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片頭痛ってどんな病気?症状は?

日常生活に支障をきたす頭痛が繰り返し起こります

片頭痛とは
片頭痛は、脳の血管の拡張と血管の周りの炎症により発症する頭痛で、代表的な慢性頭痛の1つです。痛みや吐き気のために、仕事や家事などの日常生活に支障をきたす頭痛を繰り返していれば、片頭痛の疑いがあります。
片頭痛の特徴
普段はなんともないのに頭痛が起こるとつらく、動くとさらに痛みが増して、ひどいときには吐き気を伴います。ズッキンズッキンと脈打つような痛みであることが多く、頭の片側が痛む人もいれば、両側が痛む人もいます。また光や音、臭いに敏感になります。片頭痛患者さんの10~20%の人では頭痛の前触れとして目の前にチカチカする光が見えたり、視野の半分がぼやけて見えなくなることがあります。日本人の約8%が片頭痛に悩まされているといわれ、男性よりも女性に多くみられます。
片頭痛診断
適切な治療を受けるためには、正しい診断が必要です。まずはご自身で片頭痛かどうかチェックしてみましょう。*このチェックはあくまでも目安としてお使いください。

片頭痛チェックはこちら

次のうち1つでもあてはまれば片頭痛の可能性があります。一度受診して医師の診断を受けましょう。

  1. 頭の片側または両側が、ズキンズキンと脈打つように激しく痛む
  2. 頭痛に伴って吐き気がしたり、実際に吐くこともある
  3. 動くと痛みが増す(動かないでじっとしていたい)
  4. 頭痛の最中に光が気になる(暗い部屋にいたい)
  5. 頭痛の最中に音が気になる(静かな場所にいたい)
  6. 頭痛の最中ににおいが気になる
  7. 月に1~2回から、多いときには週に2回ぐらいの割合で強い頭痛が起こる
  8. 仕事や家事などの日常生活に支障があり、ひどいときは寝込んでしまう
  9. 薬を飲まないと頭痛は4時間~3日間持続する
  10. 頭痛の前に、キラキラした光や稲妻のようなものが見え、5分以上続く

五十嵐先生の片頭痛チェック
~正しい診断が解決のカギ!~

ズキンズキンと片側が痛い…それだけが片頭痛ではありません!

頭痛にはどんな種類があるの?

頭痛は原因によって大きく一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます

頭痛にはいろいろな種類がありますが、痛みの原因によって、大きく「一次性頭痛(慢性機能性頭痛)」と「二次性頭痛(症候性頭痛)」の2つに分けられます。

1. 一次性頭痛
一次性頭痛とは原因がはっきりしないまま、何年にもわたって繰り返し起こる、いわゆる「頭痛持ちの頭痛」です。頭痛全体の約80%はこのタイプといわれており、代表的なものに「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」があります。これらは症状も原因も異なるので、対策や治療にあたってはどのタイプかを見極めることが大切です。
片頭痛
:  頭の片側または両側がズキンズキンと脈打つような強い痛みが時々起こる
緊張型頭痛
:  頭全体が締め付けられるような重い痛みが時々または毎日起こる
群発頭痛
:  片側の目の奥をえぐられるような激しい痛みが一定期間ほぼ毎日起こる
2. 二次性頭痛
二次性頭痛とは、何らかの病気の症状の一つとして起こる頭痛のことです。かぜや二日酔いなど日常的にみられる頭痛もあれば、脳の病気に伴う頭痛もあります。日常的にみられる頭痛は原因が解消されれば自然に治りますが、くも膜下出血や脳出血など、脳の病気に伴う頭痛は、今まで経験したことのないような痛みが突然あらわれることが多く、生命に危険が及ぶケースもあるので注意が必要です。
*薬物乱用頭痛*
薬物乱用頭痛とは、片頭痛(たまに緊張型頭痛)の人が、頭痛薬を長期間、頻回服用することで引き起こされる頭痛です。頭痛薬を毎週2~3日以上飲む状態が3ヶ月以上続いている人はかなり危険です。そのまま頭痛薬を飲み続けると悪化する一方ですので、早めに頭痛の専門医を受診しましょう。

薬物乱用頭痛の詳しい解説はこちら

あなたの頭痛、薬物乱用頭痛ではありませんか?

薬物乱用頭痛に陥る人のほとんどは、もともと片頭痛を持っています。

薬物乱用頭痛とは?
もし、あなたがここ3ヶ月以上にわたり、毎月15日以上頭痛に悩まされ、痛み止めの薬を1ヶ月に10日以上飲んでいれば、薬物乱用頭痛の可能性があります。
薬物乱用頭痛は、市販の痛み止めはもちろんのこと、医師から処方されるエルゴタミン、トリプタン、鎮痛薬など、どの薬でも起こりえます。
薬物乱用頭痛はどのような人に起こるの?
薬物乱用頭痛に陥る人のほとんどは、もともと片頭痛を持っている人です。
就職、コンピューター業務、結婚、出産、精神的ストレスなど、何らかのきっかけで片頭痛の回数が増えると、痛みがひどくなるのが怖いためについ早めに痛み止めを飲み、気がつくと1週間に2-3日以上薬を飲んでいた、という人が圧倒的に多く見られます。
朝起きるといつも頭痛がするため、また痛み止めを飲んでしまう、というように堂々巡りになり、ついにはほとんど毎日頭痛がして、そのたびに痛み止めを飲むようになります。
どうして薬物乱用頭痛になるの?
不思議なことに、間接リウマチの患者さんが毎日痛み止めを飲んでも、薬物乱用頭痛にはならないため、薬物乱用頭痛になる人は何らかの素因があるのではないか、と言われています。片頭痛のような素因のある人が、痛み止めを頻回に飲むことにより、脳の痛みを調整する機構がきちんと働かなくなり、痛みに対してより敏感に反応してしまうのではないか、と考えられています。
治療はどうするの?
自分でなんとかするのは難しいので、ぜひ頭痛に詳しい医師のいる病院やクリニックなどを受診してください。
原因となった薬を中止することで、約70%の患者さんはよくなります。はじめの1週間は頭痛のぶり返しがあり、つらい思いをなさる方が多いのですが、それを過ぎると多くの人で頭痛を感じる日が少なくなります。頭痛専門医は、ぶり返しの頭痛へ対処する薬と、頭痛を予防する薬を処方します。その他、日常生活上の注意などを説明します。頭痛の記録をつけていただきますが、記録をつけることにより、どれくらいよくなったか、痛み止めを使いすぎていないかなど、ご自身でも確認することができ、薬物乱用を繰り返さないようになります。

片頭痛の原因は?

片頭痛の原因は、脳の血管の拡張と血管の周りの炎症です

片頭痛の原因はまだはっきりとわかっていませんが、血液中の血小板から分泌されるセロトニンという神経伝達物質や、脳の血管の周囲に存在する三叉神経の関与が推測されています。何らかの原因で頭蓋内の血管が拡がり、拡がった血管が直接近くの感覚神経を刺激するとともに、血管の周囲に炎症が広がり、痛みが起こると考えられています。

セロトニン説
ストレスなどが誘因となって、血液成分である血小板から血管を収縮させる作用をもつセロトニンという化学物質が大量に放出され、脳の血管が収縮します。このとき、キラキラした光が見えるなどの前兆(閃輝暗点)を感じる人がいます。
次に、時間の経過とともにセロトニンが分解・排泄されて急激に減少すると、一度収縮した血管が逆に拡張します。すると、拡張した血管から血液の成分がしみ出して、血管の周囲に炎症が起こります。この刺激が血管の周りをとりまく三叉神経を通って、脳で痛みとして認識されます。
三叉神経血管説
最近有力視されているものに「三叉神経血管説」があります。脳から伝えられた何らかの刺激は、血管周囲にある三叉神経を刺激し、三叉神経の終末から、血管を拡張させる作用をもつさまざまな神経伝達物質が分泌されます。その結果、血管は拡がり、また、血管の周りに炎症が起こります。この拡がった血管と炎症が感覚神経を刺激し、痛みが起こります。

片頭痛発作の経過

片頭痛は「シンフォニー」にたとえられます

片頭痛には一連のパターンがあります。典型的な例は、予兆期、前兆期、頭痛期、解決期、回復期と続き、「片頭痛はシンフォニーである」と表現されることがあります。

  1. 1. 予兆期
    なんとなく頭が重い、首や肩がこる、あくびが出る、手足がむくむ、いらいらする、妙におなかがすいて甘いものを食べたくなる、などの症状が出てきます。
  2. 2. 前兆期
    片頭痛持ちの10~20%の人が、頭痛が起こる前ぶれ症状を訴えます。その95%以上は閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる、目の前にキラキラ光る点やギザギザが見えるという視覚の異常です。
  3. 3. 頭痛期
    頭がズキンズキン、ガンガンと強く痛み、吐き気がしたり、実際に吐いたりする場合もあります。
  4. 4. 解決期
    吐いてしまうと楽になり、ぐっすり眠ってしまいます。眠って起きると結構すっきりしています。
  5. 5. 回復期
    ひどい頭痛が去ったあとの翌日など、頭をふったり下を向いたり咳をするとまだ少しズキッとした痛みが残っています。
    このような頭痛を繰り返していれば、片頭痛と考えられます。
片頭痛発作の経過
片頭痛発作の経過

片頭痛の患者はどれくらい?
~性・年齢別比較~

片頭痛は女性が男性の3.6倍も!

慢性頭痛の患者数は全国で約3000万人(成人)にも達し、日本人の40%は慢性頭痛に悩んでいるというデータもあります。そのうち、片頭痛でお悩みの方は全国に840万人(約3%)。特に片頭痛は女性に多い疾患で、働き盛りの20代~40代に多いことが知られており、30代女性の5人に1人は片頭痛とも言われています。性別・年齢別の有病率調査では、20代女性で同年代男性の約2倍、30代では女性が男性の約3倍、40代では約7倍との研究結果が報告されています。

片頭痛の有病率(性別・年齢別)
片頭痛の有病率(性別・年齢別)

片頭痛の誘因は?

誘発因子は人によって様々です

片頭痛の痛みが起こるきっかけは、ストレスや月経、空腹、人ごみや騒音、光、天候、睡眠、肩こりなど、人によって様々です。まずは自分の片頭痛の誘因が何であるかを見極めて、それを避ける工夫をすることが大切です。

片頭痛の主な誘因

ストレス過多やストレスからの解放
ストレスの最中には緊張により収縮していた血管が、リラックスすることで急激に拡がり発症するとの考えもあります。
月経、妊娠、出産などによる女性ホルモンの分泌バランスの変化
生理2日~開始後3日目までによく起こります。一方、妊娠中(特に後半)は70%以上の人で、片頭痛が改善します。
空腹
ダイエット中や、朝食抜きにより発症することがあります。
人込み・騒音・光・におい
外出すると、人ごみ、騒音、光、香水のにおいなどによって頭痛が誘発されることがあります。
天候の変化
気温の上昇や気圧の低下により頭痛が誘発される場合があります。
不規則な睡眠
寝すぎ、寝不足も片頭痛の誘因となります。
不自然な姿勢
不自然な姿勢による頸や肩のこりも片頭痛の誘因になります。
片頭痛の誘因(%)
片頭痛の誘因(%)
N=288(国際頭痛学会の診断基準に合致した片頭痛、但し月経は女性片頭痛患者n=256で集計)
竹島多賀夫、五十嵐久佳:診断と治療92(6):1075-1080,2004

片頭痛と季節・気象との関係

片頭痛は季節の変わり目などの温度変化や低気圧などの気象条件によって起こります

片頭痛と季節
なぜかはまだわかっていませんが、雨の降りやすい季節や季節の変わり目に片頭痛が多くなる人がいます。また、片頭痛は暑さや強い光でも誘発されやすいため、気温が上昇し、太陽が照りつけるようになる夏に向かっては注意が必要です。その他、冷房している室内で、冷気が直接頭に当たる場合などにも頭痛が誘発される場合があります。また、春は花粉症をはじめ、五月病に代表されるような社会的ストレスにより、片頭痛の症状が出やすいと考えられています。
片頭痛と気象
片頭痛患者さんの発症記録と気象条件との統計解析結果によると、気温が上昇した後に湿度が高くなったとき、また、短時間で気圧が大きく低下したときに痛みを訴える人数が多くなる傾向があり、低気圧の通過に伴う天気のくずれに対応して発症するものと考えられます。

片頭痛の予防対策

大切なのは「誘因を避けること」、「誘因をつくらないこと」

片頭痛の予防は、その誘因を避けることが第一です。片頭痛の症状が悪化する誘因には、光、騒音、においなどの環境因子や、ストレス、寝すぎ・寝不足など様々なものがあります。まずは、自分の片頭痛の誘因が何であるかを見極めて、それを避ける工夫をしましょう。また、生活習慣の乱れはストレスなどの誘因を引き起こすため、適切な睡眠時間をとり、毎日3食きちんと食べ、お酒の飲みすぎやタバコを控えるなど、生活習慣を見直すことも大切です。

日常生活における対策
光や騒音などの環境因子によって頭痛が起こる場合、日差しが強いところではサングラスをかける、混雑時を避けて外出するというように、誘因となる刺激をできるだけ回避するようにしましょう。また、片頭痛は、ストレスや過労によっても起こりやすくなります。適切な生活習慣を心がけるのはもちろん、日頃から運動などで気分転換をはかるなど、自分なりのストレスのコントロール方法を見つけましょう。
食生活における対策
アルコールやチョコレートで片頭痛が誘発されることもありますが、どの食品で片頭痛が誘発されるかは人それぞれです。ご自分で、「これを食べると頭痛が起こる」という心当たりがあれば、その食品を避けてみましょう。一方、片頭痛持ちはマグネシウムが不足しているという報告があり、マグネシウムやビタミンB2 を一定量摂取すると片頭痛予防に効果がある、という報告もあります。
<マグネシウムを多く含む食品>
豆腐、納豆、海苔、ひじき、玄米、アーモンド、らっかせいなど
<ビタミンB2を多く含む食品>
玄米、納豆、うなぎ、豚肉、レバー、牛乳、チーズ、ごま、ほうれん草など
その他、片頭痛持ちの人は、貧血になると頭痛が増えるため、鉄分も重要な栄養素となります。また、極端なダイエットや朝食抜きなども頭痛を誘発するため、日頃の食生活の見直しが大切です。
片頭痛が起こってしまったら・・・?
片頭痛が起こってしまったときには、できれば仕事を中断し、光や音の刺激を避けて、暗い静かな場所で横になって休みましょう。また、痛む部分を冷たいタオルや氷枕などで冷やすようにすると、痛みがやわらぎます。痛み止めの薬を使う場合は、がまんしないで早めに飲むのがコツですが、飲みすぎ(1週間に2日以上)にならないよう注意が必要です。

片頭痛予報について

毎日チェック!予報と対策を正しく理解!

片頭痛の症状が悪化する誘因には、ストレス、空腹、寝すぎ・寝不足、特定の食べ物、アルコール、月経、光、騒音、タバコや香水の臭いなど、人によって様々なものがあり、温度や湿度などの気象条件も発症に関連していることが報告されています。
本予報では、片頭痛の原因の一つであると言われている気象条件と、片頭痛患者さんの片頭痛発症記録との統計解析結果を基に、予報日において、気象の影響で症状が起きる片頭痛患者さんの多少を3つのランクに分けて予測しています。
予測計算に用いる気象要素には、気温、気圧、湿度、降水量などがあります。
具体的な気象条件としては、気温が上昇した後、湿度が高くなったとき、また、低気圧の通過に伴い天気がくずれたときに、痛みを訴える人数が多くなる傾向があるようです。

片頭痛予報凡例

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スーパー警戒
片頭痛患者さんの中で症状が起きる方が非常に多くなる気象条件です。外出の際はアスピリン等のお薬の準備をしっかりしておきましょう。また、頭痛が起こってしまったら我慢しないで早めに服用しましょう。前兆や予兆が現れた時点での服用も効果的です。
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警戒
片頭痛患者さんの中で症状が起きる方が多くなる気象条件です。まぶしい光や騒音などの環境因子によって頭痛が起こる場合は、サングラスをかける、人混みをさけるなど、その誘因をできるだけ避けるようにしましょう。
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注意
片頭痛患者さんの中で症状が起きる方がやや多い気象条件です。普段から運動などで気分転換をはかるなど、ストレスを上手にコントロールしましょう。また、適切な睡眠時間をとり、毎日3食きちんと食べ、お酒の飲みすぎやタバコを控えるなど、生活習慣を見直すことも大切です。
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ほぼ安全
片頭痛患者さんの中で症状が起きる方が少ない気象条件ですが油断は禁物です。日頃から頭痛の記録をつけるなどして発作の誘因を把握するように努めましょう。