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連載エッセイ [4]
風を歩く
吉野正敏

 
海風
 
 “うみかぜ”とも、“かいふう”とも言う。海風の定義もまたいろいろある。私は「日中、晴れて穏やかな天気のとき、海岸地帯で海の方から吹いてくる風」としたい。海の方から吹いていても、日没とともに止まず、近くにある台風や温帯低気圧にともなう風がたまたまその場所では海の方からだったとしても、ここで言う海風には含めない。
 日中、特に午後もっとも発達するという理由は、内陸の地表面の温度が太陽からの熱をもらって午後に高くなるが、海面とのその温度差が午後最も大きくなるからである。内陸部には上昇気流ができて、その後、海の方に向きを変える。これを上空の反対海風と呼ぶ。海上では下降気流があり、下層の海風につながる。気象学ではこれを海風循環と呼ぶ。別の言い方をすれば、このような循環系をもっているのが、海風である。
 かって、海風が関東平野では奥の方まで侵入し福島県の郡山や長野県の軽井澤まで入るという人がいたが、これは、私の定義では海風でない。上空に反対海風がなく、海風循環系を形作っていないからである。この風系は夏の南からの季節風が関東平野をさかのぼったものである。循環系の内陸の限界は海岸から普通30-40km、発達の程度にもよるが、10-20kmが典型的と言えようか。夏、関東平野では、埼玉県熊谷付近から群馬県南東部にかけて非常な高温になるのは、この海風循環系の限界外だからであろう。
 地上付近の海風の層の厚さは、熱帯では高く温帯では低い。高緯度では、夏は昼間の時間が長いので、温帯とあまり差がなくむしろ地域差のほうが大きい。日本の例では、海風の層の厚さは数百メートル、発達した場合でも約1,000メートルである。海風は日本では、強くても毎秒数mで、ふつうは毎秒3−4mである。夏、小笠原高気圧に覆われるとき、春・秋、移動性高気圧に覆われるときに発達する。海風の対である陸風については次回以降に書きたい。
 海風は日本の海岸では午前9時ころから吹き始める。循環系は午後大きく、強くなり、午後4時ころから弱く小さくなり始め、日没後、地上と海上の気温がほとんど同じになるころまで吹く。海風が終わって陸風が吹き始めるまでは風がやみ、これを夕凪と言う。
 海風は、海水浴場などでは、旗やのぼりがはためくのでわかる。よしず張りの休憩所で、海風に吹かれて午睡するなど、最高のぜいたくである。ところが、海風は海岸線の形、海岸平野の大きさ、周辺の山地の形状にもよるが、海風循環系の限界、換言すれば、海風が侵入する限界の中と外で、いろいろな問題が起こる。
 日本でその例が特に多いが、海岸に汚染した空気をはきだす工業地帯があって、その内陸側に都市地域が広がっている場合である。都市のヒートアイランドが海風によって緩和されるのはよいが、きたない空気が海風によって都市域に運ばれるなど、困る場合もある。かつて、大気汚染対策が進んでいなかった時代、海風が汚染した空気を運びながら侵入するので、「海風前線」とか、「スモッグ前線」とか呼ばれた。これは、アメリカのカリフォルニアでの40-50年前のことである。その時代、東京でも海風前線の内陸側から、東京湾の方をみると、海風前線を薄黒いカーテンのように“確認する”ことができた。スモッグ前線は、世界中をみれば、いまでも生きている。
熱帯アジアでは南西季節風下で、海風が毎日発達する。
午後には強い夕立をともなう。集落内の道はすぐに水に浸かるが、またすぐに水が引く。
スリランカ北端のジャフナ(Jaffna)にて。(1981年7月22日撮影)
 上に述べた夕凪は瀬戸内海沿岸でひどい。讃岐の夕凪は特に有名で、温度が高い上に、湿度が高く、風がないので、耐え難い数時間となる。夕涼み、ゆかた、打ち水など、温帯で海岸線に富む島国、日本に特有の生活習慣は、海風と陸風の交代時間にかかわる特徴ある文化と言うべきであろう。
 熱帯では海風のインパクトはもっと強い。海風は涼しさと夕立の雨をもって、毎日、午後必ずやってきて人びとを健康にするので、“ドクター”(お医者さん)と呼ばれる。農村部では、夕立で水があふれる。写真はスリランカの北端、ジャフナ(Jaffna)の水に浸かった集落内の道。しかし、すぐに、水は引いて人びとは健康な生活にもどる。

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