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連載エッセイ [7]
暮らしの中のバイオクリマ
吉野正敏

 
心理的風土
 
暮らしの中の風土観

 前回の[6]では、東日本大震災に起因する心理的な問題を研究する地心理学(風土心理学)を紹介し、その必要性を述べた。津波に襲われた跡の風景のインパクトは、被災者はもちろん、他の地域に住んでいた人びとにも、強く大きかった。これまで考えたり、想像していた情景とは次元の異なるものであり、思考の範囲を超えたショックを与えた。
 このような大災害をもたらすのが、われわれの風土であることを受け入れざるをえない。われわれの祖先はそれを乗り越えて歴史時代、さらには数千年以上の考古時代・先史時代を生き抜いて来たのである。われわれの現代の生活の基礎に、それが組み込まれていることを認識しなければならない。

風土のさまざまな捉え方

  風土の捉え方はたくさんあるが、次の五つにまとめられよう。
(1) 和辻哲郎の『風土』に代表される哲学的、または倫理学的に風土を捉える方法。
(2) 地理学の立場から自然と人間との関係において捉える方法。前述の地心理学・風土心理学の捉え方もこれに含まれよう。
(3) 人間社会を中心に据え、人間を主体として環境とともに一つの系として捉える。社会学や人間生態学の方法がこれに含まれる。
(4) 人間は風土の一部で、動植物と同じく、風土を構成する一要素として捉える。
(5) 人間の生理現象、あるいは心理現象として、医学的に捉える。食物・衣服・住居など、建築学・衛生学からの視点もある。
 暮らしの中の風土の把握は、上記の五つにまたがっていて、厳密に分類・仕分けができない場合が多い。バイオクリマの観点からのアプローチは、どれか一つではなく、組み合わせ、または、総合して捉える必要があろう。
 私が強調したいのは、上述の五つの捉え方の中で、心理的風土の解明・研究が非常に遅れていることである。特に、バイオクリマの視点からの究明を強く推進しなけならない。

バイオクリマの課題

  日本生気象学会50周年記念誌が2012年3月に刊行された。その中に、「生気象学への期待」と題して、6名の先生方がそれぞれの研究分野から書いておられる。私がこれを読んで少なからず驚いたのが、建築・衣服など暮らしに直結した分野への期待が大きいことである。また、高齢社会の居住環境や健康・体育の期待もある。そして、これからの基礎研究では、イノベーション(革新)が大切で、これまでやってきたインベンション(発見)から一歩先に出る必要性を佐藤純(名古屋大学)は指摘している。バイオクリマにとってはこの方向性が重要である。
 建築分野からのバイオクリマ研究への期待を若手研究者の渡邊慎一が次のようなことを書いている。すなわち、伝統的な建築はエアコンや照明機器がなかった時代から、家屋内部の空間の環境を調整してきた。入手しやすい材料(これは地域によっても季節によっても異なる)で、各地の風土に適応した独特の形態を持つ伝統的な建築を成立させた。現代の建築はこれを生かして、均質・均一な環境空間を創り出すことが必要だとしている。
 衣服の分野では低温・低圧の環境下での生理反応・衣服内の現象などの研究の重要性をやはり若手研究者として深沢太香子が主張した。見逃せない視点であろう。

地心理・風土心理の要素と因子

  地心理・風土心理の諸要素と、それにかかわる因子あるいは特徴などを(表1)にまとめた。まだ、試案の段階であり、今後検討を重ねて行きたい。そして、バイオクリマからの貢献に役立てたい。

(表1)地心理・風土心理に関する諸要素とそれにかかわる諸因子・特徴など(吉野試案)

要素・因子・状態 特徴など

[情報]
 視覚による 臨場感、経験の有無
 知識による 老人の昔語り、幼児・初等・中等・高等・成人教育

[体験]
 個人条件 年齢・性別・職業・家族構成
 行動状態 仕事・勤務・在校・在宅・旅行中など、就寝・休養・食事・入浴中など
 周辺の人的状態 その時そばにいた人(単独・友人・家族・同僚など)

[地理空間]
 発生時 都会・村落・高地・山岳・海岸・海上・沙漠など
 発生後 避難中、避難地、避難所、仮設住宅、被災家屋内

[状況の画像情報・統計値の伝達]
 総合 地方自治体・国政府・国際機関など
 メディア 地域放送、地方・全国・外国の新聞、テレビ・ラジオ
 インターネット より身近な状況を入手。国内・国外の反応認識

[心理への反応]
 状況判断 健康状態、自己判断能力、家族の安否、地域社会・学校・親戚などの対応、被災状況確認
 周辺環境 建造物、自然(特に植物・植生)景観
 ストレス 特に将来計画の確実性・負担など。二次災害・余震など


 以上の総まとめが地心理・風土心理を構成していると考えたい。特にインターネットなど、個人対個人の連絡網による連携が新しい状況を生み出す。これへの対応が急務である。また、この表は東日本大震災の場合を強く意識している。もし、サクラの名所のツーリズ ムにおける地心理・風土心理の場合でも、少しの字句の訂正・加筆で適用可能であろう 。

心の病を和らげるために

 朝日新聞の2012年3月10日b1版によると、「日本では心の病への偏見から、カウンセリングへの敷居が高い。でも、普通の人が影響を受けるのが震災。早期に適当なケアを受ければ、影響は最小限に抑えられる」として、災害のストレスから心を守る市川佳居という方の仕事を紹介した。正しくは、心的外傷後ストレス障害と言い、アメリカの企業ではこれに気を配り、高い生産性を保つ例が多いそうである。
 日本でも地心理・風景心理に立脚したケアを望みたい。それには正確な情報・統計が必要である。日本の三陸沿岸における津波の状況は国土地理院の詳しい調査やたくさんの報道・書物によって触れられているが、おざなりなものも多い。その一つが津波の高さである。何メートルまできたとか、2階まできたとか、いろいろな言い方があるが、水面の高さ(正確に言うと、海抜高度)なのか、波の高さ(例えば、海抜5メートルの地点にある鉄塔の10メートルの高さまで水面が来たとすれば、水面の海抜高度は15メートルだが、波の高さは10メートルである)なのか、はっきりしない記述が多い。前者を遡上高と言い、後者を波高とも言うがはっきり区別すべきである。言い変えれば、“津波の高さ”では前者だか後者だかわからないのである。(表2)に過去の例を上げる。

(表2)過去の大津波の遡上高(海抜高度)と波高(m)

発生年月日 名称  遡上高  波高  地点 

1896(明治29)年6月15日 明治三陸沖地震 38.2 10〜15 大船渡市三陸町
2011(平成23)年3月11日 東日本大震災 38.9 30以上 宮古市


 最近の報道によると小さい湾の中にある小島の斜面で海抜40メートルを超す高さに水面の跡があったという。この場合、遡上高とは言わないかもしれない。山地斜面上の海抜高度と波高が同じで、最大観測値であろう。(表2)にこの結果は入れていない。詳しい観測値の結果を知りたい。このような、データの積み重ねが地心理学・風土心理学の基礎となる。


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