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連載エッセイ [8]
異常気象を追う
吉野正敏

 
アメリカ中西部の洪水
 
2008年6月の大洪水

 2008年6月アメリカ合衆国中西部で500年に1回とも言われる大洪水が起こった。実はほぼおなじ地域で1993年にも何百年に1度と言われる大洪水があった。その地域の人たちや、水害研究の専門家の間ではまだ記憶に新しいところで、“またもや”の感が強い。
 2008年6月の前、3月17日―5月2日の47日間にも今回の洪水地域は再現期間100年といわれる洪水に見舞われていた。4月の段階で洪水による死者の数はミズーリ州5人、アーカンソー州2人、オハイオ州2人、テキサス州1人であった。ミシシッピ川は1973年以来の高水位を記録していた。
 そこへ追い討ちをかけて多量の雨が降った。アイオワ州東部の都市シーダーラピッズでは722mmを観測した。これは平年より240mm多かった。シーダー川流域では5月10日−6月10日合計の降雨量は450-600mmで、この流域としては極端な多降水量である。洪水の原因は、このような異常降雨に加えて、残雪の量が異常に多かったことが指摘されている。特に3・4・5月の流量増加には残雪が春になって急速に融解して流出したことが加わっていた。では、どうして冬に雪が多かったか、どうして春になって急に融解したか、その究明はこれからである。地球規模の大気循環の異常と関係ありそうだが、今後の研究にまつより他ない。
 6月18日の段階で、イリノイ州知事が発表したところでは、国家警備隊1,100人、囚人300人、地域住民数百人が堤防に土嚢を積む作業その他に従事しているとのことである。6月19日現在、シーダーラピッズでは住宅4,000戸、たくさんの事業所が浸水した。浸水面積は100万平方キロメートルに及ぶと言われた。シーダー川の水位は7.95mに達し、これは計算によれば500年高水位である。
アメリカ合衆国における2008年6月の洪水
(図1)アメリカ合衆国における2008年6月の洪水

 (図1)は2008年6月の洪水の分布である。濃い水色はおおきな洪水(36箇所)、または中くらいの洪水(78箇所)で、うすい水色は小さな洪水(110箇所)または洪水に近い状態(128箇所)をしめす。図中では記号が重なり、充分に全体の数が表現されていないが、アメリカ合衆国の中西部に集中していることがわかる。

2008年6月の洪水被害

 今回の洪水被害の大きな特徴の一つは堤防の決壊である。6月19日現在、堤防の決壊箇所は約20、まだ、20数箇所で決壊のおそれがあると言う。堤防決壊は浸水面積の拡大を招き、被害が大きくなる。6月18日アメリカ政府は被害者へ水・食料・テントなど、1,940億円規模の緊急支援を決定した。そして、19日ブッシュ大統領はアイオワ州の被災地を慰問した。カトリーナの時の災害対策の手抜かりを繰り返さないよう敏速に振舞った。これに対して、“低所得者の黒人が多い南部の町ニューオーリンズと、食糧生産基地アイオワ州の違いよ”という陰口が聞こえてくるが、まったくの的外れでもなさそうである。見方をかえれば、連邦政府にとってそれだけ深刻な被害をもたらした、あるいは、もたらすであろうと思われた証拠だからである。
 アメリカ農務省が6月18日に発表したところでは、この洪水によって、トウモロコシの作付け面積は10%減少する可能性があると言う。洪水による不作懸念からトウモロコシ・ダイズなどの穀物価格が高騰した。国際商品に分散投資するファンドが畜産物先物への資金配分を増加した。6月中旬1週間のシカゴ市場における上げ幅はトウモロコシ11%、ダイズ6%に達した。
シカゴの先物相場価格の変動
(図2)シカゴの先物相場価格の変動、2008年4月中旬〜6月中旬

 (図2)はシカゴの先物相場価格の4月中旬から6月中旬までの変動をしめす。コムギは4月から5月にかけて下がる一方であった。トウモロコシは5月末までほぼ横ばいであった。それが、6月になって両方とも急激に上昇したことがわかる。アメリカ穀物メジャーのカーギルが甘味料などに使うコーンシロップの出荷を一部分見合わせた。これは、シーダーラピッズのトウモロコシ加工工場の設備を止めたためである。またその他、道路や鉄道網が寸断され、物流混乱の影響がアメリカ国内や国外にまで及ぶことが懸念される。これらが、この急上昇の要因である。

1993年の水害

 ここで1993年の水害を振り返ってみたい。1993年6月27日から8月15日にかけたミシシッピ川の大洪水は上流域の長雨によって起こった。アイオワ、イリノイ、ミズーリ、インディアナ、ミネソタ、ウィスコンシン、アーカンソー、カンサス、など9州に及び、死者48人、被害額1兆2千億円に達した。その7割は農業被害で、ダイズ・トウモロコシ・コムギが長期間の冠水でやられた。浸水面積は14万平方km以上に及んだ。商業航路は2ヶ月にわたって閉鎖された。道路や鉄道網は破壊され、浄水場が浸水のため25万人に断水が生じた。これらを振り返ると、2008年の場合より規模(被災地の面積、被害額など)はやや大きいが、オーダーとしてはほぼ同じとみてよかろう。長雨が原因という点はおなじである。ただし、1993年の場合は季節が夏だったので、融雪の影響はなかった。
 1993年の大洪水の後、水害対策として次のような方針が考えられた。すなわち、『大洪水を治水施設で完全に制御することを目標としないで、ある程度の氾濫を許しつつ可能な限り被害を軽減する危機管理システムを用意する』。1994年6月、政府の洪水氾濫原省際委員会はこのように政府に提言した。
 2008年の中西部の大洪水で破堤箇所の数が多いのは、この提言の結果が反映しているのではなかろうか。

日本で学ぶもの

 箇条書きでまとめておきたい。
  1. 台風による災害に注意が向き、5月−6月の長雨や大雨、梅雨季の豪雨による水害対策を忘れがちである。今後、地球温暖化の影響も考えられ、雨季の期間のずれ、雨量や分布地域の巨大化などの恐れがある。それにともなう治水の方法、住民の災害意識変化などを至急検討すべきである。
  2. 世界の4大河川の一つであるミシシッピ川と、日本の中の河川とはスケールにおいて比較することは困難だが、問題によっては、本質的におなじである。今後もよく注目すべきである。
  3. たとえば、破堤による大規模氾濫である。利根川や淀川では、もし異常な多雨があれば高水位が長時間継続し、下流域では破堤する可能性があると指摘されている。
  4. その結果生じる氾濫域における課題は、自然環境・野生生物・里山の環境などがある。都市域ではライフライン増加・高速道路網・地下街・地下交通機関・レジャー施設の増加などがあり、農業地域では、作付け体系・出荷対策・労働力問題がある。
  5. 被害者に対する行政機関やボランティアの援助態勢・情報伝達方法の整備・外国人住民への対応・IT時代における避難や援助の体制・方法の再検討など、参考になる点が多い。
  6. 危機管理・災害対策に対処する行政機関の整備におけるトップダウン、意見のボトムアップなど参考になる。
  7. 以上は春から夏にかけた季節の長雨による長期間の洪水災害による場合である。竜巻による災害のように短時間に狭い範囲に集中して発生する災害とは異なることを強調しておきたい。
  8. ダイズ・トウモロコシ・コムギなど、アメリカ中西部の水害による減収が日本の各家庭の経済にまで、すぐに、大きく影響する時代になっていることをよく認識すべきである。


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