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連載エッセイ [22]
異常気象を追う
吉野正敏

 
地ふぶき
 
ふぶき・風雪・地ふぶき

 雪が強い風とともに降っている状態を人びとは“ふぶいている”と言う。気象庁では風速が10m/s以上の場合をふぶき(吹雪)と呼び、10m/s以下の場合を風雪と呼んでいる。15m/s以上の場合を猛ふぶきと呼ぶ。
 強い風が吹くと積雪の表面から雪が舞い上がり、積雪の表面を雪が滑ってゆく。厳密に言うと、降っている雪か、いったん積もった雪が雪の粒となって舞い上がって、飛び跳ねながら飛ばされてゆくのか、区別できない。したがって、ふぶき(吹雪)とは、「降雪中の雪や、いったん積もった雪が強い風で空中に舞い上がり、視程が悪くなっている気象状態を言う」とする方が、生活しているわれわれにとっては、感覚にマッチする。そして、「雪が降っておらず、積雪の表面から強風によって雪が舞い上がり視程不良になっている場合」を地ふぶき(地吹雪)とすれば言葉としてははっきり区別できる。
 なお、ブリザードとは、アメリカ合衆国の東部・中部や、南極大陸で強い寒気の吹きだしにともなう寒冷な強風で、強い地ふぶきをともなう。地域的に広く、継続時間も数時間以上で、ここで扱うふぶき・地ふぶきとはスケールが一桁も二桁も大きい。したがって、日本の“地ふぶき”を“ブリザード”と呼ぶのは適当でない。むしろ、間違いであろう。
 日本語の“地ふぶき”は英語のdrifting snowで、その定義は「地上から2mの高さまでの大気層で降っている雪や強風により舞い上がった雪のために視程が1kmより悪い場合を言う。 なお、水平視程に影響する高さ以上に舞い上がっている場合を “高いふぶき” (blowing snow)と言う。 ふつう積雪の表面から約25cmの高さまでは、強風により雪の粒が飛びはねる現象が卓越しており、それ以上の高さでは雪の粒子が浮遊して風によって運ばれる。
 強風・多雪で、しかも多数の人びとが生活している日本では異常に強い地ふぶきによる災害が多い。今回は、これについて少し考えたい。

ホワイトアウト・吹き溜まり

 地ふぶきが強烈になると、飛ばされる雪の量が多くなるので視程が悪くなる。これが極端な場合には自分の周囲が完全に見えなくなる。これをホワイトアウトと言う。交通機関の運行には最も危険な現象である。
 秋に発生する霧は、夕方から夜半にかけて地表面が冷えて来て、初めには極めて局地的に塊状に発生する。自動車を運転していて急にこのような霧の塊の中に入り、一瞬周囲が真っ白になり、何も判別できなくなることがある。地ふぶきによるホワイトアウトはこれと同じだが、継続時間(塊の大きさ)が少し長く、数秒から十数秒のことが多い。高速道路の走行中や信号待ち交差点付近では事故につながる。
 一方、地面を飛ばされて来た雪は、風力が少しでも弱くなるとそこに堆積する。地形・地表面の凹凸・建造物・樹木などの影響で風が弱くなると、それが敏感に反映し、風下に雪が土手状または砂丘状に堆積する。このように雪が局所的に堆積したところを “吹きだまり”と言う。場所的には限られているが、時には何mもの高さ(深さ)にもなるので、交通機関にとっては危険である。もちろん、その上を歩行することもできない。

地ふぶき予測

 地ふぶきによる視程障害は大きな問題で、近年、その予測やその情報提供システムの開発が試みられている。秋田県の国道7号線の約100kmの区間で気象特性や地形特性などから、地ふぶきの有無と地ふぶき強度を烈・強・中・弱の4段階で予測を試みられたが、その階級区分は、
烈とは最も強い地ふぶきで、視程が30m以下、
強とは強い地ふぶきで、視程が30-50m、
中とは中程度の地ふぶきで、視程が50-100m、
弱とは最も弱い地ふぶきで、視程は100-200m
である。
 予測の時間帯は、1回目は1時間ごとに、当日の7時から翌日の7時までの最大24時間先の予測を行う。 地ふぶきの発生条件は、およそ気温2℃以下、風速5m/s以上であるが、予測のために使用する気温・風速のデータは地域性を反映しているグリッド・ポイント(予測メッシュの交点)の値を選ぶ。
 予測値を利用する機関は、救急医療、物流配送、運輸、情報提供などが主である。また、パソコン・携帯サイトによる利用客は、通勤時の利用が最も多い。秋田県内の国道7号線の場合では、予測精度は70-80%で、予測地点数の増加や精度の向上をさらに高めるよう期待されている。利用価値が高い「秋田県北地域の地ふぶきガイド」(国土交通省東北地方整備局能代河川国道事務所)のさらなる充実と、役所や事務所・事業所、道の駅、ガソリンスタンドなど配布先の拡大を望みたい。

地ふぶき・吹きだまりと交通

 自動車交通が発達したアメリカ合衆国では、地ふぶきによる交通事故には悩まされている。ミネソタ州は合衆国中西部に位置し、北はカナダと国境を接し、州の北西部はこの連続エッセイ[19]でもふれたスペリオル湖の西端に接する。ミネソタ州は面積約22.5万平方キロメートルで、日本の本州の面積が約23.1万平方キロメートルだから、その広さの見当もつくであろう。
 このミネソタ州における自然災害の第一が降雪・積雪・地ふぶきなどの雪にまつわる異常気象災害である。ここの州道(日本の国道に相当する)では、地ふぶきが原因となった交通事故は1年に平均して死亡者8人、負傷者284人を数えると言う。この数字を日本人は少ないとみるかもしれないが、本州の総人口は約1億3百万人だが、ミネソタ州の総人口は約5百万人である。もし人口の比率で20-21倍してみると、死亡者も負傷者も驚くべき数字になる。もちろん、地ふぶきの規模や回数などが異なるから、この単純計算の結果で、日本の現実を推定とするわけにはゆかないが、日本、特に北日本では検討の必要があることは確かである。
 この州の地ふぶき対策は第1に安全、第2に除雪などの道路管理、第3に、のろのろ運転による経済的損失に向けられている。いずれも生活者、ひいては州の経済に根本的にかかわる問題である。
 最近の課題は、地ふぶき制御技術では道路設計、フェンスや防雪林の設計・計画、降雪・地ふぶきの気象特性研究、経済的損失・利潤のモデル研究、地ふぶきの予測、道路閉鎖に至るような吹きだまり解明、さらには、ホワイトアウトの運転者心理への影響などである。(写真1)は盛岡―秋田をむすぶ国道46号線に沿う地ふぶきを防ぐフェンスの例である。
国道46号線沿いの地ふぶき防止フェンス
(写真1)国道46号線沿いの地ふぶき防止フェンス(2009年1月、雫石町にて吉野撮影
 吹きだまりも危険である。高速道路で吹きだまりに突っ込み、あるいは、乗り上げて、動けなくなり、運転者が車を乗り捨てて道路上に置き去りにする場合もあり、自動車の中に閉じ込められて救助を求める場合もあり、救援活動の内容や形態、その後の処理・整備も複雑化している。
 吹きだまりは建造物によって生じる場合も多い。都市計画や集合住宅の配置・設計では、地ふぶきをもたらす強風時の主風向を考慮にいれなければならない。こういう時の建造物周辺の気流は極めてミクロな建造物や地表面の形に影響されるので、きめこまかい視点が必要である。 さらに、住宅の窓や、玄関のドアの開閉時に侵入する雪の粒、屋外にある機械の隙間に入り込む雪の粒などの対策も欠かせない。すべて、地ふぶきに関係するのである。

地ふぶきの異常気象を逆手に

 地ふぶきは、上述のように、災害をもたらす困りものである。しかし、これを逆手にとり、“地ふぶきツアー”、“地ふぶきトレッキング”、“地ふぶき体験ツアー”などと名付けて観光客を集め、地ふぶきを観光資源にしようという試みが近年始っている。青森県の五所川原市金木町では、“町おこし”の一環として、地ふぶき体験ツアーを計画した。韓国や台湾からの観光客もふくめて、津軽地方の伝統的なカクマキ・モンペ・馬ソリ・などとともに、“地ふぶき体験”は多くの観光客に評判となっている。
 ただし、泣きどころは、地ふぶきの発生頻度が年によって非常に異なる点である。平年ならば1月末にはこの地域では積雪は1mもあり地ふぶきも激しいが、例えば、2007年1月は雪が少なく中旬でも積雪は5cmくらいであった。そのため、2007年1月15日、“地ふぶき体験ツアー”は中止せざるをえなかった。安定して供給される観光資源とするには、さらなる研究が求められる。


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