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連載エッセイ [25]
風を歩く
吉野正敏

 
風と共に来たりぬ―北京の黄砂
 
 先月、4月の16日夜から17日朝にかけて、北京は過去5年間で最大規模の砂塵あらしに見舞われた。一夜のうちに北京の都市域に降った砂塵の量は、数地点の平均で、20g/屬任△辰拭これに都市部の面積をかけると総計で約30万トンに達した計算になる。
 原因は15日・16日に中国と蒙古の国境付近に砂塵あらしが発生し、大気中に砂塵が舞い上がり、それが浮遊塵となり、上空を吹くシベリアからの風に乗って流されて来たものである。やや低い高度では、東経120度付近に発生したいわゆる“蒙古低気圧”の周りの気流に支配されて、16日23時に北京では5-6級の北風とともに黄砂の影響が出始めた。
 影響を受けた範囲は、新疆・寧夏・陝西・河北・北京までの10の省・自治区・直轄区の592の県(旗・市)で、面積の合計で161万平方キロメートルに及び、人数では合計約2億人に及ぶと言われる。今春はシベリアからの寒気の流入の回数が多く、勢力も強かったので、砂塵あらしの回数も多かった。(写真1)は自動車のフロントガラスに堆積した砂塵だが、われわれの感じでは“砂塵降った”というより“土がたまった”ようである。

(写真1)北京市内に駐車してあった自動車のフロントガラス。
 日本にもこのときの砂塵が飛んできた。砂塵あらしはもちろん観測されなかったが、黄砂として観測された。「風を歩く 21」で、黄砂は飛んで来るのか、浮かんでいるのか、降って来るのかと、紹介したが、このすべての現象を観測した。日本の気象庁によると、黄砂が4月18日、西日本を中心にして広い範囲、すなわち九州北部から本州の東北地方まで観測された。大分・松山・大阪・名古屋・東京・千葉・仙台など、全国で108ある観測地点のうち、62地点で観測された。東京都心では2000年4月14日以来6年ぶりで、視程7km(普通は20-30km)となった。千葉では1988年4月以来18年ぶりであった。
 では、今回の強い砂塵あらしの発生・砂塵の舞い上がり・砂塵の運ばれ方・砂塵の降り方などの特徴はどうか。まだ、詳しい研究結果はでていないが、現在、考えられているのは次のようである。2006年春、中国の北方大部分の地域では、気温偏差はプラスであった。内蒙古の中部・新疆の大部分は平年より1-2℃高温であった。そのため、冬に凍結していた土壌の融解が早かったので、地表面の土壌水分が早くから蒸発し、乾いていた。また、冬から春にかけて、北方地区の降水量は平年よりかなり少なかった。最近50年間の同じ期間で比較すると第2位の少雨であった。このような状態だったので、地表は乾燥し土壌は舞い上がりやすくなっていた。
 2006年2月以来、広い範囲で強い砂塵あらしが発生していた。4月16-17日の場合は北京ではすでに8回目の砂塵の強い影響であった。これはシベリアからの寒気の吹きだしの回数が多く、勢力が強かったためである。それに加えて、“蒙古低気圧”の中心から南西方向にのびる寒冷前線が活発化した。これらの地域には沙漠・ゴビが拡がり、174万平方キロメートルの面積が沙漠化している。これによって砂塵の源が豊富となり、強い砂塵あらしが頻々と発生したと考えられる。

(写真2)市内高層ビルもぼんやりとかすんでしまった。
 では、降ってきた砂塵、黄砂の影響はどうであったか。日本では、ひどいと言っても、東京タワーや高層ビルがかすんでみえた写真をのせて、新聞は黄砂が来たことを報道し、“屋外に干した洗濯物が砂で汚れた”とか、“自動車の洗車が大変だった”とか、“農作物の葉が汚れた”などの記事だけで、それ以上の被害や影響の記事はなかった。しかし、中国では市民生活に大きな影響を与えたので、大変な報道ぶりであった。それをまとめると、以下のとうりで、日本でも参考になろう。


(1)小学校
a) 校庭で毎朝行う「旗を揚げる式」を室内でテレビなどによって行った。
b) 体育などの屋外活動を屋内に変更した。
c) 健康管理に特に留意した。
d) 環境保護の重要性、環境破壊の危険、揚砂天気の解説を授業でとりあげた。

(2)疾患
a) 中日友好医院の呼吸器内科では通常の約2倍、1日に160人、来院した。大部分が喘息併発であった。慢性の肺疾患は重くなった。
b) 朝陽医院のある呼吸器専門の教授は、毎日約10人の通院患者を診るが、この日は喘息などの患者が25人に増えた。
c) 海淀医院では、17日午前20名の喘息・鼻炎患者を診た。これは前年(2005年)の同期より約15%多かった。
d) 北京博愛医院の眼科では、急性結膜炎患者は平常より25%多かった。
e) 上記をまとめると、呼吸器と眼・鼻関連の疾患が激増する。これは、空気中の砂塵量の増加が原因と考えられる。

(3)道路の砂塵除去
a) 17日朝までに、路面に砂塵がひどく堆積した。ビルの前や、広場などでは箒ではくやりかた(写真3)しかないが、道路は自動車で除去しなければならない。

(写真3)ビル街やビル周辺の砂塵除去は箒ではほとんど不可能。
b) 道路の砂塵除去には、風で吹き飛ばす方法ではだめで、唯一の有効なのは、道路の砂塵を高圧の水流で直接下水道に流し込む方法であった。これによって、自動車の走行によって巻き上がる砂塵は明らかに減少した。
c) 上記のbは、下水道の砂の処理能力に関係すると思われ、今後の問題であろう。また、自動車交通量が急増している中国で、朝のラッシュ時までに多量の砂塵を除去しなければならないという新しい課題である。
d) 北京北清机掃集団公司によると、路面を水洗するための水量は多い。公司の統計によれば17日16時、北京都市部、二環、三環、長安街などの主要道路の水洗のため、延べ173台が作業し、総計1,580トンの水を使った。
e) この値は単純計算では1台約9トンになる。これは道路400mに対し平均1トンの水が必要となることになり、地下水・河川水のどちらを使うにせよ莫大な量になる。
f) 上記のcにふれたが、北京における自動車交通量の近年の急激な増加の結果と思われる一つの新聞報道記事があった。「市政管委会は4月18日、各作業単位に、交通のピークをさけて作業すること、午前・午後に1回ずつ作業すること、重要地区周辺と主要道路は水圧で砂塵を除く作業を2-3回行い16時前までに終わらせること、などを通達した。」という。これを読んで、日本の積雪地帯の都市の除雪作業のような経験がなく、北京の道路の砂塵除去対策が、新しい課題であることを痛感した。

(写真4)駐車場・道路・庭、いたるところが土色となった。
(以上、写真はいずれも、王亜非博士の提供による。)

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