万人が家を失った。2006年8月14日には、過去最高の水位と言われた2002年の場合を超えて、8m53cmに達した。さらに2013年6月10日には8m96cmに達した(未確認)という。堤防に積む土嚢は300万袋用意された。34の町村で1、300人以上が自宅から避難した。道路の閉鎖は44ヶ所に達した。ブダペストの北方にあるマジャールスズキのエステルゴム工場では1日半操業を停止した。これは橋が封鎖され3,000人が工場に通勤できなくなったためである。
 [クロアチア]:北東部の国境線がわずかだが約50劵疋淵川に接する。2013年6月9日、バティナの近くにおける水位は6m50cm.ブコバールで兵士100人が動員され、警戒に当たった。堤防には25,000袋の土嚢が配られた。
 [セルビア]・[ルーマニア]・[ブルガリア]:被害はあったはずで、筆者は資料を収集中である。

2013年の洪水の特色

 この洪水の原因は5月に起こった激しい集中豪雨である。詳しい気象学的解析はいずれ続報で扱いたい。今回の洪水のテレビ・インターネットなどで報道された画面を見て、筆者が最も関心を持ったのは、浸水した市街地・住宅地・道路などで水に浸かった自動車が全く無かったことである。日本を含め東南アジアや地中海沿岸の集中豪雨による洪水では必ず浸水地域に立ち往生して動けなくなった自動車がある。そのような自動車が今回無かったのは、ドナウ川の水位は異常に高くなり、低地では浸水地域が出たが、その水位の上昇速度は遅かったのではなかろうか。つまり、自動車は水位が高くなる前に避難する時間があったのだと推定される。じわじわと水位が上昇するのはヨーロッパの大河川付近の低地では一般的である。一方、日本は豪雨の量が多く、河川勾配が急で、しかも山地の割合が大きい小流域である。ヨーロッパの場合は大きな違いがある。
 たった1枚、日本の新聞にも載ったが、ドナウ川の洪水地域で自動車が数台並んで水に浸かっている写真があり、自動車販売店の展示場風景とあった。おそらく自動車販売店の人は洪水への対処を知らなかったか、怠ったかであろうと思われ、避難可能な自家用車の対処との差が明瞭に出たのであろう。
 じわじわと水位が上昇し避難の余裕があるならば、どうして死者が出るかという疑問が生じる。絶対数はアジアに比較して少ないが、それでも死者が出ることは確かである。死者は歩行困難な一人暮らしの老人が多いのかなどの分析が必要である。

外国メディアの報道テーマ

 今回の洪水に関する外国メディアの報道のテーマを上げると次の通りである。ただし、順不同である。
(1) ドナウ川など大河川の水位の上昇。
(2) 死者数。避難者数。
(3) 道路閉鎖。
(4) 学校閉鎖。
(5) 土嚢配布・準備。
(6) 貨物船・遊覧船の航行不能。
(7) 観光産業への打撃。
(8) 緊急事態宣言・緊急支援態勢など。
 これらの項目はいずれも古くからあるもので、新しい問題すなわち、以下の観点が外国メディアには無かった。
(1) 2011年のタイの洪水との比較。
(2) 操業停止工場の実態。
(3) 世界的な規模のサプライチェーンに及ぼした影響。
(4) 原子力発電所の冷却作業に及ぼす影響。
(5) バイオクリマに関連する問題。
 これらの中でサプライチェーンに関しては、ヨーロッパでは高速道路網が発達しており、今回の洪水の影響を最小限に抑えられたという。もしそうだとすれば、東アジア・ 東南アジアの地理的位置は変わりようがないし、自動車運送と船便・航空便による運送との違いをどのように克服するのかという問題になろう。暮らしの中のバイオクリマとは次元の異なる問題かも知れないが、われわれとしては関心をもっていなければならないと思う。


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