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連載エッセイ [24]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
豪雪 ― 対応と対策
問題点

 2014年は豪雪の当り年であった。2月には8日と14日にまれに見る豪雪に見舞われた。サバイバルには非常に大きな問題なので、この連続エッセイ[3][4][5]で詳しく述べた。地球温暖化の時代なのになぜこのような豪雪になるのか、いろいろ説明されている。偏西風の蛇行、それにともなう寒気の南下、海面水温の上昇、台風に伴う低緯度からの湿潤暖気の北上など、いずれも確かに原因である。では、どうしてそのような現象が際立った異常な状態をもたらすほど発達するのか。説明はあまりされていない。
 例えば、『高熱が出たので、お医者様に言ったらば、“原因は風邪です”と診断された。胃腸の病気や肺炎などが原因でないとわかった』という話。お医者様の診断で納得し、安心してはいけないと私は思う。風邪が原因ならば、問題は『どうして風邪をひいたか』であろう。これと同じように、上記の諸原因の異常がどうして起こったかが問題なのである。
 しかも地球温暖化は全地球を平均しての話である。大陸の東部・西部によって異なるし高緯度地方・低緯度地方によっても異なる。乾燥地域・湿潤地域などの地域性もある。同じ傾向の影響でも、地域により影響の程度も違う。これらが現在すべてわかっているわけではない。そこが問題点なのである。特にサバイバルの立場からは、研究結果を待っている余裕はない。とにかく経験を頼りに対策を立てるよりほかない。

克雪対策

 山形市の平成24年度の計画書1)を参考に考えてみたい。この計画書は非常によくまとめられており、克雪という『長い冬の積雪期間を乗り越え、豪雪を克服しよう』という雪国の人びとの願望と意気込みが生んだ言葉にそって、まとめられている。
 この計画書は地方自治体、いわゆるお役所がまとめたのだから、まず、豪雪対策本部の設置基準や組織、道路の除雪、排雪場の計画などから始まる。次いで、地域や高齢者などへの支援として、町内会自治会による除雪・排雪作業への報奨金制度などについて触れる。ここで、対象になっているのは、高齢者の他、心身障害者、母子世帯、ボランティア、などである。援助・補助・支援などの具体的内容に市の立場からまとめている点で参考になる。除雪・排雪機械購入事業への助成など、あまり知られてないし、雪下ろし作業への補助、農道の除雪なども聞けば当然だが、一般にどれほど知られ生かされているか、疑問である。また、空き家の落雪対策も新しい課題となっている。
 サバイバルに関係する項目として、『市民意識の啓発』がまとめられている。少し紹介すると次のとおりである。
A:一般的な注意の喚起
(1) 路上駐車の禁止
(2) 道路区域内の障害物の撤去(植木鉢・看板・その他障害物など)
(3) 道路への排雪禁止
(4) 除雪後の後片付けへの相互協力
(5) 消火栓・防火水槽周辺の積極的な除雪協力
(6) 河川・水路・側溝への排雪禁止
(7) つららの早期除去
(8) 雪捨て場へのゴミの投棄禁止
B:雪降ろし作業の安全確保
(1) 屋根の雪のゆるみに注意
(2) 安全な服装での作業
(3) 命綱の使用(雪がないうちに命綱固定用アンカーの屋根への取り付け)
(4) はしごをしっかり固定
(5) 使いやすい除雪道具の使用
(6) 2人以上で作業
(7) 無理な作業はしない
(8) 足場をいつも注意
 以上、各項目はそれぞれ小さな事柄のように思えるかもしれないが、もし誤ると命を落とすことになる。特に、過疎化した農村の1軒家や、都市内でも1戸建ての築数十年を経た住宅に住む1人暮らしの高齢者にとって、サバイバルの厳しい限界条件になる。

豪雪対策で遅れている視点

 さてこのような豪雪の対応・対策で、一般的に遅れている点をまとめてみたい。如何にして豪雪を克服するか、少し考えてみた。
(1) 対策・対応をマニュアル化する場合、昼と夜を区別して2種類作成すること。例えば、執務時間帯の対応は項目別に担当する課の電話番号が詳しく書いてあっても、執務時間外には守衛室の代表電話1本しか書いてない。夜間に発生した緊急事態の時、代表電話1本で対応出来るとは思えない。
(2) 豪雪に関する予報・注意報・警報などの段階ごとに、道路交通の維持は日中と夜間で非常に異なる。国道・市町村道・私道・農道などで対応体制は異なるだろうが、その連繋(いわゆる横の連絡)はどうなっているのか。また、その地域の住民だけでなく、とるべき行動の指針・助言・指導などを他地域からの旅行者・運転者・労働者などに、短期間(数分のオーダー)から長期間(数日のオーダーまで)の別に示すべきである。
(3) 長距離バス・長距離トラック・遠隔地からの観光バスや個人乗用車などの運転者は、積雪時・降雪時の運転に経験が必ずしも豊かでない。運転時はもちろん豪雪で通行不可能になった場合の連絡・対策などを周知徹底させる必要がある。その仕組みを確立しなければならない。
(4) 天気予報・道路情報などは今日ITの発達により、運転者に伝え易い。しかし、極めて局地的な市町村道・閉鎖された国道からの迂回路指示などの情報伝達・路上における標識設置は地元警察の担当となろう。これも昼夜により対応は異なる。(異常気象時代のサバイバル、連続エッセイ[5]を参照されたい)
(5) 豪雪により道路上で運転不可能になり、立ち往生した自動車に給油、運転者に水・食料の支援などを行なわねばならない。放置車両の強制撤去・レッカー車の出動だけではすまされない。バス・鉄道(JR・私鉄)ならばだれがどこに依頼するのか。どのような内容の支援の依頼・手段があるのか。個人に対してはどうするのか。
(6) 通勤・通学時の交通機関の豪雪対策はまた異なった項目が必要である。特に朝と午後・夕方の対策を区別して計画しておく必要がある。中心になるのは誰か。教育委員会か・校長か・学級担任か・各家庭か。事業所では、誰なのか。これらは、日中と夜間で対応が異なる。

あとがき ― 2014年12月上旬の例で

 2014年12月3日、西高東低の冬型気圧配置となり、本州の東北地方の日本海側では積雪が急に深くなり、被害が出た。JRの仙台と山形を結ぶ仙山線では朝の7時40分頃、雪の重みで樹木が線路に倒れ停電となり、午前7時15分に山形を出発した快速列車が山寺駅と面白山高原駅間で立ち往生し、乗客約300人が8時間近く車内に閉じ込められた。代替輸送手段のきかないところであったという。これを聞いて私が一番心配したのは、水・食料はどうなったか、トイレはどうなったかであったが、報道では僅かに、“JRが工事用の 車両を使ってお結びを届けた”ということが、一回出ただけであった。それ以上の詳しいことに、メディアは関心ないようで、そこに問題点の一つがある。
 また、12月5日から6日にかけて、愛媛県と徳島県の県境の山岳部で豪雪のため、国道192号線で自動車130台が15時間にわたって立ち往生した。これまで、四国の山岳地帯では1晩に数十cmの雪が積もったという記録がないわけではないが、豪雪はめずらしい。このような地域における対応・対策の実態が知りたいが、メディアはやはりあまり取り上げなかった。上記と同じく、ここに問題がある。
 取り上げたのは、“11月に成立した『改正災害対策基本法を初めて適用し』除雪車で放置車両を移動する作業を進めた”ということである。これは、『止むをえない場合、放置車両を強制撤去できる』という区間を18km指定して作業を行なった“法律成立後、初めての場合”だったからである。もちろんこれは重要な出来事であったが、他にも知りたい情報がある。130台の車両の具体的動き(出発地・目的地)・車両の状態(燃料・バッテリー・スリップ防止対策など)・運転者の状態(健康状態・水や食料の携帯)・荷主や積荷の状態など、どうだったのか知りたいところである。これを調査した役所や研究機関・研究者はなかったのであろうか。メディアの関心もなかったのであろうか。

[文献]
1)山形市(2012):平成24年度 山形市克雪対策総合推進計画。10ページ。


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