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連載エッセイ [45]
風を歩く
吉野正敏

 
風からみたアンコール
 
 8世紀の中ころの767年、ジャワとコンロン(南方沿岸の地方)の軍隊がトンキン湾に攻め込んだ。9世紀には、ジャワに一時いたジャヤヴァルマン2世がカンボジャにもどり、アンコール王朝を築いた。そして、高い文化水準をもつクメール民族の手で多くの優れた建造物を残した。
 アンコールには王の沐浴場といわれる聖なる池や、農業用水を配分する貯水池などがたくさんある。高い治水技術によって、水源を確保し、大きな池・環濠・配水施設で国内に水を配分した。これが王朝を維持した。こう書いてくると、水との関係はわかるが、“風との関係はどうなのだ”という質問がくるだろう。
 ここからが本題である。第1に、カンボジャを含めてインドシナ半島はいわゆるモンスーンアジアの中心である。北半球の夏、南西季節風が吹くときには雨季で、北半球の冬、北東季節風が吹くときは乾季となる。特に乾季が長い年、これをどう乗り切るかが為政者には大切な課題であった。つまり、季節風―乾季と雨季―農作物生産―社会基盤―国家体制という影響の流れが連結されている。年による季節風の変動が、王朝の維持にかかわる問題であるという図式がわかるであろう。

(写真1)アンコール・ワットの貯水池「西バライ」
2000年1月16日 吉野撮影
 (写真1)は、アンコール地域の北西部にある「西バライ」の周辺風景である。西バライは東西9km、南北3kmの大きな貯水池である。北東部にはやや小さい「東バライ」があるが、それでも東西7km、南北1.8kmあり、日本人の目には広大そのものである。しかし、広くて浅いことは貯水池としての効率はよくないことを意味し、アンコールの人たちは他の効果も考えたのであろう。すなわち、局地的に風を媒介として、高温で乾燥した乾季に涼しさをアンコール周辺に送り、人間生活や植物景観の確保などの環境対策を考慮したと思われる。乾季の水利用だけでなく、乾季の赤茶けた地域のなかにアンコールだけが、局地的に涼しく、緑の空間を造りだした。これは、宗教活動の効果・王朝の権力や富の象徴の誇示に役立ったと思われる。

(写真2)アンコール・トムの貯水池の水口
2000年1月18日 吉野撮影
 (写真2)はアンコール・トムにある貯水池の水口である。大小の水口の断面積の種類、その下面の高低によって、水量をコントロールする技術はかなり高かったことが推定できる。この結果、3期作が可能になったと言われている。 

(写真3)シェム・レアップの市場。(上)豊富な果物。白桃・黄桃・ぶどう・レイチ・ランブータン・その他。(下)白米。画面の中だけで10種類ある。
2000年1月17日 吉野撮影
 このバライの技術の精神は今日まで、受け継がれている。アンコールは観光地としても世界遺産としても、第一級だが、土地の人たちの豊かな生活がある。(写真3)はシェム・レアップの町の市場風景である。(上)は果物売り場でその種類の豊富さと新鮮さに驚く。なお、写真画面右側の中央部分にあるダンボール箱にFuji Applesとある。数年前、すでに日本のリンゴ“ふじ”が輸入されていた。また、(下)はコメの袋でこの画面にあるだけでも10種類ある。

(写真4)アンコール・トムのバイヨンにある“船団による上陸作戦”のレリーフ。海中には体形からみて2種の魚、海がめ、海へび(?)がいる。
2000年1月18日 吉野撮影
アンコール・ワットの北にアンコール・トムがあり、その中にバイヨンがある。その石彫のレリーフにクメール軍とチャンパ軍の戦争を示すものが何枚かある。(写真4)はその一つだが、ここで強調しておきたいのは、主題以外で添景としてある樹や魚である。樹は熱帯雨林の様相をもち、魚は大型で、地上も海中も生態系は豊かさを思わせる。おそらく、当時の季節風の状態は現在とほぼ同じか、あるいは、少し良いくらいの状態ではなかったろうか。


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