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連載エッセイ [3]
異常気象を追う
吉野正敏

 
お花見
 
お花見日の長期変化

 日本でお花見と言えばサクラである。東京ではソメイヨシノはすでに散り、いまちょうど八重桜が見頃である。北国のサクラはこれから満開になるところもあるが、有名な弘前公園のソメイヨシノの満開は例年より9日も早く満開を迎えた。青森付近では8−10日も早かったと言う。東京付近でも今年は数日から約1週間早かった。“お花見はいつか”毎年毎年、日本人は心を躍らす。盆や正月のようにきまった日に必ずやってくるのでないところが、また楽しい。暖冬そして早く来た春と言えども、開花直前の寒さが響く。咲き始めてから満開までの期間ですら、嵐・雨・寒さに左右される。現在の気象予報技術でこれらを確実に予報するのは困難だから、かえって、各人の予想がおもしろくなる。
 京都で天皇または将軍が開いた花見の宴の日付の記録は9世紀以来残っている。この記録によると9−10世紀は4月11日、11世紀から14世紀までは遅く平均では4月19日、15世紀が4月13日、19世紀から20世紀前半はいわゆる小氷期で遅かった。最近は地球温暖化により春が早く来る傾向にあるので、植物の芽生え、成長も早く、サクラの花も早く咲く年が多い。
 都市のヒートアイランドによってサクラの開花が早くなったのは、東京では1920年代、大阪では1960年代からである。青野靖之・小元敬男の研究(1990)によると、20世紀末頃の30年間、東京ではヒートアイランドの影響で1年に約0.15日の割合で早くなっており、大阪では約0.14日で早くなっていると言う。地球温暖化がもし2℃進んだとすると、東北地方や北海道では10−12日早くなり、近畿・中国地方では5−6日、九州地方では0−2日早くなると言う。
 この結果から推測すると、将来、日本の中では北日本と西南日本の開花日の差は小さくなってくる。“東京でお花見を逃したから、東北地方へ行こう”などと言うことは無理になるかも知れない。南から北へサクラ前線の北上を追って花見旅行を楽しむなどの計画は成り立たないとなると、つまらない気もする。
 
3月の気温と開花

 サクラの開花日と気温との関係についての研究は、日本では数十年の蓄積がある。その結果によると、3月の月平均気温との関係が最も有意性が高い。(図1)は東京を例にとり、横軸に3月の月平均気温をとり、縦軸に日付をとってある。ただし、1月1日、2日、3日。。。を1,2,3。。。とし、2月1日、2日、3日。。。を32、33、34。。。として表わしてある。例えば、3月21日は80日、4月1日は91日である。(図1)の傾向線は直線(実線)で表わし、その上下の破線は95%の信頼区間を表わしている。この傾向線の係数(傾斜、回帰係数とも呼ぶ)は−4.047である。すなわち、3月の月平均気温が1℃高いと開花日は約4日早くなると言うことを示す。
(図1)東京における3月の月平均気温と開花日の関係。
          (図1)東京における3月の月平均気温と開花日の関係。

 同じ表現で盛岡の場合を(図2)に示す。ここでは傾向線の係数は−2.282である。すなわち、3月の月平均気温が1℃高いと開花日は約2.3日早くなる。
(図2)盛岡における3月の月平均気温と開花日の関係。
          (図2)盛岡における3月の月平均気温と開花日の関係。

 上記のとうり、青野・小元らの研究結果では、北日本は10−12日早くなるという結果であったが、これは最近の長期傾向の結果である。一方、(図1)、(図2)に示したのは3月の月平均気温が長年の平均値に対して高いか低いかによる結果と理解して欲しい。
 傾向線の傾斜(回帰係数)を日本の12地点について示すと(表1)のとうりである。

(表1)日本の12地点における回帰係数(3月の月平均気温が1℃高いと開花日は幾日早いか)。
マイナスは早くなることを意味する。

地点 早くなる日数(日)

札幌 −1.8
秋田 −3.0
盛岡 −2.3
東京 −4.0
名古屋 −3.7
長野 −2.8
金沢 −3.8
京都 −3.4
鳥取 −3.2
広島 −3.0
福岡 −3.4
鹿児島 −0.9

(朴恵淑・吉野正敏による)

 この(表1)をみると北海道と九州南端を除くほとんどの地域で1℃高いと2−4日早いと言う結果である。北海道があてはまらない理由は、3月の平均気温が低く過ぎ、3月の月平均気温の影響が弱いためと解釈される。図2の盛岡の場合、3月の月平均気温が0℃以下だと開花日のバラツキが非常に大きく、3月の気温以外の影響が大きいことがわかる。札幌はこのような現象がさらに強く現れるのではなかろうか。
 逆に九州南端・南西諸島では気温が高いので3月の月平均気温がよい指標とはならない。結局、本州・四国・九州で、その最北端・最南端を除く地域で、3月の月平均気温とサクラ(ソメイヨシノ)の開花日との相関は高く、1℃高いと2−4日早いと結論される。

異常開花日

 サクラの開花日の異常をエル・ニーニョ年とラ・ニーニャ年にわけて考察しよう。エル・ニーニョ年は暖冬で春は早く来るから開花日は早くなり、ラ・ニーニャ年は逆に冬は例年より寒く春は遅いから開花日は遅くなると思われるが、本当にそうか。もしそうだとすれば、どのくらい違うか。
 エル・ニーニョ年として、1972、1976、1977、1982、1987年を選び、ラ・ニーニャ年として1965、1970、1974、1988年を選び、それぞれの平均を求めた。日本(41地点)、韓国(22地点)、中国(7地点)における値を得た。広大な中国について地点数が足りないが、データをソメイヨシノに限ったので、やむをえず少なくなった。それでも、これまでのサクラの開花日の話は日本国内ばかりであったが、今回初めて日本・韓国・中国を含めて東アジアの全体像を示すことができ、嬉しい。
 (図3)はエル・ニーニョ年、(図4)はラ・ニーニャ年の状態を示す。等値線(等期日線)が日本から韓国を経て中国にまで繋がることは、現象が日本国内ばかりでなく、東アジア全体に普遍的に起きていることを物語る。そして、さらに驚くことは、エル・ニーニョ年とラ・ニーニャ年の差は東アジア全域でどこでも約15日、つまり、異常に早い年と遅い年の差はほぼ15日であるという事実である。しかも、上述のようにエル・ニーニョ年は5年の平均、ラ・ニーニャ年は4年の平均だから、極端な場合を想定するとエル・ニーニョ年とラ・ニーニャ年の差はさらに大きいであろう。早い年の異常開花日と遅い年の異常開花日の差は、おそらく20日以上に達すると考えても大きな間違えではないであろう。
図4
(図3)東アジアにおけるソメイヨシノのエル・ニーニョ年(早咲き年)の開花日の分布。
図5
(図4)東アジアにおけるソメイヨシノのラ・ニーニャ年(遅咲き年)の開花日の分布。


[図はいずれも朴恵淑・吉野正敏による]



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