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連載エッセイ [5]
風を歩く
吉野正敏

 
台風
 
 古くは、「風」の字の右側の手をのばし、そこへ「台」の文字をのせ、「タイ」と読んだ。東南アジア・東アジアにおける熱帯低気圧で、北半球の地球上でこれに対応するのは北アメリカのハリケーン、南アジアのサイクローンである。
 中国では、古くは「風」の字の右側の手を伸ばし、そこへ「具」または「貝」の字を載せ、「グ」と読んだ。林謙光の「台湾紀略」には、土地の人は2月から4月に発生する暴風を「グ」と言い、上に述べた文字を書き、5月から8月にかけて発生する暴風を「タイ」と呼び上に述べた文字を書いたと、諸橋轍次の大漢和辞典(2000)にある。もし、これが正しいとすれば、「グ」は温帯低気圧、「タイ」は熱帯低気圧と、古い時代の台湾の人びとは区別していたといえる。日本では江戸時代、滝沢馬琴が使いわけたし、明治・大正・昭和になって、気象学者の岡田武松や荒川秀俊など、たくさんの人が「台風」の文字の内容・意味などを論考した。台風(たいふう)とは、大風(おおかぜ、だいふう)からきたと言う簡単な考えもある。
 最近の気象学では熱帯低気圧の強いものを台風と呼ぶ。日本の分類では中心の最大風速が17.2m/秒以上の熱帯低気圧を台風とするが、世界気象機関(WMO)がきめた“タイフーン(typhoon)、ハリケーン(hurricane)”とは、中心付近の最大風速が32.7m/秒以上のものを言う。
 台風は赤道付近ではなく、少し高緯度側にずれた北緯5度から20度以内の熱帯で発生する。台風が発生するエネルギーは水蒸気の凝結熱である。ひとつひとつの積雲を生じている対流が、台風として組織されるためには、地球が回転しているために生じるコリオリーの力と地表(海面)の摩擦が必要である。発生のきっかけには低緯度の上空を吹いている偏東風(東から西に向かう風)が波を打つなどの現象や、中緯度の偏西風がやはり波うつなどがかかわる。
 特に、海面水温が高いか低いかは、上述のエネルギーの供給量に関係するので大切である。エル・ニーニョ年とラ・ニーニャ年では太平洋の水温分布は異なるので、台風の発生数や、経路にも違いがでてくる。エル・ニーニョ年には北緯12-17ど付近に発生して、初め西北西から北西方向に進んでいた台風が北緯20度付近で北ないし北東に向きを変えて日本の方にやってくる場合が多い。一方、ラ・ニーニャ年には北緯10-15度付近に発生して、西ないし西北西に向かい、そのまま南シナ海に入る経路をとる台風が多い。
 2004年(平成16年)、日本に上陸した台風は10個で、長年の平均では2.6個だから、約4倍の数であった。また、その経路が九州・四国・本州・北海道を縦断するような場合が多かった。これは、北太平洋の水温分布と北半球の中緯度高気圧の形状がこのような結果をもたらしたためと考えられている。
 東南アジア・東アジアでは熱帯低気圧が海上交通に昔から大きな影響をもたらしていた。古くは日本と中国の間に大きな役割を果たした遣唐使の往来に関係した。インドネシアのジャワ島のほぼ中央、ジョクジャカルタの近くにあるボロブドールの遺跡(8世紀末から9世紀中ごろまで約75年かけて立てられた)には、回廊の両側壁面に浮彫図を彫りだして、仏の教えを示してある。その中で若い男子に説いている物語がある。その詳しい内容は省略するが、青年(ミッタヴィンダカ)の母親が海は危険だから行くなと忠告するにもかかわらず、金を得るために商品を船に載せて青年は海へ出ようとする。そのシーンは(写真1)に見るように、海面はまだ穏やかであるが強風はひどい。島々をめぐっているうちに海面は波たち嵐は強さを増し、(写真2)のように難破する。それぞれ仏教の教えの1場面であるが、当時の熱帯低気圧による被害の知識をよく捉えている。

(写真1)インドネシアのボロブドールの遺跡にある
熱帯低気圧の影響下の海に乗り出す船の石彫。

(写真2)同じく、難破しつつある船の石彫。
いずれも、吉野撮影
(写真1)ではマストは2本、あとの1本はすでに折れて海面に落ちようとしているが人びとはまだ修復可能と考えているようである。それぞれ帆を風向きに応じて動かす人、舵を取る人、そして穏やかな水面が刻まれている。しかし、(写真2)では強風により、マストは1本折れ、残りの1本を抱きかかえる人、海に落ちようとする人、口を開いて待ち構えている大きな魚、波立つ水面、波間を漂う少し小さな魚、などを読み取れる。時折見舞われる熱帯低気圧による風波の強さ、東南アジア海域の航海の危険度、海洋生態系などの当時の知識を推定できる貴重な石彫である。

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