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連載エッセイ [13]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
ホタルの季節
 
蛍の光

 昔の卒業式といえば、“。。。。ほたーるの光、窓のゆーき。。。。”であった。ホタルに責任はないと思うが、暗闇の空間に揺れ動いて画かれる淡い一条の黄緑の光線は、一抹のわびしさがつきまとう。しかし、一方では、暗闇であろうと何であろうと、天空を乱舞する頑張りムードの立役者でもあるところに、人は惹かれるのではなかろうか。 今時の母親なら、わが子がホタルの光で本を読んでいたら、“目が悪くなります。止めなさい”と叱るだろう 。
 もう70年も前のことだが、小学校の卒業式で、“蛍の光”を皆が歌い始った。当時は男子ばかり50人もが一つのクラスであった。ところが、心身頑強、クラス一番の腕白者だった親友が、急にシクシク泣きだした。これには、周囲の友達の方が、びっくりした。しかし、昔は小学生でも、このガキ大将の心境を理解できた。
 それはさておき、ほたる狩り、ほたる祭りなど、現在でも観光産業に一役かっているのだから、蛍の光がかもし出す雰囲気は一種独特と言わざるをえない。日本の季節現象の最たるものの一つである。
 中国の暦、七十二候では立春から数えて26番目は「腐草蛍」である。2010年は6月11日であった。草が腐って蛍になると言う発想は面白いが、日本人にはなじまないように思う。また30年ほど前のことだが、西アフリカ、ナイジェリアのラゴスで学会があって私は出席した。夜、広い大学のキャンパスを歩くと、無数の、おびただしい数の蛍が淡い光を放ちながら草むらにいた。葉を這いまわっているばかりで飛び上がらないようであった。立ちどまって、しばらく見ていたが、熱帯の夜の蛍の光は、草むらの饗宴にはそぐわない気がした。しかし、これは日本人の私の勝手な季節感のせいかも知れない。

ホタルの季節

 晩春から初夏、ムギの穂がでるころになると、そろそろホタルの季節になる。ホタルの初見日は九州や四国の南部では5月中旬、中国地方・近畿地方のほとんどで5月下旬から6月中旬である。中部地方・関東地方では6月の中・下旬、東北地方の南部山間地で6月下旬、北部山間地で6月下旬から7月上旬である。詳しくはあとでまた述べる。生物季節現象で、九州南端から東北地方の北端まで約2ヶ月かかるのは、めずらしい。
 西日本に住む人びとにとっては、ホタルは晩春の季節感だろうが、東北日本の山間地に住む人びとにとっては、ホタルは夏の季節感である。ホタルが見られなくなるのは早い地方では7月中で、多くの地方では8月である。ホタルが成虫になって光を夜空に画き始めてからその光が見えなくなるまでの期間は西南日本で長く、また、太平洋側は日本海側より一般に長い。
 梅雨がまだ明けない初夏、日中の蒸し暑さから解放され、連日の雨模様も一休みの宵、ホタルの光を楽しむのは多くの日本人が味わってきた季節感である。

ホタルの初見日の等期日線図

 (図1)はホタルの初見日の等期日線図で、1956年から1985年までの30年間の平均値による。少し古い期間のデータではあるが、後述するように、1980年代の中ころ以前は初見日の長期変化の傾向が日本全国でほとんど見られなかった期間なので、あえてこれを示した。
2008年8月5日、11時30分−14時00分の地上風と全国合成レーダー降水強度。
(図1)ホタルの初見日の等期日線図。[例えば5.21は5月21日、−は早い、+は遅い。
1956−1985年の平均。データは気象庁;生物季節観測30年報による](吉野作図)

  最近の30年間(1971−2000年)の平均値による図は、ホタル百科事典/ホタルに関する調査研究レポート(http://www.tokyo-hotaru.com/jiten/report16.html)に掲載されている。両者の間には、日本全体を見れば分布の傾向にもちろん大差はないが、ここでは(図1)によって説明したい。つまり、温暖化の影響が認められない時代のホタルの初見日の季節推移について、まず、見たい。特徴をあげると以下の3点にまとめられよう。
1. 西日本(九州・四国・中国地方)では等値線の間隔が広い。これは地域による差が比較的小さいことを意味する。別の表現をすれば、ホタル初見日前線が北上する移動速度は速い。
2. それに対して、近畿地方以北は等値線が何本も入っている。すなわち、地域による差、言いかえれば、海岸部と内陸の山間部との差が大きい。この内容は、海洋性の気候の影響(気温特性の差)というより、高度差の影響(気温と水温の差)が大きいのではなかろうか。
3. 中部地方や東北地方南部の内陸山間部の閉曲線の中心は、日本海側にずれている。これは、冬の積雪深の分布と関係がありそうである。積雪の深い地方における冬の地温・春の河川水温は、ホタルの成虫が出現するころの気温に加えて、何等かの影響を及ぼしているのではなかろうか。
 以上、気がつくままに述べたが、今後のより詳しい研究が必要であろう。

初見日の長期変化の傾向

 最近の50年くらいの期間、正確に言うと、新しい生物季節観方法による観測結果のある1953年以降についてみると、日本全体に共通した一定の変化傾向はないようである。しかし、詳しく言うと、中部地方や東北地方では1953年以降の1950年代、1960・1970年代を経て1980年代半ばまでは初見日は遅れる傾向があり、この期間の初めと終わりころを比較すると数日の遅れがあったように見られる。これは、上記のインターネットにでている長期変化傾向を示す図にもうかがうことができる。これはこの期間は小さな寒冷化の波の時代だったからであろう。その後、すなわち、1980年代をピークとして、1980年代後半から近年まで次第に早くなる傾向がある。また、重要なことは、この変化傾向は西日本では弱いかほとんど認められない。では、北日本と西日本で異なるのはどうしてだろうか。上にのべたように、冬の積雪の多少あるいは有無は、ホタルが生活する春の地温・水温に影響する。もちろん、地球温暖化は積雪深・積雪期間に影響し、春の融雪を通じて河川の水量・水温に影響する。このような影響のプロセスは中部地方や東北地方の山間地のほうが西日本より強いであろう。
 気温の影響だけが強い季節現象、例えば、サクラの開花・満開など、この連続エッセイ[6]で書いたように、最近の30−40年はそれ以前の期間より温暖化の影響がより顕著で、開花・満開の季節が早くなる率が大きい。これと同じように、最近の30年くらいだけを見ればホタルの初見日の季節が早くなっていることはありうる。また、その地域性があるらしい。これらは、今後の重要な研究テーマである。


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