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連載エッセイ [34]
風を歩く
吉野正敏

 
風返峠・風越峠
 
 自然を反映した地名には地形地名や気候地名などがある。気候地名の中で、日本で全国的に多いのは日向(ひなた・ひゅうが・ひむきなどと読む)や、日陰・日影・日蔭(ひかげ)など、“日”の文字がつく地名である。つまり、日照・日射の条件が我々の生活に一番影響が強いからであろう。日本は中緯度に位置し、地形が複雑なため、日照・日射の条件が特に冬を中心とした半年間に局地性が大きいためと考えられる。
 日に次いで多いのが風の文字がつく地名である。1)風の内容・特性を表現している例として、清風山(きよかぜやま)・風早(かぜはや)・八風山(はっぷぅさん)など、2)風がある場所において強い場合、その場所の名と連結される例として、大風渡沢(おおかぜとさわ)、風吹山(かぜふきやま)・風穴(かざあな)など、3)その風がある種の天気の前兆となっている場合の例として、風師山(かざしやま)・風頭(かざがしら)など、いろいろある。上記の1)の一つとして、風返峠・風越峠について、紹介したい。
 峠とは山を上って反対側へ下りる道の最も高いところである。別な表現をすれば、ある方向に延びる尾根が部分的に少し低くなっているところを、その方向とは直角に道が越えるところである。古い時代から人びとがここを越して経済的・文化的に交流をしてきた。日本ではこういう峠はたくさんあるが、高度はたいてい海抜数百m以下、普通は300―400mである。交通の便利を考えると、あまり高くないほうがよい。海抜が千数百m以上にもなるような峠は、例えば、北アルプスにある針の木峠のように、信濃へ塩を運ぶ特別の目的があったまれな例である。
 日本は風の国で、冬の季節風・夏の季節風・台風その他、さまざまの風がよく吹く。このような強い風は、たいていの場合、海抜数百mの峠を越す。特に、地形的には峠の両側にはほぼ直角に入る谷があるので、風は集まりながら峠を越す。したがって、峠の部分で風はさらに強くなる。風越峠(かぜこしとうげ)、風吹峠(かぜふきとうげ)、風腰峠(かぜこしとうげ)、風原峠(ふきわらとうげ)などの地名がたくさんあるのはこのためである。なお、“かぜ”は“かざ”と読む場合も多い。
 これに対し、全国的に数は少ないが、風返峠(かぜかえしとうげ)の地名がある。つまり、風は峠を越さないという地名で、筆者の知る限り茨城県の筑波山南東1ヶ所である。

(写真1)筑波山頂を背景にした「風返し峠」の道路標識。
 局地気象学的に起こりにくい現象が地名の数に反映しているのは、きわめておもしろい。経験によって地名がつけられている証拠であり、また、峠を越して生活する人びとの経験・認識がいかに正確かの証拠でもある。(写真1)は筑波山頂を背景にした「風返し峠」の道路標識である。秋のハイキングの途中、このようなことを楽しむのも、よいのではないだろうか。  

(写真2)水郷筑波国定公園「風返峠」の案内標識。
 (写真2)は、そのすぐ近くにある環境省が建てた「風返峠」の立派な案内である。国土地理院発行の地図にも「し」の字はないが、環境省も同じ主張らしい。“かぜ”か“かざ”か、はっきりしないし、“風返し峠”か“風返り峠”かも、やはり、はっきりしない。察するところ、現地の人びとは 「し」を主張したいのだろう。
 筑波山は詩歌の歴史が古く、最近でもたくさんの歌人・俳人が訪れる。(写真3)はその一つの記念の歌碑である。風返峠の雰囲気がよく伝わってくる。

(写真3)“つくば嶺の山肌せまる風返峠 木立も道も夕かげつつむ”


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