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連載エッセイ [31]
異常気象を追う
吉野正敏

 
梅雨の異常化
 
梅雨の特徴・定義

 東アジアの“梅雨(ばいう、つゆ)”は英語でも、ドイツ語でも、フランス語でもBaiuである。“津波”と同じく、科学用語で日本語がそのまま外国語になっているのは、その特徴がはっきりしており、他に類例をみないからであろう。日本では、春夏秋冬の四季に梅雨季を加えて五季とする季節区分のほうがよいという考えもあるくらいである。梅雨は日本の稲作文化を育て、われわれの生活に深くかかわってきた。
 梅雨季の始まりを梅雨入り(つゆいり)または入梅(にゅうばい)とよび、終わった日を梅雨明け(つゆあけ)または出梅(しゅつばい)とよぶ。しかし、その日を気象学・気候学から客観的にきめるは非常にむずかしく、現在のところは、気象庁が主観的に決定している。その理由は、入梅・出梅の定義が実際にはかなりむずかしいからである。降水日の連続性、雲量の日日変化、雨天・曇天の連続性、日本を中心とする天気図上における梅雨前線の出現・停滞、などなど、梅雨季を特徴付ける気象状態は多数にのぼる。
 ある1地点、例えば、東京でいつ梅雨入りしたかをきめることは、上記の気象要素の変化を検討して比較的簡単にきめられる。しかし、ある広がりをもつ地域についてはむずかしい。大まかな傾向で捉えて、決定するより他ない。
 梅雨前線は5月・6月・7月と北上してくるから、入梅も出梅も南が早く、北ほどおそくなるはずだが、もし、地方ごとにきめると、かならずしもその順番にならないことがある。“梅雨入りしました”とか、“梅雨明けしました”という宣言が、毎年、気象庁から発表されるが、いずれも少し日にちがたってから宣言されることがある。年によってはあとで訂正されることもある。また、庶民の感覚ではとうの昔に。。。。と思うこともある。気象庁の関係者の間で、さぞかし検討に手間取ったのだろうと、ご苦労のほどが察せられる。そもそも、気象という自然現象について、人間が宣言をしようとするところに無理があると思うのだが、マスコミはそれを許してくれないのだろうか。

梅雨季、または、梅雨期間

 梅雨入りから梅雨明けまでの期間、すなわち、梅雨季の年による違いは大きい。日数も違うし、日数が同じでも日付けが異なる。。。。つまり全体に早くなったり遅くなったりすることもある。これは近年のように各種の異常気象が多発する前から、大きな特徴であった。
 20世紀の前半までの統計でも、梅雨期間が70日以上であった年は、1889年、1901年、1920年、1945年、一方、20日より短かかったのは1900年、1904年、1927年、1941年であった。中でも、第2次大戦が終わった1945年は、5月中旬から8月まで100日におよんだ。これに対し1904年は6月中旬のわずか4日間であった。
 一般に、人びとは陰鬱な天気が3日連続すると梅雨に入ったと感じる。また、カラットした青空で太陽が照りつける天気が3日連続すると梅雨が明けて真夏になったと感じる。天気図上で南方の太平洋上に梅雨前線があっても、自分が住んでいるところの天気が夏の日差しいっぱいで暑い日が3日以上も続けば、梅雨は明けてもう夏だと思う。気象庁が梅雨明け宣言をしないと、一般の人びとは“気象庁は何やってるんだろう”と感じる。実際に、梅雨には中休みがあって、その後また梅雨模様に逆もどりすることもあるから、難しい。最高に面白いことを、ある時テレビでアナウンサーが言った。「梅雨は明けたというのに、毎日、曇り空が続きます」。これは梅雨の定義・捉え方の問題、天気図上の気圧配置・梅雨前線の位置と各自の地点(局地)の天気の問題、宣言をどのようにするかの問題など、いずれも梅雨の特徴にかかわる本質的な問題で、筆者としては、ただ面白がっているだけではすまない。
 気圧配置型の出現頻度を基準にして季節区分をすると、梅雨型気圧配置の出現頻度が30%以上になると梅雨季になる、すなわち、梅雨入りである。反対に、梅雨型気圧配置の出現頻度が30%以下になり夏型気圧配置が卓越すると梅雨明けで、盛夏(夏季)になる。1年の中で、梅雨明けという季節の分かれ目はもっとも劇的に変化する。ビールが売れ始める。アイスクリームが売れ始める。だから、ここの季節変化は重要なのだと聞いたが、こればかりでない。

将来の梅雨

 地球温暖化した場合、梅雨はどうなるだろうか。最近、気象研究所・気象庁その他の研究者が参加する大型プロジェクト(リーダーは楠博士)によって、将来(2080−2099年)の梅雨について、詳しい予想結果がえられた。その中のいくつかを紹介すると、(1)北太平洋高気圧の発達は弱まる。本州はその西の端に位置する。(2)北太平洋高気圧は8-10日くらい発達して、7-8日弱まるという状態をくり返す。(3)梅雨入りは4日くらい遅れ、6月15日ころになる。(4)梅雨明けはやはり4日くらい遅れて7月15日ころになる。しかし、2日くらいの中休みの後、弱いが明らかな雨季が始まり7月27日ころまである。場合によっては8月に終わる。この雨季も梅雨期間と見なせば、梅雨明けは8月になる可能性もある。(5)梅雨期間中の梅雨前線の北上は不明瞭で、6月15日‐7月11日くらいの間、ほとんど同じ位置にある。

(図1)130−140°Eの経度における20−40°Nの断面の5月16日から8月16日までの降水量(mm/日)の変化。
(上)現在(1979−1998)(下)将来(2080−2099)。赤色は梅雨前線帯に置ける多雨域、水色は少雨域。(The Kyosei-4 GCM Modeling Group による)

 (図1)は日本が位置する130−140°Eの傾度における20−40°Nの断面の5月16日から8月16日までの降水量(mm/日)の変化を示す。(上)の図は現在で、(下)の図は将来である。図中、赤色系統は梅雨前線帯における多雨域で、水色系統は少雨域である。上述の事柄が、この図から読み取れるであろう。特に、現在と将来の違いを赤色(多雨域)の部分で比較すると、上述の(1)から(5)の内容がより具体的に理解できるであろう。

(図2)7月降水量(mm/日)の[(将来)−(現在)]の変化。水色は将来増加、褐色は将来減少。(The Kyosei-4 GCM Modeling Group による)

 (図2)は、7月の月降水量が現在より将来多くなる地域(水色)と、少なくなる地域(褐色)の分布を示す。揚子江下流から九州・四国の一部は将来増加するが、華北から朝鮮半島、本州は減少する。すなわち、梅雨前線は南岸沿いに停滞し、北上しない傾向が強いので本州の南岸沿いは降水量は多くなるが、その北側の本州のほとんどの部分は降水量は少なくなる。

梅雨の異常化

 上に述べたのは最近の20年と、100年後の20年とを比較しての話である。それぞれは20年間の平均の状態と理解すべきである。現実の毎年の状態は、その20年間の平均状態の上下を変動する。したがって、100年後でなく、ごく最近における異常な状態を類推するのに、上述の結果は役立つ。
 例えば、むかしから、「雷が鳴ると梅雨が明ける」といわれた。これは、前線が頭の上を通過し、北上してゆくことを捉えていた。言うまでもなく前線の南側は北太平洋高気圧に覆われ、夏である。ところが、最近では7月・8月、いわゆる夏の間中、雷が頻発する。関東北部・西部の山岳地帯に夏の日の午後よく発生する熱雷の話ではない。筆者は最近東北地方の北部に住んでいるが、土地の人びとは、“最近は雷が昼夜を問わず、夏中よく発生するようだ”と感じている。これなど、100年後を先取りしたような話に思えてくる。


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