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連載エッセイ [16]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
2010年の猛暑(1)
 
シベリアの林野火災

 1978年の8月、シベリア上空を2往復したことがある。パイロットさんやフライトアテンダントさんならもっと往復するだろうが、私にとっては得がたい経験であった。東京とモスクワ間の対流圏の上限か成層圏の下限くらいの高度を飛んで、空から地上を観察するのは、この上ない興味である。専門の研究分野からもうるところ、はかり知れない。
 シベリアルートだと、日本から西向きに飛ぶ時はこちらを朝出ればほとんど全航程明るい内にモスクワに着く。こちらを夜出ればいつも暗い中を飛んでモスクワに朝着く。いずれにしても、じっくり昼間の状況か夜の状況を観察できる。帰りは昼間の状況と夜の状況の両方を短いながら観察できる。これはまた、得がたい短時間の内における昼夜の変化状態を知ることができる。
 1978年の8月、明るい日中のフライトの窓から見て驚いたのは、成層圏にまで達する煙がアチコチで上がっていることであった。“これは何だ”と思ったが、“森林火災の煙”とわかるまでに、あまり時間はかからなかった。しかし、その上昇気流の強さは、高緯度とは言え、圏界面をつきやぶっているのだから、非常に強いのだろうと推測できた。これはやはり自分で見ないと気がつかない規模の現象である。
 暗い時間帯のフライトで窓から地上をみていたら、赤い燃え上がる火がチョロ・チョロみえた。“こんなところで焚き火をする人たちが、住んでいるのだナー”と思って、最初見ていた。しかし、よく考えると、1万メートルの上空から、人の焚き火が見えるはずがない。その赤い火の一つがかなりの面積をもつ林野火災の1現場だろうと気がついた。1978年の夏は日本でも梅雨が短く、猛暑であった。シベリアも乾燥・異常高温であった。林野火災の原因となる自然発火の恐ろしさを知った。
 その当時はまだ衛星画像の解析技術が十分ではなかった。最近では、かなりの精度で広大なシベリアの北方森林(タイガ)の火災に関する情報が得られる。2010年の森林火災の研究結果が待たれる。

ロシアの猛暑

 2010年7月16日、モスクワの気温は33.0℃になった。これは1938年の記録33.2℃よりわずか低いが、北緯55°45′の高緯度、最暖月の7月の月平均気温18.4℃(ちなみに稚内は北緯45°25′、最暖月8月の月平均気温は19.5℃)のモスクワとしては猛暑である。この猛暑は7月22日まで続いた。モスクワのコロメンスコイェ公園には、日焼け願望のビキニスタイルの娘さんが何人も現われたと、写真つきの報道があった。
 猛暑によりロシアの干ばつは深刻になった。中央部ロシアとヨーロッパロシアを合計して、1,000万haの耕地でほぼ収穫皆無、18の州で森林火災により25,600 ha の森林を失った。 プーチン首相は8月9日のロシア政府幹部会で、今の穀物年度(2010年7月−2011年6月)の穀物生産予測高を6,000−6,500万トンに下方修正した。8月初めに9,000万トンから7,000−7,500万トンと予測し、穀物の輸出禁止を打ち出したばかりであった。事態がいかに深刻化しているかが想像つく。ロシア国内だけで7,800万トンの穀物が必要と言われており、国内需要を優先させるとはいえ、この不足量をどうするのか、容易なことではない。
 旧ソ連のカザフスタンやウクライナも干ばつで穀物生産は落ち込む予測である。結局、世界の穀物市場への影響は避けられないであろう。これはインフレ傾向を招き、日本を含め世界の経済にも影響すると思われる。

ヨーロッパ諸国の猛暑

 ドイツでは8月7日、コプレンツの近くのベンドルフで38.8℃を観測した。記録値は2003年の40.4℃だが、それに続く猛暑である。7日トリアで38.3℃、8日ベルリンで37.5℃、一番高い山岳測候所のツークシュピッツェ(海抜2,960m)でさえ、11.0℃を観測した。バーデンビュルテンブルク州でもトウヒ林を火災で5,000平方メートル失った。猛暑は9日も続いた。ドイツ馬鈴薯生産連合会は30%の収穫減を予測し、これは2003年や2006年の猛暑・干ばつの場合よりひどい状況だと述べた。ドイツ国鉄の“都市間急行ICE”のベルリンからビーレフェルトに向かっていた列車内のクーラーが、走行中、猛暑のため不具合になり、窓は開かず、乗客は気温が約50℃になった列車内に閉じ込められた。
 ドイツ気象台は、猛暑にともなって豪雨・雹・竜巻などの強いものが発生する危険があり、これらの異常気象が重なると被害が倍加することを強調した。この連続エッセイ[14]でも2週間前それを指摘したばかりで、共通した意見である。
 ヨーロッパ南東部のブルガリアでも2010年6月13日から猛暑が続いた。(表1)はその1部の記録である。ブルガリアの首都ソフィアの観測所は北緯42°39′、東経23°23′、海抜586mに位置する。1971−2000年の30年平均で、6月の月平均気温は18.2℃だから、33.3℃と言う値はかなりの高温である。東京で言えば5月の中旬に真夏の日最高気温がでたような状態であろう。

(表1)2010年6月のブルガリアの猛暑

地名 日付 気温観測値(℃)

ルーセ(Ruse)  6月13日 36.6
ヴィディン(Vidin) 6月13日 35.8
サンダンスキ(Sandanski) 6月13日 35.5
ロヴェチ(Lovech) 6月13日 35.1
パザルジーク(Pazardzhik) 6月13日 35.1
ソフィア(Sofia) 6月13日 33.3
ムサラ山頂(Musala peak) 6月14日 15.2
エルホヴォ(Elhovo) 6月14日 35.6
ルーセ(Ruse)  6月15日 37.2

猛暑の原因

 このように2010年の猛暑は6月中旬から7月を経て8月に及んでいる。まだ、その被害は増加する一方であろう。その猛暑の原因は何か。
 “サハラ沙漠からの高温で乾燥した空気が流れ込んだ”とメディアは報道しているが、そのように簡単なものとは思えない。第一、猛暑は南欧・東欧・西欧を経てエストニアからフィンランドを含む北欧にまで達しているのである。地域的(空間的)にも、また、2ヶ月以上と言う時間的にみても、スケールが極めて大きい。
 夏を中心にした温暖な半年間、地中海を覆う高気圧帯が毎年発達する。北半球をカバーする中緯度高気圧の1部だが、今年はこれが異常に発達した。これまでにも、大西洋のアゾレス諸島付近から、地中海を覆い、南ロシアまでこの高気圧が発達して異常高温・乾燥をヨーロッパにもたらすことが知られている。今年はまさにその典型で、しかも、強烈な場合であった。さらに詳しい解析が待たれる。


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