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連載エッセイ [35]
風を歩く
吉野正敏

 
対流圏の上昇気流
 
 地球規模の大気循環を赤道付近について見ると、北半球から北東の風が、南半球からは南東の風が吹き込む。帆船時代、アフリカ大陸からアメリカ大陸への奴隷貿易にこの東よりの風が使われたので、北東貿易風、南東貿易風ともよばれた。この二つの気流は赤道付近で集まる。そこを専門用語では熱帯内収束帯(Inter-Tropical Convergence Zone, ITCZ)と呼ぶ。この中で、集まった気流が強い上昇気流となり、積乱雲(入道雲)を生じる。写真1(上)には、積乱雲が堤のように連なっている状態がわかろう。

(写真1)南シナ海上空でみた熱帯内収束帯の上昇気流・積乱雲・かなとこ雲。
(上)北側からみた“かなとこ雲”。画面中央の積乱雲の堤は、対流圏下部の北東貿易風が熱帯内収束帯に向かって吹いてきて生じた。1988年9月13日、15時58分(JST)。
(下)積乱雲上部を横からみたところ。同上、16時05分。
以上、いずれも吉野撮影
 その上昇気流は対流圏の上限である圏界面(トロポポーズ)に達すると、それより以上に上昇できず、気流は圏界面にそって南北にひろがる。昔、鍛冶屋さんが使った“かなとこ”(金床)の形をしているので、“かなとこ雲”という。写真1(上)の画面上部に、上面がほぼ水平にひろがった逆三角形に見えるのが、“かなとこ雲”である。
 熱帯内収束帯は、北東からの気流と南東からの気流がぶつかって上昇するところだから、ここにはカーテン状に上昇気流があると思いがちだが、中緯度の不連続線付近のようにシャープな境界をなしていない。実際には、地上の水陸分布や地形の影響で、気流の集まりぐあい、ひいては、上昇気流の強弱に地域差がある。したがって、“かなとこ雲”は間隔をおいて発達する。写真1(上)をよく見ると、近く(画面で左上部)のものと、遠く(画面で右上部)のものと、二つあるのはこのためである。
 どうして、上昇気流は圏界面をやぶって成層圏に入らないか。その理由は、成層圏では、高度が高いところほど気温が高く、気温は逆転現象を起している。そのため、上昇気流がおさえられる。写真1(上)の画面上部の濃い真青の空、雲のないところが成層圏である。厳密にいうと、圏界面をつきやぶって、対流圏の上昇気流のあたまが成層圏にとびだすこともあるが、あまり専門的になるので、ここでは省略する。
 太陽が北半球にあるか、南半球にあるかにより、地上の気温が最も高いところ(これを熱赤道という)は南北に移動する。東西にのびる熱帯内収束帯の位置も南北に動く。太陽が南半球にある南半球の夏には、熱赤道は南半球にあり、北半球の北東貿易風は赤道を越して北西の気流となって南半球の熱赤道に吹き込む。逆に北半球の夏には、熱赤道は北半球にあり、南半球の南東貿易風は南西の気流となって北半球の熱赤道に吹き込む。したがって、熱帯内収束帯の位置は月によって変化し、それに水陸分布や地形の影響が加わるので、かなり複雑である。インドネシアのジャワ島はこのような西よりの気流と東よりの気流によって雨季・乾季がきまる。それらの年による長短・強弱がその年のコメの作柄をきめるので、大きな関心が払われている。
 上昇気流を近くで見たのが写真1(下)である。旅客機が“かなとこ雲”の近くを飛ぶことはめずらしく、このような写真を撮影できるチャンスは多くない。画面下部の二つの黒い雲頭は積乱雲の頂上の部分で、その上、画面の上部右3分の2は積乱雲の頂のさらに上の強い上昇気流の部分で、“かなとこ雲”の中で上昇気流が最も強い。ここで上下に筋のようにみえる部分は雨滴が激しい上下運動をしているところである。画面上部は、ほとんど“かなとこ雲”の上面(圏界面)に近いので、画面の左方向にのびている。左上の遠くの青空は成層圏、左下には煙霧層がみえる。この煙霧層は熱帯内収束帯の外側に発達する高圧帯の部分である。ここには下降気流によって沈降逆転層(海抜1,500mくらい)ができ、その下に煙霧層が発達しているのである。
 日本でも、夏、山岳地帯を中心にして上昇気流が発達し、積乱雲(入道雲)はめずらしくない。“かなとこ雲”がみられることもある。しかし、規模・強さ・頻度などからみて、熱帯内収束帯の上昇気流にははるかにおよばない。


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