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連載エッセイ [15]
暮らしの中のバイオクリマ
吉野正敏

 
熱波の再来
 
2012年の熱波

 2012年4月から6月にかけて、インドは熱波に襲われた。アメリカ合衆国でも熱波はひどく、干ばつになり穀物不作が世界の穀物価格にまで影響するほどであった。
 日本では原発を再稼働すべきか、止めるべきか、国をあげての大議論で、熱波への関心はあまりなかった。しかし、夏の高温は電量需要に関連し、計画停電・節電対策などの基本にかかわるのだから、もっと関心を持つべきである。今回は日本の熱波を考える上でも重要な、インドの熱波について述べたい。

インドの熱波

  インドの熱波については連続エッセイ2「異常気象を追う」の[35]にかなり詳しく全体像を紹介した。1978年〜1999年の22年間の統計では合計253回、死者の数は4,942人に及ぶ。5月に熱波の発生回数は最も多く、年間の44%に達する。熱波による死者数は6月が5月よりやや多いがほぼ同数で、両月とも年間の約42%で、この2カ月に年間の84%が集中する。
 第1に、インドにおける州別に見た熱波指数の分布をで(図1)に示す。ここでは、州別熱波指数をデータの都合上、次のように定義した。すなわち、

熱波指数 = [(1911〜1999年の熱波回数の州別総計) / (州の総面積1,000劭)]

 データは「最近100年のインドにおける異常気象の研究」(Journal of Indian Geophysical Union、9(3), 173-187, 2005)より得た。州の面積の大小により、観測地点数が変わるので、面積で補正したわけである。(図1)で白地の州はデータが無い州である。
(図1)インドにおける熱波指数の分布。熱波指数は本文中に定義してある。(吉野原図)
この(図1)から読み取れることは以下のとおりである。
(1) インドの北部の諸州で大きい。北西部のジャンム・カシミール州から中央部のウッタールプラデシュ州を経て、東部の下記(2)の諸州に至る地帯である。
(2) 上述のとおり、北部の大きい値の地帯の中でも特にその東部のベンガル湾の奥に近接する西ベンガル州、ビハール州で大である。ビハール州は最大で90年間に合計134回、すなわち、1年に平均して1.5回の記録があり、熱波指数では1.44である。第2位はビハール州の0.41で第1位は突出している。
(3) インド洋に接するマハラシュトラ州からベンガル湾に接するオリッサ州に至る中部の地帯は比較的に大きい値である。
(4) 南部の諸州は小さい値である。熱波だから南ほど発生回数は多いだろうと思うのは間違いである。
 なお、州別に見た死者数では、ラジャスタン、ビハール、東ウッタールプラデシュ、オリッサなどの諸州が大きい値を示す。後述するが、死者数は人口密度・都市率その他に関係するので、熱波指数のみの関数ではない。

インドにおける過去の熱波の記録

  インドでは、1625年、ラジャスタンを熱波が襲い過去最多の死者が出た。1892年4月には北西部インドが非常な暑さであった。1921年やはり北西部インドは猛暑であった。
 気温の記録がある限りでは、最大の熱波は1926年6月10-14日に発生した。6月14日には46.1℃(地点名不詳)を観測したという。1956年5月10日にはラジャスタンのアルワール(Alwar)で50.6℃を観測した。20世紀の最後の30年は特に発生頻度・継続日数・地域の広さなどが顕著になった。これは主として地域的な循環系(例えば南西モンスーン)の変化と地球温暖化の影響とみなされる。1978、1979、1985、1986、1991、1994、1998年などは顕著な熱波年であったが、特に1990年代以降は地球温暖化の影響が大きいと考えられている。21世紀になってからはさらにこの傾向が強調されている。ただし、1998年の場合はエル・ニーニョの影響が強かった。
 1998年には熱波による死者数が多く、1,300人に達した。その内、約半数は、オリッサ州であった。

2012年のインド熱波と南西モンスーン

  熱波の発生と南西モンスーンの開始の遅れとは深い関係がある。しかし、“どちらが、にわとりか卵か”わからない。モンスーン開始が遅れると、日中は雲も無く、雨も降らず日最高気温は非常に高くなる。もしかすると、にわとりは何か他にあって、両方とも卵なのかもしれない。つまり、半球規模で捉えられる南アジアの大気循環系の異常がにわとり、すなわち原因で、インドという地域スケールで捉えられる熱波の発生と南西モンスーンの開始の遅れは、両方ともその結果なのかも知れない。今後の研究を待ちたい。
(図2)インドにおける南西モンスーンの開始日。平年と2012年の等期日線の推移
(インド気象局による)
 (図2)を見ると西ベンガル州では平年は6月10日頃にモンスーン入りする。ところが2012年には6月18日頃であった。ビハール州では平年は同じく6月10日頃だが、2912年は6月19-20日であった。北西部インドの諸州でも平年は7月1日だが、2012年は7月6-8日であった。このように、平年より2012年は8-10日南西モンスーンの開始日が遅れた。

熱波と死亡率その他への影響

 最近、熱波が死亡率にどのような影響を及ぼすかなど、インドでは研究が種々進んできた。詳しくは次の機会に紹介するが、インドの都市と農村では、死亡率に及ぼす影響が非常に異なる。また、一般に死亡率への影響は発展途上国で大きいが、最近のインド社会は経済的にも社会的にも急発展しており、気候適応(adaptation)に関してはどうかなど研究されている。
 インドでは6月は小中学校が夏休みである。2012年の熱波で、夏休み延長の要望が小学校低学年の父兄から多数でた。下校時が日最高気温の出る時間帯になり、熱波時には熱中症の危険が特に高くなるためである。生活水準の近年の上昇による教育への関心がより詳しくなり発言内容が科学的になってきたこと、および、近年の熱波回数の増加が、新しい対応の課題をもたらしている。
 これらについては、いずれまた、この連続エッセイで取り上げたい。


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