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連載エッセイ [37]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
アメリカの竜巻
 
トルネード最悪の年

 1000年に1度といわれる東日本大震災に見舞われた日本の現状では、外国のことに想いをはせる余裕は、正直にいって、ないと言わざるを得ない。しかし、世界の一員としては今年のアメリカ合衆国で発生したトルネード(竜巻)の状態を、知っていなければならないと思う。それに、日本でも、規模はアメリカほどではないにせよ、竜巻が大震災にいつまた追い討ちをかけるかも知れない。この連続エッセイでは東日本大震災に関することを数回とりあげた。まだまだ、書いてない重要なことは多いが、今回はアメリカ合衆国の竜巻について、現在の知識をまとめておきたい。

2011年の合衆国の竜巻

 2011年4月14日合州国南部のノースカロライナ州・アラバマ州・アーカンソー州・ミシシッピー州・オクラハマ州で竜巻が50件以上発生し、17日までに少なくも死者43人、負傷者80人以上、広い地域で停電となった。4月30日の集計によると、合衆国全体で2011年4月、竜巻の総計は875件、死者361人で、統計をとりはじめた1950年以来最大の記録値であった。被害総額は約160億円と推定され、オバマ大統領が29日現地を視察し、復興のための支援を約束した。
 バージニア州南東部にある原子力発電所では、4月16日竜巻の影響で電力供給がとまり、原子炉2基が自動停止した。補助電源が作動し、原子炉は安定した状態を保ったと言う。
 ところが、悲劇はさらに起った。5月22日中西部のミズーリ州ジョプリンで単一の竜巻としては、1950年以来、合衆国内で最悪の竜巻が発生した。風速は最大89m/秒に達し、死者122人、行方不明1,500人に及んだ。中西部の7つの州の合計では22日だけで40を超える竜巻が発生したと言う。ジョプリン市内では電線が切れ垂れ下がり、ガス漏れで火災が発生し、崩落の危険がある建物や窓ガラスが割れたビルが多く、倒壊・破損した住宅は数千棟と報告された。住宅街を通りぬけた竜巻によって3割は壊滅した。藤田スケールでF5(最強のスケール)と推定されている。オバマ大統領は4月29日から正に1ヶ月後の5月29日、竜巻被災地を視察、再度、大被害に対処しなければならなかった。
 これらの強烈な竜巻は、次のような過程で、発生する。すなわち、メキシコ湾からの温暖・高湿な空気が北上し、ロッキー山脈とアパラチア山脈の間に流れ込む。一方、北からは冷たい乾燥した空気が入り込む。南からの空気は北からの空気の上に乗り上げ、上昇する。ある条件が整うと上昇気流が渦をまいて“メソサイクロン”と呼ばれる竜巻の元となる小規模低気圧になる。メソサイクロンはやがて細長い尻尾をたらした“漏斗雲(ろうとうん)”を形成する。この尻尾が地上に達した部分が竜巻である。
 2011年春は、メキシコ湾の1部の表面水温は平年より約1℃高かった。これが2011年4月・5月の異常に強烈な竜巻発生の一因と考えられている。

竜巻横町

 アメリカ合衆国において、竜巻が最もよく発生するのは中央部の南北に延びる地帯(図1)である。ここを俗に“竜巻横町(Tornado Alley)”と呼ぶ。


(図1)アメリカ合衆国の“竜巻横町”[国立気候データーセンターによる]

 この地域では竜巻は4−6月に最も多く発生する。まれに9−11月にやや多い年がある。日本人の “横町” のイメージは、東京の上野ならば“あめや横丁”、渋谷ならば“恋文横丁”とか、本通りに比較して、心は通うがどこかチマチマしている。千kmを超える地域規模のスケールはない。それはとにかく、一つの竜巻がこの“竜巻横町”を端から端まで駆け抜けるわけではなく、たくさんの竜巻経路(発生から消滅までの経路)がこの地域内に分布すると言うことである。
 図は省略するが、メキシコ湾に近い合衆国南部諸州では10−12月によく発生し、その地域を “ディキシー横町(Dixie Alley)” と俗に呼ぶ。ディキシーとは南部諸州の俗称だから、正しくは“ディキシー竜巻横町Dixie Tornado Alley)”と呼ぶべきであろうが、土地の人たちはそうは言わないようである。
 “竜巻横町”も“ディキシー横町”も、その境界ははっきりしていない。それは竜巻の定義によるからである。すなわち、発生頻度によるのか、強さによるのか、単位面積当たりの個数(または件数)によるのかで、多少の差があるためである。筆者は、上に書いたように、“竜巻経路が集中する地域” とするのがよいと思う。具体的には、テキサス州中央部から北の方へ北部アイオワ州、カンサス州中央部・ネブラスカ州から東方へ西部オハイオ州に至る広大な地域にまたがるのが“竜巻横町”である。
 ここでは竜巻の強さは藤田スケールで EF0 か、EF1 の弱いものが最も多く、EF3 以下の竜巻が全体の95%を占める。しかし、最近では年間の合計で1,000件を超すから、EF3 以上の強い竜巻が20件はある。EF5 の非常に強いものは年間に1件、言いかえれば、合衆国のどこかで、壊滅的な被害をもたらす竜巻が1個は発生すると考えねばならない。

エルニーニョ年とラニーニャ年の竜巻

 日本を含むモンスーンアジアではエルニーニョ年とラニーニャ年の気象や天候はかなり違った特徴をもっている。夏冬の長短や気温極値、梅雨季の長短・早遅や雨量、台風の襲来数や強弱などが、北太平洋の表面水温分布に応じてかなり異なるためである。もちろん、赤道をはさんで太平洋の海水温分布がエルニーニョ年とラニーニャ年とで異なるためである。
 では、大西洋ではどうであろうか。メキシコ湾の表面水温分布やカナダから南下する北からの大気の流れが、合衆国における竜巻発生の大きな誘因だから、モンスーンアジアにおける諸現象ほどでなくても、エルニーニョ年とラニーニャ年で竜巻発生の特徴に差があるかと思い、調べてみた。
 まず、これまでにわかっていることは、(表1)のとおりである。

(表1)エルニーニョ年とラニーニャ年における合衆国の“竜巻横町”の気象・天候の傾向

季節 エルニーニョ年 ラニーニャ年

合衆国南〜南西部で多雨 ワシントン州・アイダホ州で低温
合衆国中西部内陸は低温または多雨 合衆国西海岸、フロリダ州で低温
合衆国の西海岸の北部は高温
合衆国五大湖以西の中西部は高温 合衆国南西部で高温
合衆国南部は多雨 フロリダ州・アラバマ州・ジョージア州で少雨


 竜巻発生に最も関係が深い春と夏をみるとエルニーニョ年には多雨傾向、ラニーニャ年にはあまりはっきりした傾向はみられない。要するに両者の間に明瞭な差はない。しかし、毎月の竜巻件数をまとめてみると、(図2)に見られるような明瞭な差がある。ここでは、
エルニーニョ年:1963、1969、1972、1978、1989、1994、2009年
ラニーニャ年:1964、1967、1973、1983、1988、1995、2010年
のそれぞれ7年を選び出し、各月の件数の平均値を求めた。


(図2)アメリカ合衆国におけるエルニーニョ年とラニーニャ年の竜巻件数の年変化[吉野による]

 (図2)からわかることは以下のようである。(1)5月と6月にはラニーニャ年が多い。(2)極大値はラニーニャ年が5月、エルニーニョ年は6月である。(3)9月から1月に小さい極大が現れる。この三つの現象は、メキシコ湾の水温の影響には遅れがあること、北からの寒冷で乾いた空気が南下する状態にエルニーニョ年とラニーニャ年で差があるために生じるのであろう。
 以上のことを考え併せると、地球温暖化が竜巻発生の長期傾向にどのように影響するかを明らかにするには、まだ、研究しなければならない現象が多いと言わざるをえない。


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