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連載エッセイ [16]
暮らしの中のバイオクリマ
吉野正敏

 
大停電とバイオクリマ
 
2012年インドの大停電

 日本の気象庁の3ヶ月長期予報によると、2012年の夏は西日本は平年より高くなる確率は40%で、それほどは暑くならないであろうと言うことであった。
 日本では東電の福島原子力発電所の事故を受けて、大飯原発を再稼働するべきか、将来の原子力エネルギー政策をどうとるべきかなど、国論を二つに分ける大議論となった。もし、2012年の夏が2010年夏のような猛暑となれば、クーラーなどの使用量が増え、電力不足になる。“節電では済まされず、計画停電を実施しなければならない”という脅しに近い言葉が電力会社から発せられた。
 その議論の中で、気象学・気候学の立場から“2010年夏のような猛暑”を具体的に数字で示すことを世間から求められなかったのは、研究者としては、喜んでよいのか、悲しむべきことなのか、複雑な気持である。気象学・気候学の専門家から言えば、現在の予報技術では数値的な予報をすることは不可能だからである。
 とにかく、2012年の今、8月初めの日本人の庶民感覚では猛暑・酷暑の夏である。これに加えて、時あたかもロンドン五輪である。金・銀・銅のメダル争い、世界新記録・日本新記録などのニュースがいっぱいで、東日本大震災・地震津波や放射能汚染の記事は少なくなった。インドの大停電も新聞記事には出ているし、テレビ・ラジオで放送はあったが、おざなりの程度であった。今回は、今世紀最大の停電と言われるインドの大停電の実態とバイオクリマへの影響について紹介したい。

2012年7月の日本の猛暑と電力需要

 7月〜8月になると、日本では猛暑日はもちろん、酷暑日さえまれでなくなった。7月26日、東日本・西日本では猛暑となり、35℃以上の猛暑日を記録したのは日本全国の観測地点927地点のうちの111地点となった。日最高気温は三重県桑名市で37.8℃、山梨県甲府市で37.4℃、群馬県館林市で37.1℃を記録した。7月29日には猛暑を記録した地点数は74、福島島田村市船引町では34.6℃(過去最高)を記録した。
 東京電力7月27日のピーク時における電力需要は2012年の夏の最大値を記録した。少し詳しくみると、26日の最大値は4,931万キロワットであったのが、さらに27日14時台には157万キロワット上がって、5,088万キロワットに達した。東電や中部電力では供給力(5,580万キロワット)に対する使用率は90%を超えた。
 東京管内の電力需要が5,000万キロワットを超えたのは東日本大震災直前の2011年3月7日の使用率91%以来であった。これは家庭内の冷房に使う電力使用料の増加が原因と考える。
 中部電力では7月27日14時台に2,478万キロワットで、7月19日の2,453万キロワットを上回った。使用率は93%であった。
 関西電力では7月27日16時台に2,672キロワットに達し、使用率は88%であった。この他、北海道電力、東北電力、中国電力、四国電力でも今年の夏の最大値を記録した。
 この原稿を書いている8月5日以降、まだまだこれから残暑が厳しくなるかもしれない。とにかく、以上のような日本の事情を心得て、インドの大停電を勉強したい。

2012年のインド大停電の実態

 2012年はインドも猛暑であった。この連続エッセイ[15]に書いたように、夏のSWモンスーンの開始は遅れた。そして5月〜6月の熱波による異常高温・異常乾燥となって現れ、死者数の増加をもたらしたことを紹介した。
 この乾燥状態は水不足となり、水力発電能力が落ちていた。特に北部・北東部の諸州でひどかった。州の位置は同じく前回[15]の(図1)を参照されたい。これらの諸州で、人口12億の約半数の6億2千万人が、今回の停電の影響を受けたといわれる。“世界最大規模の停電”といわれる所以である。
 インフラの整備が遅れており、停電の直接の原因は送電網に過大な負荷がかかったためとされている。特に送電施設は年数が経っているものが多く、2001年にも送電網の問題で停電が発生していた。電力需要は年々増加する一方なので、ここに大きな問題があったことは事実である。しかし、気象学・気候学的にも一連の因果関係が想定され、まだ完全には解明されてはいないが考えられる状況は次のとおりである。

地球温暖化 ―― 南アジアの大気循環系の変化 ―― 南西モンスーン開始日の遅れ ―― 5月〜6月の高温乾燥 ―― 水不足・干ばつと水使用量の増加 ―― 水力発電能力の減少

このような因果関係は解明が難しい。しかし、今後の研究が急がれる。
 大停電はまずデリーで、2012年7月29日(現地時間30日午前2時30分、GMTで29日21時)から始まった。そして、ハルヤナ(Haryana)、パンジャブ(Punjab)、ウッタル プラデシュ(Uttar Pradesh)、ヒマ チャル プラデシュ(Himachal Pradesh)、ラジャスタン(Rajasthan)の北部の諸州に発生した。その後、東部の西ベンガル(West Bengal)、ビハール (Bihar)、オリッサ (Orissa)、ジャールカーンド(Jharkhand)の東部諸州に広がった。
 結局、全インドの28州の中、何らかの影響を受けたのは20州に及んだ。これらは、北部・東部・北東部の送電網が絡んでいたためである。
 停電の結果、人々の生活に影響を与えた現象は、順序不同だが、以下のとうりである。
(1) 地下鉄や都市間の鉄道が止まった。
(2) 道路の信号が消え、自動車の大渋滞が発生した。
(3) 都市域の公園緑地・街路樹の水管理が止まった。
(4) 病院と交通システムへの電力供給維持を最優先としたが、不十分であった。
(5) ニラデゥリー ロイ(Niladri Roy)の石炭の炭鉱でリフトが動かなくなり約200名の炭鉱内の労働者が坑内に閉じ込められた。しかし、全員救出された。
(6) いったん30日夕方までに復旧したが、31日13時05分(現地時間)に再度停電した。
(7) AFPが伝えたところではインターネットは全部不通になった。
この他、高層建築物・地下街における業務・事務・生活への影響、食品・衛生管理・教育など多数の生活面に影響が出たと思われるが、詳しい資料・報道などを入手していない。

インド大停電の教訓

  アメリカ合衆国でも、スイスでも、ニュージーランドでも、近年、大停電を経験している。停電は人災のように考えられがちだが、大停電はもはや自然災害の様相を呈する。対策を立て、準備しておかねばなるまい。地震津波の災害への準備とはまた異なった課題が多いが、類似点も多い。今回のインドの大停電は他人事ではない。


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