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連載エッセイ [17]
暮らしの中のバイオクリマ
吉野正敏

 
真夏の花の季節
 
猛暑の夏に咲く花

 夏に咲く花は少ない。お盆に仏様に供える花を栽培し、出荷するのは、大変なご苦労のようである。おまけに昨今の猛暑である。あまりの高温に見舞われるのは人間ばかりでない。デリケートな開花という生物現象は場合によっては人間の熱中症の問題以上かもしれない。しかし、このような猛暑が開花に及ぼす影響はまだあまり研究されてないのが実状である。そこで、今回はそれを少し考えてみたい。

猛暑の年、真夏の花は早く咲くか、遅く咲くか

 これは近頃はやりのクイズとしても第一級の難問と私は思う。植物季節学という学問分野があるが、このクイズに答えられる研究結果を私は知らない。
 一般の日本人は春になると、サクラはいつ満開になるか、秋になれば紅葉はいつ頃かなど、大きな関心を払う。お花見は欠かせない生活の一部であり、詩歌にもうたわれ、少し大げさに言えば、日本文化のバックボーンを支えるのが春・秋の季節現象である。学問的な興味ばかりではないのである。
 これまで、この「連続エッセイ」で何回も季節現象を取り上げた。また、温暖化に伴う春の季節現象が早くなる傾向、秋の季節現象が遅くなる傾向なども説明し、サクラの2度咲き現象なども紹介した。
 しかし地球が温暖化して、春が早く来て、秋が遅くなったら、夏の季節はただ期間が長くなるだけであろうか。その夏に猛暑が来たらどうなるのであろうか。夏に咲く花は早くなるのであろうか、それとも遅くなるのであろうか。あるいは咲かなくなってしまうのであろうか。そこで、2011年と2012年の比較を手元にある各地の地方気象台の観測データで(表1)と(表2)のようにまとめてみた。

(表1)夏に開花する植物の開花日、2011年。
[7・15は7月15日を意味する。 ( )内の+は平年値より遅い、−は早い日数]

地点名 アジサイ ヤマハギ サルスベリ

青森 7・15(−2) 8・2(+5)
盛岡 7・13(+5) 7・6(−9)
秋田 7・6 (0) 7・11(−13)
神戸 6・11(+3)
大分 6・9(−2) 7・28(−7)
宮崎 7・27(−3)


(表2)夏に開花する植物の開花日。2012年。記号は表1と同じ

地点名 アジサイ ヤマハギ サルスベリ

青森 7・17(0) 7・19(−9)
盛岡 7・9(+1) 7・4(−11)
秋田 6・30(−7) 7・29(+5)
彦根 6・18(−2) 8・2(−2) 8・10(+8)
神戸 6・13(+5) 8・7(+22)
大分 6・11(0)
宮崎 7・28(−2)


 上の二つの表から分かることは次のとおりである。
(1) 暑さが酷くなかった2011年の夏は(−)が(+)より倍多い。暑さが厳しかった2012年夏は(+)と(−)はほぼ同じ。つまり非常な猛暑年には早くなる場合と遅くなる場合とほぼ同じである。
(2) しかし、2012年の場合、開花日が7月末から8月の場合には(+)、すなわち遅くなることが多く、2011年の場合のように、(−)は7月中に出ることが多いようである。
(3) 言い換えれば、夏の前半と後半で高温に対する対応が異なることがありうる。また、この前半・後半の境には、連続エッセイで以前指摘した“戻り梅雨”(ユーラシア寒帯前線帯の発達)がなっている可能性がある。
(4) わずか2年の例では決定的な結論を導くことは難しいので、地点数を増やし、年数を増やし、また、西南日本・中央日本・東北日本などの地域別に検討することが必要である。何らかの傾向を捉える可能性は十分ある。
 つまりは、猛暑の夏の影響はただの地球温暖化の影響より以上、または、異なった影響があるらしいのである。

俳句の季語から見ると

 気象庁は季節現象ごとに現象を分類し予報用語を表示し解説している。天気予報などの発表文の統一性を保つためである。例えば、菜種梅雨・梅雨・梅雨の中休み・梅雨の戻り・秋霖・秋晴れなどである。ところが、その表の中に夏に関する用語が一つも無い。これも非常に興味あることで、夏の特徴の一つである。梅雨が明ければ秋まで穏やかな天気・天候状態の期間であることを意味している。
 では、俳句の季語ではどうであろうか。夏の特徴を日本人はどう捉えていたか。

(表3)季語の四季別に見た項目数*

項目 冬・新年 合計

時候 13  4 12 11 40
天文・気象 8 13 13 8 42
地理 6 1 1 4 12
生活・行事 24 30 20 27 101
動物 10 19 8 3 40
植物 14 15 25 11 65

合計 75 82 79 64 300

*坪内稔典,2001:季節集,岩波新書,1006.の目次から作成。

手元にあった「季節集」から四季別にどのような項目が挙がっているかを(表3)に示した。日本人の季節感が何らかの指標にならないかと思って作ったものである。この結果全体的に見ると、夏が多く冬が少ない。植物では秋が非常に多く冬が少ない。動物では夏が多く、冬が極端に少ない。季節による数値の大小は、日本人のその項目に対する季節感・季節観の強弱、あるいは、多様性の差を反映していると見てよいのではあるまいか。
 ところで、今回のテーマである夏の開花はどう捉えられてきたのであろうか。夏の植物の季語の内容を見ると、バラ・バレイショの花・キリの花・スイレン・夏草・カキ若葉・ジューンドロップ(6月のカキの生理落果)・エノキ・くすぐりの木(サルスベリ)・タケノコ・ナツミカン・クワの実・ビワ・トマト・カビである。これらの植物季節、特に開花・満開は日本の気象庁の観測項目になっていない。ただ一つバレイショはドイツでは主食なので農作物生産に関係があり、詳しい研究がドイツ気象台農業気象課によって沢山の成果が刊行されている。また、サルスベリについては、(表1)、(表2)に示したように日本では観測対象になっている。野菜・果物の開葉・開花・結実などの季節も重要であることが、計らずも、語の分析から重要なことが分かった。
 この「季語集」1冊で、日本人の全体像を決めつけるのは差し控えねばならないであろう。同じ観点から沢山の季語集の分析を期待したい。
 猛暑の夏における熱中症の研究はもちろんだが、このような日本文化・精神生活への影響も見逃してはならないであろう。


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