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連載エッセイ [35]
異常気象を追う
吉野正敏

 
インドの熱波
 
南アジアの熱波

 熱波と猛暑の違いなどについては、この連続エッセイ[9]に書いた。ヨーロッパの中部・東部で2007年7月24日に発生した猛暑では日最高気温は45℃を超えた。西ヨーロッパでは2003年夏の熱波で合計52,000人の死者がでたことなどを紹介した。今回はアジアの熱波、特にインドを例にとって熱波と言う異常気象について考えてみたい。ヨーロッパや日本の熱波・猛暑とはかなり違った特色があることを述べたい。
 まず、インドでは熱波の季節は4月・5月である。これまでにも、日本人が南アジアに仕事で赴任するとき、たいていは新年度の4月から現地での新生活が始まるので、あまりの暑さになやまされた。低緯度の輝く太陽のもと、高温の連日は耐え難いものであった。それが5月になってもまだ続き、状況はさらに深刻になるのである。
 インドでは、モンスーンの雲が午後の昇温をさまたげるので、モンスーンが吹き出すのを人びとは待つ。モンスーンが雨をもたらしコメがよく育つので、モンスーンの吹き出しを待ちこがれるばかりでなく、耐えがたい高温から逃れたいので、モンスーンの開始を期待するのである。とにかく、日本で梅雨があけて真夏の太陽が照りつける逆の推移である。

熱波の季節

 (表1)はインド全体の熱波回数と死者数の月別の値である。熱波回数は5月に極大、死者数は5月・6月が極大である。

(表1)インドにおける熱波回数と死者数の22年間(1978−1999)の合計*

熱波回数 熱波による

3月 8
4月 43 246
5月 110 2,313
6月 86 2,380

合計 253 4,942
*)S.K.Chaudhry et al. (2000):Current Science, 79(2),153-155 の資料より吉野作表

 ここで問題なのは熱波の定義である。連続エッセイ[9]にも、熱波と猛暑の定義について少し書いたが、厳密に定義するならば以下のことを考えねばならない。すなわち、(1)亜熱帯から温帯の暖候期に出現する大気現象であること。(2)ある一定温度より高い日最高気温であること。(3)その連続日数がある値以上のこと。(4)その状態が出現する地域スケールがある面積(州とか国とか地方など)以上であること。
 上記の(1)はユーラシア大陸でいうと、北緯15度くらいから50度くらいの範囲。(2)はインドでは40℃以上で平年値より3−4℃以上高い場合を熱波、5℃以上を厳しい熱波と呼ぶ。(3)はインドでは通常5−6日、まれには15日以上連続する。また、厳しい熱波は3−4日で終わることもある。(4)インドでは州のスケール。(表1)はこのような定義に従って、インド気象台が統計したデータを集計したものである。

インドの中ではどこが厳しいか

 インドの熱波は、西部や北部では3月に始まることもある。(表2)にみるようにマハラシュトラ、ラジャスタン、ウッタールプラデシュの諸州で3月に起こった例がある。4月になるとインド半島の東側の西ベンガル、アンダーラプラデシュの諸州で発生する。5月にはほとんどの州で最高の回数となる。インド全体の総計で5月は110回、これは22年間の総合計の44%である。

(表2)インドの主な州とインド総計の熱波回数、1978−1999の合計

州の名 3月 4月 5月 6月 7月 合計

アンダーラプラデシュ 7 8 3 18
ビハール 5 9 14 28
マハラシュトラ 2 6 23 4 35
オリッサ 1 10 4 15
パンジャブ 1 7 7 2 17
ラジャスタン 1 5 16 19 1 42
ウッタールプラデシュ 1 3 8 10 1 23
西ベンガル 10 12 6 28

インド総計 8 43 110 86 6 253
資料は(表1)と同じ

 次に死者数で見ると、(表3)のとおりである。3月には0であることが注目される。熱波が発生しても死者は出ない。しかし、6月には回数は5月より少ないにも関わらず、6月の死者数は5月と同じか、あるいは、それよりも多い。このことは、異常気象としての熱波の影響の特徴をものがたっている。すなわち、(1)影響を受ける人間(高齢者が多い)の体力による遅れ効果、(2)乾燥による水供給(死者は都市部の貧困層に多い)の劣化・悪化、(3)異常高温による衛生状態の2次的悪化、食糧不足など、が考えられる。

(表3)インドの主な州とインド総計の熱波による死者数、1978−1999の合計

州の名 3月 4月 5月 6月 7月 合計

アンダーラプラデシュ 21 447 7 475
ビハール 112 182 477 771
マハラシュトラ 12 110 121 243
オリッサ 7 430 92 529
パンジャブ 22 92 114
ラジャスタン 8 733 882 2 1,625
ウッタールプラデシュ 23 167 496 686
西ベンガル 51 24 83 158

インド総計 246 2,313 2,380 3 4,942
資料は(表1)と同じ

 (図1)は(表2)、(表3)にあげた諸州の位置を示す。
インドで熱波の影響を受けやすい州の位置
(図1)インドで熱波の影響を受けやすい州の位置

エル・ニーニョの影響

 インドの熱波の発生にはエル・ニーニョの影響が極めて明瞭である。1982年、1987年、1997年の3回のエル・ニーニョ年の場合を(表4)にまとめた。この(表4)を見れば、エル・ニーニョ年には死者数は極めて明瞭に少ない。それに対し、エル・ニーニョ年の翌年には死者数は急増し、1982年の翌年の1983年には17倍、1987年の翌年の1988年には約100倍、1997年の翌年の1998年には約190倍になった。

(表4)エル・ニーニョ年の前年、当年、翌年のインドにおける熱波回数と熱波による死者数

  回数 死者数 回数 死者数 回数 死者数

前年 1981 4 63 1986 5 155 1996 9 17
当年 1982 2 11 1987 7 90 1997 9 8
翌年 1983 13 185 1988 17 924 1998 33 1,550

資料は(表1)と同じ。吉野作表

 特に1998年の場合は20世紀末の22年間では最大の値をもたらした。インドを含む南アジアの大気循環の異常が33回の熱波を発生し、その結果、このような最悪の死者数をみた。エル・ニーニョの翌年の大気循環の状態の十分な解明が今後の問題である。


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