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連載エッセイ [24]
風を歩く
吉野正敏

 
レンズ雲
 
 動物や植物の分類学は、昨今、あまりはやらないようであるが、気象学でも、雲の分類学など、まったく忘れられてしまった分野である。最近の気象学の教科書や辞典類には、雲の分類そのものさえ書いてないものがある。しかし、いわし雲、さば雲、絹雲(けんうん、巻雲)など、さらには、雨雲(あまぐも)、雷雲(らいうん、かみなりぐも)など、一般の人びとが空を見上げて目につく、生活にもっとも密着した天気現象が雲である。
 雲には、動植物と同じく、分類された結果が万国共通でわかるようにラテン語名がついている。雲が浮かんでいる高さ、その形状で分類されている。レンズ雲は、形としては積雲に分類され、そのレンズ状になった亜種とみなされる。正確にいうと、高いほうから、レンズ状巻積雲(5,000−6,000m)、レンズ状高積雲(1,500−2,000m)、レンズ状層積雲 (500−600m)がある。レンズ状になるのはその高さの風が特に強く、波うっているためである。日本でよくみられるのは、上空の西風ジェット気流でできるレンズ状巻積雲と、山脈の風下側に生じる風下波動でできるレンズ状高積雲である。後者は「風を歩く[19]」の(図2)山越気流の模式図に示したJ、Kで、それを参照していただきたい。
 東アジアは西風ジェット気流が北半球の中では比較的強いところなので、日本上空は上記のレンズ状巻積雲が発生しやすい。しかし、日本ではさらに後者のレンズ状高積雲(Alto-cumulus lenticularis、アルトキューミュラス レンティキュラリス)の発生頻度が多い。その理由は、日本の周りは海で、山脈や孤立峰などの地形の影響で風下波動が発生しやすいためである。

(写真1)岩手山の風下にできたレンズ雲。
1995年5月13日、吉野撮影
 (写真1)は岩手山(山頂高度は2,038m)の風下波動によるレンズ状高積雲(俗称、レンズ雲)で、1995年5月13日に撮影した。二つある大きなレンズ雲の左のほうが、ちょうど岩手山頂付近にかかっているので、レンズ雲の高度はほぼ2,000mと推定できる。
(写真2)上空で西風が吹いているとき、奥羽山脈の風下にできたレンズ雲と山脈にかかる風枕(フェーン壁)。2005年11月19日12時30分
雫石にて吉野撮影

(上)風下波動によるレンズ雲。上空の西風は画面右から左へ吹いている。

(下)遠景の白いのが風枕。西風は画面奥から手前に吹く。画面上部の黒い雲はハイドローリックジャンプによる低い雲。
 (写真2)(上)は上空で西風が吹いているとき、本州の東北地方で南北に走る脊梁山脈(奥羽山脈)の風下側(東側)にできたレンズ雲である。撮影したのは2005年11月19日12時30分である。「風を歩く [19]」の(図2)の模式図のH、Kに相当する。(写真2)(下)はそのとき(12時30分)、奥羽山脈方向(西方向)を向いて撮影したもので、風枕が明瞭である。ほとんど同じ写真を「風を歩く[19]」の(写真1)(同日11時に撮影)に示してある。すなわち、この1時間30分のあいだの上空の西風の状態はほとんど変化がなかったので、このように山脈を越す西風による風枕、風下波動は定常的に発達し、立派なレンズ雲が見られたのだと思う。  グライダーが滞空時間をのばし、遠くにまで滑空するためには、風下波動の波頭へ向かう上昇気流のところで螺旋状に高くあがり、滑空しながら次の波頭をみつけてまた螺旋状に上昇する。こうして遠くにまで滑空してゆく。波頭の指標はレンズ雲しかないから、これをうまく見つけられるかどうかが、長時間・長距離の滑空に成功するかしないかの鍵である。最近はグライダーの性能もよくなったし、スポーツとして盛んになった。
 そのもとは、第2次大戦中、ヨーロッパで空挺隊(グライダー部隊)による作戦が重要視されたことによる。気象学の分野で、風下波動の研究が要求され、レンズ雲の発生条件として、地形との関係、上層の気流や大気の温度の垂直分布などとの関係が明らかにされた。これは1940年代のことである。1950年代にも研究結果が学会誌をにぎわせた。
 一見、レンズ雲など、浮世離れした空のロマンのようではあるが、厳しい人間社会と関係しているのである。
 

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