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連載エッセイ [19]
健康天気ことわざ
福岡義隆

 

 

『あかぎれ大将にひび大将』

 

 

 

 長野では「あかぎれ大将にひび大将、ずくない」という。「ずくない」というのは「だらしない」という意味で、あかぎれ(皸)やひび(皹・罅)をつくっているのは生活がだらしなくきたないからだと揶揄嘲弄したものであるようだ。特に冬季は寒さのために血液の循環が悪くなりやすく、脂を出す皮脂腺の活動がにぶくなる。そのうえ、冬は空気が乾燥しているので皮膚の水分が奪われやすく、表皮(皮膚表層の上皮組織)を形成しているケラチン(硬蛋白質)が破壊されてあかぎれやひびができやすくなるとされている。ケラチンの多い角質層や関節など、よく動かす部分ほど酷くなるようである。寒さや乾燥という気象条件に加え生活環境が良くないと酷くなる、すなわち皮膚がアカ(垢)で汚れると、その垢のために脂の分泌が悪くなり皮膚の脂や汗が吸い取られ、ますますあかぎれやひびができていくのである。皸のひどい時は、真皮とか皮下にまで達して出血までする。ひびは手の甲などに網目のように割れ目ができるもので、いつの時代でも寒い季節に水を扱う労働者に見られる。かっては井戸や川原で洗濯する女性にひびやあかぎれができたものであるが、電気洗濯機とか暖房装置の完備した現在ではほとんど見られなくなった。

  戦後の貧しい生活を強いられたころは、今ほどの温暖化以前には皸も罅も多かったが、衛生管理が良くなり気候も温暖になりあかぎれやひびは稀になった。

 しかし垢は必ずしも皮膚に悪いともいえないようだ。『垢も身のうち』という諺もあるくらいである。すなわち、ある程度の垢は皮膚を保護したり保温という役目も果たしているという。あまりごしごしとボディシャンプーなどで洗いすぎると、皮膚を弱くしたり時には傷つけやすくもなる。

  「ひび」割れにも似たシワも、皮下の水分貯留量の減少によってできる。加齢とともにシワ(皺)が増えるのは皮下水分の減少に加えて弾力繊維減により結合織が増えるからのようである。さらに紫外線を余計に浴びたり、栄養不良によってもシワは増える。現今の飽食の時代には栄養不良因は少ないが、農業や漁業あるいは建設業者のような屋外労働者にはシワが多くなるばかりか、ひび割れも見られる。笑い過ぎるとシワが多くなるというのは間違いのようで、むしろ内臓の働きが良くなって新陳代謝がよく、かえって張りのあるつやつやした肌を保つのに笑いは効果があるとされる。昔から「笑う門には福来る」と言われる。この福の意味には、良く笑うことが健康で若返るということも言っているのであり、シワ防止にもなっているようである。老け防止にも笑いは効果あるようだ。インドには「笑いヨガ」もあるくらいである。こんな川柳がある。

 

「泣きなさい笑いなさいと老け防止」   泉加

 

 なお、気象条件と皮膚との関係については生気象学的研究されている。藤田友香((株)ライフビジネスウェザー)の研究によると、自然環境下の実験から、年間の水分量変化に最も影響を与えているのは気温と湿度であり、空気の乾燥した日が続くほど角層水分量が少なくなることが分かった。特に寒候期の降温時において顕著であった。化粧をしないほど、低温乾燥という気象条件の影響を受けやすいことも明らかにされ、肌荒れ予報への気象要素として気温と湿度が必須であることも確かめられた。

 皮膚表層での水収支と油脂分収支のモデルを示したのが図1と図2である。角層内の水分は、図1に示すように、主にスキンケア等の保湿や汗腺からの汗によって増加する。また、角層を通して行われる皮膚面からの不感蒸泄によって減少する。内側からの供給は、血流(血行)によって左右されるため、汗をかかず血行が悪くなる低温の冬季では乾燥を引き起こしやすい。皮膚面からの不感蒸泄と発汗による水分の蒸発の熱交換(蒸発)の量は皮膚の温度における飽和水蒸気圧と環境空気の水蒸気分圧との差に比例する。一方、蒸発量を抑制する効果がある皮脂量は、皮脂腺から皮膚表面に分泌される。皮脂は油分であるために蒸発抑制効果があり、皮脂の分泌が少ない場合はクリーム等の油分を塗布することで補う。これらの油分は、洗顔・あぶらとり紙等によって容易に脱脂することがで、また物と接触することでも減少する。油分の収支は図2に示すとおりであるが、このような概念を理解しておくと気象による肌荒れ予報が理解しやすくなるものと思う。

 

図1 皮膚表層での水収支モデル (藤田、2008)

 

図2 皮膚表層での油脂分収支モデル (藤田、2008)

 

文献:

朝日新聞科学部 『ことわざ医学事典』 朝日文庫

西谷裕子編 『暮らしの健康ことわざ辞典』 東京堂出版

有吉賢二 『健康のことわざおもしろ読本』 青年書館

藤田友香・山本亨・田村照子・福岡義隆 「顔面の皮膚の水分量に及ぼす気象要素の影響」

                                   日本生気象学会誌、45(1)、21−27、2008

 



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