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連載エッセイ [15]
異常気象を追う
吉野正敏

 
初冠雪
 
秋の或る日、山を見ると

 雨が上がった秋の或る日、雲の合間から近くの山の頂を見ると真っ白になっている。“ああ、山はもう冬か”と思う。秋から冬にかけた風物詩である。
 気象観測法の定義では、「初冠雪とは山岳で夏の最高気温がでた後に初めて観測された積雪」をいう。この定義だと、雲にさえぎられて麓からみえなくても山に雪が積もれば“初冠雪”で、麓に住む一般の人びとの感覚から、少しずれている。この定義は山に居る人にとっての“初積雪”ではないかと思う。遠く離れた麓から、雪の冠をかぶった山を見て季節の移ろいを感じるのが、“初冠雪”の味わいではなかろうか。
 気象の専門家は、「たとえ山頂に積雪があっても、雲によって山頂が隠れてしまった場合、麓から見ることができず、雲が晴れてから観測されるというタイムラグがある」と指摘している。しかし、私の感じでは、雲のなかでいつの間にか雪化粧をした山が、秋晴れの空を背景に急に現れるのが初冠雪であって、視程もよいから遠くからも見ることができる。このような一連の舞台回しが、われわれの感性をゆさぶるのではなかろうか。気象学的に解説すれば、太平洋側の山岳の山頂部に降雪をもたらした低気圧が去った後、冬の季節風が吹き出して日本海側の山やまで雪が降る。その直後、移動性の高気圧に覆われる。遠くから山頂部を見ることができる。この一連の秋の天気変化にかかわる現象の一つが初冠雪である。麓から山頂部の雪を見るまでに、上記のようなタイムラグがあることは事実だが、どうも無粋な議論に思えてくる。

初冠雪日の異常な遅速

 今年、2008年9月末に北日本を中心に中部地方から北海道までの山やまで、初冠雪が報告された。平年ならば10月になってからで、山によっては11月になって初冠雪となるのに、今年は、北海道では9月24日、東北地方では9月27−28日、中部地方では9月27−29日に初冠雪をみた。これは異常に早い初冠雪の日を迎えたことになる。
 富士山の初冠雪は10月が最近では普通で、平年値は10月1日である。初冠雪の定義「その年で日最高気温が最も高かった夏の日以降に積雪があったとき」に従えば、2008年は最高気温は7月21日の10.6℃で、初冠雪は8月9日とされた。これまでの記録第1位の1914年8月12日より3日早かった。

(表1)2008年秋の異常に早かった初冠雪の記録

地方 山名 海抜(m)  麓の地名   平年値*   2008年  差(日)**  備考

北海道 利尻岳 1721 稚内 10月2日   9月24日   −8  
  暑寒別岳 1491 留萌 10月8日   9月24日   −14  
  旭岳 2291 旭川 9月24日   9月24日   0  
  羊蹄山 1898 倶知安 10月2日   9月24日   −8  

東北地方 岩手山 2038 盛岡 10月13日   9月27日   −16  1953年以来、3番目の早さ
  鳥海山 2236 酒田 10月9日   9月28日   −11  1980年以来、2番目の早さ
  蔵王山 1841 山形 10月23日   9月28日   −25  1940年以来、9月は初めて
  飯豊山 2105 会津若松 10月17日   9月28日   −19  
  月山 1984 山形 10月15日   9月28日   −17  1889年の観測開始以来、
 1976年9月23日に次いで2番目

中部地方 富士山 3776 甲府 10月1日   8月9日   −53  
  立山室堂 2450 富山 10月9日   9月27日   −12  非公式
  弥陀ヶ原 1930 富山 10月9日   9月27日   −12  非公式
  千畳敷カール 2612 駒ヶ根   9月29日    約−30   非公式
 例年は10月下旬−11月上旬

*)平年値は1971−2000年の平均。 **)−は早いことを意味する


 北海道・東北地方・中部地方の山やまの初冠雪の平年値の日付と2008年の日付を(表1)にまとめた。まだ、充分に資料を集めてはないが、速報として提示しておく。海抜高度や山岳の位置・緯度などにもよって差はあるが、2008年秋の初冠雪が異常に早かった状況がわかる。

初冠雪は冬の到来の指標か

 秋が終わって冬になる季節の変化は、中央日本以北の人びとは雪によって感じとる。みぞれが雪に変わり、やがて地上に雪が積もれば冬である。
 初冠雪は冬到来の指標であった。しかし、当然のことながら、初冠雪はすぐに消えるのがふつうである。「山に雪が3度降れば麓の自分たちのところにもやがて雪がくる。。。」などはよく聞かれる言葉である。これは気象学的にも、長年の状態をとらえた気候学的にも、当をえた経験則である。山頂と麓の高度差による気温低下を時間(日)の経過による気温低下に置き換えてとらえるわけだが、3度とか4度というのは日本の場合、冬の季節風の吹き出しの回数か低気圧の通過回数をとらえている。まことにすばらしいとらえかたである。麓の人たちは山が雪で白くなるのを1回・2回。。。と数えているのである。そして、麓の低地に住む人びとは初雪を迎える。初冠雪は間違いなく冬の到来の指標である。
 ここまでの過程については、異論はないであろう。しかし、一方で、問題は地球温暖化の影響である。温暖化により降雪日数・積雪日数は減少し、積雪深は浅くなり、初雪の日は遅くなっている。これは日本を始め世界的な傾向である。では、上に述べた今年の異常に早い初冠雪はどうして起きたか。今年の日本の冬は世界の温暖化傾向に反して異常な低温になるのだろうか。

温帯低気圧のいたずら

 初冠雪が異常に早いことはこれまでにも起きている。頻度高く起きるわけではないが、珍しい現象でもなく、最近増加したとか減少したわけでもなく、また、日付が早くなってきたとか、遅くなってきたという長期傾向も認められないようである。
 もし、そうだとすれば、初冠雪に対する地球温暖化の影響はないのであろうか。初雪(初降雪)の日付や、初積雪の日付が遅れてきていることは、日本はもちろん世界的な傾向である。それなのに、なぜ、日本の東北地方・北海道の山岳の初冠雪に、今年のような異常に早い年が現れるのか。これの答えを私のスペキュレーションで以下のように書いておきたい。
 すなわち、地球温暖化により全般に気温が上昇しつつあるときに発生する異常に早い初冠雪は、発達した温帯低気圧によって生じる。もう少し詳しく言うと、日本海北部を東進する温帯低気圧は、温暖化の影響下で南からの高温・多湿な大気の侵入や、より高温な海面温度の影響で低気圧活動が活発化する。一方、秋なので上空には強い西風が吹き始める。2008年には富士山頂の初冠雪が異常にはやかったのがその一つの証拠である。上空への寒気の侵入で低気圧はますます発達する。2008年多くの山岳で、北海道は9月24日、東北地方のほとんどの山で9月28日が初冠雪であったが、この4日のずれは、雪を降らせた低気圧が発達する範囲拡大に関する時間のずれと、低気圧が東に去った後、西高東低の気圧配置になって冬型の季節風が吹くような状態になり山頂部に雪が降る、それらの時間のずれの地域差を意味していると思われる。つまり、地球温暖化により日本海北部で温帯低気圧が異常に発達することが、物語の出発点である。この異常発達は、下層の暖気と上空の寒気の流入による大きな温度差を生じるには9月下旬の方が10月より起きやすいであろう。このようにして、2008年9月下旬の初冠雪を見たのだと推論する。
 したがって、来るべき冬の降雪や積雪はおそらく地球温暖化の影響をうけた状況になるのではなかろうか。


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