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連載エッセイ [45]
異常気象を追う
吉野正敏

 
異常気象のリスク
 

リスクとは何か

 異常気象を人間はどう克服するか。異常な雨、洪水、暴風などが起こったのは、神の怒りとして、ひれ伏してわが行動のいたらなかったことをわび、ひたすら許しを願い、今後の戒めとする。これは、考古時代・歴史時代を通じ、われわれの対処の一形態であった。
 現代に生きるわれわれは、科学的な対処の仕方がある。それは、異常気象のリスクをより合理的に評価し、その結果により対応を考え、処理する方法である。リスク(risk)とは危険または危険率のことである。日本語で「危険」というとただ「危ない」(英語でいうと、danger)の意味にもとられる。「危険率」あるいは「危険の度合い」というニュアンスがある言葉としてリスクを使う。保険業界では、危険率、保険金額、被保険者(物)をリスクと呼ぶ。
 連続エッセイでは異常気象の内容についてこれまで種々取り上げてきた。それによる災害・被害にも言及した。しかし、リスクという面からは述べたことがなかったので、今回これをとりあげた。

リスク評価

  リスクの定義はいろいろあるが、次の五つにまとめられる。

    リスク = 被害額 + 脆弱性 ・・・・(1)
  リスク = 被害額 × 脆弱性 ・・・・(2)
  リスク = 発生確率 × 損失額 ・・・・(3)
  リスク = 発生確率 + 脆弱性 ・・・・(4)
  リスク = 被害額 × 重要性 ・・・・(5)
 これらの式で、足し算、掛け算するというのは、考え方についての表現であって、具体的には無次元化しないと数値は得られない。この五つのどの考え方も重要で、それぞれ理由も理解できる。式(1)と(2)は個人・企業・事業所・集落・市町村などで時間・空間スケールの小さい(短い)対象における評価の際、特に大切である。一方、式(4)と(5)は県・国などの年間予算・長期間の計画をともなう場合の比較的に時間・空間スケールの大きい(長い)対象における評価の際、特に大切である。式(3)は小さい(短い)対象から大きい(長い)対象までの評価において重要であろう。

リスク評価の例

 リスク評価の結果、リスクを軽減し、対策を立てるために使うには、具体的な数値として表す必要がある。損害保険・生命保険・自動車保険など、いずれもその料率を算定するために、詳しい調査・研究を行っている。異常気象によるリスクを評価する場合、対象地域は狭くても市町村、広い場合は県・国なので、ある程度の階級区分をして把握することがより適切である。ハザード・マップはすでに日本では各地でつくられ各家庭に配布されているが、これに脆弱性を加味(上記の式(1)か(2))するとリスク・マップができる。この目的には、階級区分(普通は5階級)して評価するのがよいであろう。
 中国の揚子江中流域おける台風による異常洪水時の例を示すと(表1)のとうりである。

(表1)中国の揚子江中流域における台風による洪水災害のリスク階級区分

被害 最大 最小

階級 5 4 3 2 1

被害面積(km2 1,000以上 500−1,000 200−500 50−200 0-50
死者数(人) 100以上 20−100 10−20 0−10 0
被災者数(人) 2,000以上 500−2,000 100−500 10−100 1-10
倒壊家屋(×104戸) 10以上 5−10 1−5 0.1−1 0-0.1
直接損害額(×107元) 1,000以上 300−1,000 100−300 10−100 10以下

(資料は、張 その他、2007による)

 当然のことながら、日本では被害の絶対値は異なる。中国でも他の地域では被害面積、死者数、被災者数、倒壊家屋数、直接損害額は異なるし、同じ流域でも下流域では異なる。しかし、このような項目についてそれぞれの範囲を経験的にきめ、5段階のリスク階級区分を行い、広域について評価を行うという手順の参考になろう。

リスク評価の今後の問題

 上に述べたが、経済発展による損害額の上昇の見積もりがまず非常にむずかしい。都市化・工業化、それにともなう人口の集中と増加は推定が地域を限定するほどむずかしい。例えば、上記の洪水災害の場合、微地形との関係が強いので、人口集中地域の微地形を考慮しなければならない。
 さらに、地球温暖化による豪雨発生頻度の増加である。例えば、揚子江中流域における1951年から2001年までの51年間に発生した大洪水(51年間の毎年受災面積の平均値の1.5倍以上とする)は、1954、1969、1980、1983、1991、1993、1995、1996、1998、1999年で、明らかに最近になるほど発生年の間隔が短くなっている。
 しかし、極めて注目すべきは、揚子江中流域における大洪水による死者数は1990年代までは上昇したが、2000年代になって激減したことである。これは、豪雨予報精度の上昇、災害発生予報や情報伝達の技術の向上、人々の災害対策意識の向上などの結果と考えられるが、その定量的把握・評価は非常にむずかしい。また、倒壊家屋数も2000年以降減少傾向にあるが、これも家屋強度が経済状況の好転によってあがったためと思われる。したがって、温暖化により豪雨の回数が増加したとしても、かならずしもリスクは増加しない。脆弱性が変化したためにリスクが変化した好例である。前記の式(1)(2)(4)において脆弱性が小さくなれば、どの式によっても、リスクは小さくなる。


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