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連載エッセイ [41]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
梅雨の「もどり」
 
「梅雨明け」後の梅雨再来

 「寒のもどり」という話は聞いたことがあろう。しかし、「梅雨のもどり」とか、「もどり梅雨」いう言葉を聞いた人はいないだろう。私の造語である。「梅雨末期の豪雨」という現象は気候的にも気象的にもよく知られ、研究もされている。それとは別に、梅雨が明けて、いったん盛夏になってから、また梅雨の時期のような空になり、梅雨末期の豪雨のような激しい雨が降り、大洪水になることがよくある。これを“梅雨のもどり”あるいは“もどり梅雨”と呼んだらどうであろう。
 もう数年前のことだが、ある夏の日の朝、テレビでアナウンサーがいった。
「。。。。おはようございます。梅雨は明けたというのに、毎日、梅雨空が続きます。。。。」
 一聴視者として、「それなら、梅雨は明けてないということ? 何か日本語がおかしいよ!」であった。しかし、このアナウンサーの実況放送は、“梅雨明け”宣言をすでにした気象庁を皮肉ったのか、“天気の神”の気ままを諌めたのか、のいずれかだと私は思った。
 今年、2011年7月、日本列島は早く梅雨が明けて猛暑・酷暑の連日であった。平年より2〜3℃高い気温はもう異常気象とは思えないような毎日が続いた。ところが、一転、下旬になって、韓国では7月初旬以来の大雨・豪雨・大洪水がぶり返したという情報が入り、日本でも新潟県・福島県などで激しい観測史上1〜2を争う強雨・多雨・洪水、それにともなう大水害が発生した。
 その日の朝、テレビでお天気キャスターが気圧配置の解説をしながら言った。
「。。。。真夏ですが、気圧配置は典型的な梅雨型です。。。。」
 私はテレビの前で叫んだ。「それなら、梅雨ではないか!」
 気候学者の末席を汚す筆者としては、笑ったり・怒ったり・ひやかしている事態ではない。少し真面目に問題を捉えてみた。

朝鮮半島の近年の梅雨

 東アジアの梅雨は、中国の揚子江流域から始まり、華北を含め、韓国と北朝鮮の朝鮮半島、沖縄から北日本へかけて、5月末から7月中旬に顕著である。日本では梅雨(ばいう、つゆ)、中国では梅雨(mai-yii), 韓国では梅雨 (mae-ue)という。ただし、朝鮮半島では、夏の雨季であるチャングマまたはチャンマ(長霖、changma)に連なることもある。実はこのチャン(グ)マに相当するのが、今回の話題にする日本の“梅雨のもどり”という現象であろう。気象学的にみても、後で述べるが、一連のものである。
 2008年に韓国の梨花女子大学の研究者チームが韓国の国立環境科学院に提出した報告書によると、1973年から2007年までの全国60地点の平均の年降水量は増加傾向を示し、特に1995年以降の増加傾向は顕著である。例えば、1973−1977年の平均では1,177mmであったが、2000−2007年では1,400mmであった。さらに1年の中でも洪水期(6月−9月)の降水量は増加の傾向が明瞭であることが指摘されていた。
 この統計的な解析は重要で、その後も大雨傾向は続き、2009年には6月20日に始まった梅雨は7月15日でも弱くならなかった。ソウルでは3−14日の総降水量は1980年以来の過去最大の480mmに達した。
 2010年は北朝鮮で豪雨が発生した。具体的な降水量などの数字はいま手元にないが、北朝鮮の朝鮮中央通信(8月5日)によると、全国で約5,560世帯の住宅、約350棟の公共建物、生産施設が浸水または破壊された。また約14,850町歩(1町歩は9,917m2)の農耕地が浸水・埋没・流出した。北部のチャガン道(慈江道)とハムギョンナム道(咸鏡南道)ではそれぞれ673世帯と486世帯の住宅が完全に破壊された。また、死者が出た。この他、堤防決壊や電力施設の破壊、列車の運休が出た。韓国の大韓赤十字は8月31日に、7月中旬以降の豪雨による大きな被害が出ている北朝鮮の朝鮮赤十字会に対し、総額で100億ウォン(約7億4千万円)相当の非常食糧、生活用品、医薬品などの救援物資を送る事を決めた。

2011年7月の韓国の大雨

 2011年7月8日、韓国中部地方で大雨、ソウル、京畿、江原、忠南で約200mmの雨を観測した。この連日の大雨で全国合計で12人死亡、3人行方不明、約380人の被災者が出た。総計で、35,216ha の農地が冠水した。“梅雨前線は次第に北上する”という予報が出た。11日、京畿20地域、仁川で大雨注意報、洛東江の河口で洪水注意報が出た。
 2011年7月初め、8日から11日頃まで、韓国南部・中部で大雨があった。韓国におけるこの大雨による被害は上記のようであった。これは、日本の7月下旬の“梅雨のもどり”にもかかわる前兆現象であった。7月26日からの降水量は29日までにソウルで591mm、京畿道の東豆川では680mm、江原道の春川では543mmに達し、住宅の合計5,256世帯が浸水した。北部の江原道の春川で大規模の土砂崩れで13人が死亡した。昭陽江ダムの水門が開放された。1973年の完成依頼13回目で、2006年7月19日の開放以来、5年ぶりであった。
 韓国全土で26−29日の死者59人、行方不明10人が出た。道路の冠水や河川の氾濫が多数箇所で発生した。ソウルでは漢江市民公園が冠水し、オリンピック大路の交通が規制された。牛眠山で地すべりが起こり16人の死者が出た。全国で116,000世帯で停電、悪天による大規模の交通渋滞が発生した。
 38度線、軍事境界線の軍施設で土砂崩れが発生し、地雷流失のおそれがあると報道された。朝鮮半島ならではの災害である。

2011年7月の日本の梅雨明け

 2011年6月と7月は日本では記録的な高温であった。日本の南方海上の北太平洋高気圧が強かったためである。梅雨が早く明けたのもそのためであった。(表1)は最近の関東地方の梅雨明け日をしめす。

(表1)関東地方の梅雨明け(気象庁)

梅雨明け

1997 7月19日
1998 8月2日
1999 7月23日
2000 7月16日
2001 7月1日
2002 7月20日
2003 8月2日
2004 7月13日
2005 7月18日
2006 7月30日
2007 8月1日
2008 7月19日
2009 7月14日
2010 7月17日
2011 7月8日

平年 7月21日

 この表で明らかなことは、平年に比較して早い梅雨明けの年は多く(9年)、遅い年は少ない(4〜5年)ことである。そして、異常に遅い年の梅雨明けはまとまって7月30日から8月2日までの間である。梅雨明けの後、夏型の気圧配置がどのように推移したかを毎年について調べなければならないが、このような梅雨明け日の統計的な特性は、興味ある事実である。いったん梅雨が明けて真夏になって、そのまま秋になることは考えにくい。おそらく、梅雨がまたもどってくる。もし、その第1回目の真夏の状態が出損なうと数日は梅雨明けにはならず、7月末から8月初めの梅雨あけになる。もちろん、このような年は北太平洋の高気圧は弱い年である。

2011年7月末の日本の大雨

 7月30日の早朝、新潟県では1時間に60〜80mmの大雨を記録した。観測記録がある1978年以来初めてという。日雨量は福島県では600〜650mm、新潟県では500〜550mmとなり、これも記録的な値であった。国道の多数箇所で車が動けなくなり、10万世帯(32万人)以上に避難勧告が出た。五十嵐川の他、多数の河川の堤防の決壊・氾濫が大きな災害をもたらした。いま、詳細にふれるゆとりはないが、“梅雨のもどり”による典型的な豪雨災害だと思う。
 (図1)は2011年7月30日午前3時の天気図で今回の豪雨が最も激しかった時刻の状態を示す。日本付近は南高北高で、典型的な梅雨型気圧配置である。梅雨前線が大陸上の低気圧から東方へ延び、韓国を経て、新潟・福島付近に至る。

(図1)2011年7月30日午前3時の地上天気図(気象庁)

 (図1)だけでも、“梅雨のもどり”または“もどり梅雨”の素顔がわかるであろう。このような“梅雨のもどり”または“もどり梅雨”の出現と温暖化との関係は稿を改めて述べたい。


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