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連載エッセイ [33]
異常気象を追う
吉野正敏

 
“さまよえる湖”は異常気象の結果か
 
ロプノール:幻想の湖

 日本人のロマンをかきたてるシルクロードは、近年、テレビの画面を通じてますます現実のものとなった。梅雨どきの高温多湿な日本に住む者にとって、シルクロードが走る中国西北部は想像を絶する乾燥した土地である。果てしなく続く乾ききった沙漠の風景は日本人を惹きつける。そればかりではない。この乾燥した地域を通って、その西方からはるばるやってきた人たちは文化をもたらした。その文化は中国でさらに洗練され、完成されて、日本にやってきた。つまり中国の西域は日本人の心の故郷であり、その風物は日本人の血そのものに融け込んでいるのである。
 先史時代・歴史時代を通じて途絶えることなくラクダの背に乗ってはるばるやってきた文化の上にわれわれの今の生活があるのだから、シルクロード、そして、タクラマカン沙漠に日本人は魅せられるのである。
 そのタクラマカン沙漠の東の端に湖があり、ロプノールという。その西岸にかつて楼蘭という都市国家があって3世紀ころに栄えた。1900年にスェーデンの科学者・探検家ヘディンが楼蘭を発見してロプノールとともに西欧にその名を広めた。楼蘭は乾燥化のため4世紀には衰え始めたが、5世紀まではあったことが知られている。もともと乾燥した土地だから利用できる水が少なくなれば、都市を維持することは不可能である。楼蘭の歴史はロプノールの水の増加・減少の歴史でもあった。タクラマカン沙漠とタリム川とロプノール湖との位置関係は(図1)を見れば理解できる。

(図1)タクラマカン沙漠におけるロプノール湖の位置。
図中の「実線」は現在、季節的または年により水が流れる川、「短い破線」は現在、水のない川、「破線」は古代の川の跡

 ロプノール湖にはタリム川とバグラシュ湖から流れでるクムダリヤ川の水が入る。特に後者が重要である。上述の3−5世紀の史実に加えて、ヘディンが最初に訪れた時にあった湖の状態は彼が再度訪れた時には変化していた。湖がさまようように感じられるのである。すなわち、水位が減少すれば位置も変化する(等深線が同心円でない限り)ので、湖が移動したように見えてくる。ウルムチにある中国科学院地理研究所の夏訓誠教授らの詳しい長年にわたる調査・研究でも、20世紀半ばまではあったロプノール湖が1972年にはすでに消えていた。

(写真1)最近のロプノール湖。
衛星写真でみられる“大きな耳たぶ”状の旧湖岸線。(夏ら、2007 による)

 上の(写真1)は最近の気象衛星がとらえたロプノール湖とその周辺の状態である。ちょうど耳たぶの形をしている白いところは昔の湖岸線で、塩の多い砂で覆われた地表を示す。水面は、ほとんど干上がってしまって認められない。雲と見分けにくいが白色の濃いところはつい最近まで水があって、現在は一面の塩の表面であろう。耳たぶの中央部の耳の穴に相当するところがそれである。

ロプノール付近の雨

 乾燥地域では雨がほとんど降らない。したがって、年降水量という値はほとんど意味を持たない。しかし、沙漠における長年の平均年降水量は、目安として、10−20年に1度降る日降雨量とされるし、日本のわれわれにとって、どの程度なのかを比較するのに役立つ。ロプノール付近は(図2)に見るように、長年の平均でみた年降水量(mm)は20mm以下で、タクラマカン沙漠の中でも最も少ない。

(図2)ロプノール湖の年降水量(mm)の分布(李江風による)

 この降水量分布は、前記の夏教授らの長年にわたる大プロジェクトの一環として、新疆気象研究所の気候学者であった李江風教授が描いたもので、タクラマカン沙漠の気候図としても貴重である。タクラマカン沙漠は南側も北側も高い山脈で囲まれ、それらの山地からの水でまかなわれている。したがって、その水量の長期変動と、オアシスの拡大・人口増加で使用する水量の増加、ダムや耕地灌漑で消費する水量の増加などが、下流の内陸河川末端の状態に敏感に現われるのである。具体的には上述のような河川・湖からロプノール湖に流れ込むのである。
 しかし、例え10年に1度か20年に1度でも、雨は必ず降る。それも、24時間の10−20mmの雨は、われわれが住む温帯湿潤気候の土地でもかなりのまとまった雨である。沙漠は、雨が降らない土地だから、そのような雨が降るとオアシスでは住宅・耕地・道路は壊滅的な被害を受ける。もちろん死者も出る。新疆全体でみると災害による死者は溺死者がもっとも多いが、これは、乾燥地域ならではの特徴である。


(写真2)豪雨の後に一時的に形成されたロプノール湖の一部
(夏ら、2007による)

 (写真2)は豪雨の後に一時的に形成されたロプノール湖の1部を示すめずらしい写真である。撮影された年月日が不明なのが残念である。空に浮かぶ雲が、われわれ温帯湿潤地域で雨を降らせる雲と比較すると、異常に見えてくる。しかし、乾燥地域ではこれが正常であることを認識したい。


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